いにしえのカセットアイテム、とあるショップにて長きに渡って販売続けられていたのですが、それが最盛を極めたのは1980年代だったように思います。音楽誌において「スーパー・コレクターズ・カセット」と名打って大々的に広告が打たれ、価格もLPとあまり変わりがないという強気なもので、それどころか今のCDアイテムよりも高いと思える価格がさすがはバブル期。また広告においてはアーティスト名が長い場合は省略されていたのですが、ZEPのようなグループ名に関しても「L・ツェッペリン」という奇妙な略し方が何とも懐かしく、英語の使い方が何ともアバウトな昭和の日本らしいものでした。そして音質ランク表記に関してはABCで表記され、今回の武道館923に関しては「B級」という表記だったと記憶しています。もっとも80年代に販売が盛んだっただけのことはあり、メインは当時人気のアーティストであったことから「C級」の表記となってしまうアイテムは少なかった。もし「C級」と表記されるものがあるとすれば、それは1960年代後半から70年代前半のライブ音源に当てはめていたもの。こうして、あるショップで多数リリースされていたカセットアイテムの中にひっそりと生息していた923オルタネート・マスター。いい意味でマニアックかつビンテージ・オーディエンスの魅力に溢れている音源ですので、今回の「STAGE IN TOKYO 1971」として完全版に仕立てられた状態は素晴らしいが、元音源だけの状態でも聞いてみたい…マニアならそう思うのは当然のこと。そこでオリジナルのカセット・パートのみを収録したCDにて、このビンテージ・オーディエンスの原型をお楽しみいただけます。カセット・パートのみの収録ということから「Since I’ve Been Loving You」録音がいったん終了し、ライブの最中の暗がりで誤って録音ボタンと再生ボタンを同時に押してしまったとおぼしき早送り音や、録音再開前に断片的にながら入ったMCの一部なども漏らさず収録。にもかかわらず長い演奏の「Dazed And Confused」を完全に収録してみせた点は称賛に値します。さらには「Whole Lotta Love」メドレーの最中「Hello Mary Lou」が始まる直前で録音が終わってしまったという、当日武道館に居た誰もが苦労したであろう、長丁場ZEPライブ収録の難しさを伺い知らせてくれる貴重なドキュメントなのです。もちろんこちらもカセット特有なピッチの狂いはしっかりアジャスト。最後までストレスなく音源本体を聞き込める貴重アイテムとなっています。こうしてカセット・パートだけでも音質は意外なほど聞きやすいと感じてもらえるのではないでしょうか。そして何より昭和の懐かしさに溢れたカセットをCDに封じ込めたというアイテムでもあります。 Disc 1 (48:01) 1. Introduction 2. Immigrant Song 3. Heartbreaker 4. Since I’ve Been Loving You★7:49-8:13ノイズ、早送りの音声、歓声の断片もそのまま収録 5. Dazed And Confused Disc 2 (52:35) 1. MC 2. Celebration Day 3. Bron-Y-Aur Stomp 4. That’s The Way 5. Going To California 6. What Is And What Should Never Be 7. Moby Dick 8. Whole Lotta Love(cut)