本作に記録されているのは「1975年3月19日ノースハンプトン公演」。“DRESSED TO KILL TOUR”初日のオーディエンス録音です。この日はツアーのウォームアップも兼ねて1日2公演が行われており、本作はその2ndショウのライヴアルバムです。まさにツアーのキックオフを記録したサウンドは、何とも味わい深いヴィンテージ・オーディエンス。しかし、極上ではないというだけでノイズの向こうに演奏を探すようなタイプでは(決して)なく、爆音・轟音の類でも(まったく)ない。その美点はグイグイと迫る極太の芯と安定感。確かにディテールは鮮明とは言い難いものの、会場を揺るがす重低音もしっかりと記録され、えらくパワフル。しかも、そのパワーが全力で炸裂しても決して轟音化せず、テープ劣化のヨレや歪みも見当たらない。聴きやすいまろみが終始揺るがない録音なのです。そのサウンドで描かれるショウは、さらに苛烈な初期衝動が大爆発……かと思いきや、そうでもないから面白い。恐らくは初日だからこその試運転感だと思うのですが、ショウ運びを確かめるような手堅さが目立つ。当時のKISSは驚異的な過密スケジュールで活動しており、本作も1つ前の“HOTTER THAN HELL TOUR”終了からわずか1ヶ月でしかない。もっと激しくても良いような……。これは完全に想像ですが、もしかしたら当時はまだ導火線に火が付いていなかったのかも知れません。『ALIVE!』をデトロイトで録ることになった契機はシングル『Rock And Roll All Nite』のヒットとも言われていますが、そのシングル発売日は“1975年4月2日”。本作のノースハンプトン公演は3月ですからまだ「Rock And Roll All Nite」がセット入りさえしておらず、逆に5月に入ったボストン公演ではブレイクスルーの糸口が見え始めていた……。そんな微妙な勢いの差が録音の向こうから聞こえてくるようなリアリティなのです。とは言え、そこは若きKISS。本作も大人しく終わるわけではない。雰囲気が変わってくるのは6曲目の「She」辺り。そこからグイグイと熱気が籠もっていき、ショウ終盤に向けて加熱していく。その後半ではこの日が初演(1stショウの記録が残っていないために断言はできませんが、違ったとしても2回目)となる「C'mon And Love Me」も炸裂するのです。野心に燃えながら、そのキッカケを探していた“DRESSED TO KILL TOUR”極初期のKISS。 Roxy, North Hampton, PA, USA 19th March 1975 (2nd show) TRULY AMAZING SOUND (75:55) 1. Deuce 2. Strutter 3. Got To Choose 4. Hotter Than Hell 5. Firehouse 6. She 7. Guitar Solo 8. Nothin' To Lose 9. Parasite 10. 100,000 Years (incl. Drum Solo) 11. Black Diamond 12. C'mon And Love Me 13. Let Me Go, Rock 'N Roll14. Cold Gin