大洋を渡り、北米大陸も魅了した初期FLOYD復刻プロジェクトNICK MASON'S SAUCERFUL OF SECRETS。その北米ツアー・コレクションの最後の1ピースが登場です。そんな本作に収められているのは北米ツアーの最終公演「2019年4月22日ワシントンDC」。その極上オーディエンス録音です。これまで幾多のライヴアルバムでツアーをリアルタイム・レポートしてきましたが、いよいよ最終回。次なる舞台、英国のレポートも始まります。まずは一区切りの意味も込め、北米コレクションを整理してみましょう。 ・3月12日『VANCOUVER 2019』・3月13日『SEATTLE 2019』※機材トラブル・3月15日『SAN FRANCISCO 2019』※セットが完成・3月16日『LOS ANGELES 2019 1ST NIGHT』・3月17日『LOS ANGELES 2019 2ND NIGHT』・3月19日+21日(2公演)・3月24日『IRVING 2019』 ・3月25日『HOUSTON 2019』・3月27日:マイアミビーチ公演・3月29日『ATLANTA 2019』・3月31日:セントルイス公演・4月1日『MILWAUKEE 2019』・4月3日+4日(2公演)・4月5日『INDIANAPOLIS 2019』・4月7日『COLUMBUS 2019』・4月8日+9日(2公演) ・4月11日『BUFFALO 2019』・4月12日:ウォリングフォード公演・4月13日『BOSTON 2019』・4月15日+16日(2公演)・4月18日『BEACON THEATRE 2019 1ST NIGHT』・4月19日:ニューヨーク・シティ公演・4月20日『PHILADELPHIA 2019』・4月22日:ワシントンDC公演 【本作】 以上、全28公演で16タイトル。全公演とはいきませんが、3回と開けずにツアーとレポートしてきたのがご理解いただけると思います。現在、世界のコレクター達は記録の総括段階に入っており、これから遅れて登場する傑作がないとも限りませんが、同時進行は今回までです。さて、そんな北米の最終公演となったのは首都ワシントン。これがまた、極上のオーディエンス録音なのです。これまでお届けしてきたのはいずれも傑作ばかりですが、そのタイプは大きく3つありました。1つは空気感ゼロな超ビビッド・超鮮明サウンドを旨とする「クリア・タイプ」で『PHILADELPHIA 2019』が代表格。2つめは空気感が厚みまで醸す「ダイナミック・タイプ」で『LOS ANGELES 2019 2ND NIGHT』が好例。3つめはサウンドボード的な演奏音の凄味よりもオーディエンス録音特有の鳴りや空気感が醸す臨場感・幻惑感を楽しむ「ムード・タイプ」です。こうした分類で言うと、本作は2番目の「ダイナミック・タイプ」になる。「まるでサウンドボード」と呼ぶに相応しい密着感とディテールを誇りつつ、ヘッドフォンでやっと気づくレベルのうっすらとしたホール鳴りがスペクタクルを描く。「クリア・タイプ」は言い換えれば出音丸出しな卓直結サウンドボードのような感じですが、「ダイナミック・タイプ」はむしろ公式作品風。よりゴージャズなサウンドなのです。特に本作の場合は重低音まで凄い。壁や床が震えるのが分かるほどに繊細でありつつ、それこそ会場を丸ごと揺るがすようなド迫力サウンド。もちろん、こうした迫力も芯が極太でダイレクトだからこそ生まれるもの。現場の鳴りがクリアさを損なわず、機微も隠さない。そんな芯と鳴りが殺し合わずに互いを高める希有な名録音なのです。しかも、安定感まで絶品。そこまでのド迫力だとピークが割れてしまってもおかしくないのですが、本作はどんなに力強く轟こうとも艶やかな美しさが損なわれず、マイクの方向に迷うような揺れも起きない。これまで「ダイナミック・タイプ」の最高峰は『LOS ANGELES 2019 2ND NIGHT』だったわけですが、本作も負けず劣らず。いや、力強さや立ち上がりの鮮やかでは本作が上を行く。まさに新たなる代表作なのです。幾多のライヴアルバムが単なるコレクションに止まらず、“録音の個性”や“オーディエンスの最新技術”まで楽しませてくれるSAUCERFUL OF SECRETS。それもこれも初期FLOYDの楽曲がサウンドの旨みを引き出すからであり、その演奏が素晴らしいからこそでもある。本作はその最高峰レースで新たにトップに躍り出た最新作。クリア系『PHILADELPHIA 2019』とダイナミック系の本作。北米ツアーの最終盤で畳みかけられた別系統の2大傑作。 Daughters of the American Revolution Constitution Hall, Washington, D.C., USA 22nd April 2019 TRULY PERFECT SOUND Disc 1(56:02) 1. Intro 2. Interstellar Overdrive 3. Astronomy Domine 4. Nick Mason Introduction 5. Lucifer Sam 6. Fearless 7. Obscured By Clouds 8. When You're In 9. Remember A Day 10. Arnold Layne 11. Vegetable Man 12. Nick Mason Introduction 13. If 14. Atom Heart Mother 15. If (reprise) Disc 2(58:23) 1. The Nile Song 2. Guy Pratt Speaking 3. Green Is The Colour 4. Gary Kemp Speaking 5. Let There Be More Light 6. Childhood's End 7. Nick Mason Speaking 8. Set The Controls For The Heart Of The Sun 9. See Emily Play 10. Bike 11. One Of These Days 12. A Saucerful Of Secrets 13. Point Me At The Sky