再始動したPINK FLOYD復刻プロジェクトの第一報レポートが2作同時リリース決定。今まさに行われているヨーロッパ・ツアーを記録した最新ライヴアルバムが登場です。同時進行レポートの第二弾となる本作に収められているのは「2019年7月5日アウグスト公演」。その超クリア・オーディエンス録音です。今週同時リリースとなる第一弾『ULM 2019』では活動概要を解説しましたので、こちらでは現在進行中の欧州レッグの詳細から現状とショウのポジションを見てみましょう。・7月3日『ULM 2019』・7月5日:アウグスト公演 ←★本作★・7月6日:ニーム公演・7月8日:キエーティ公演 ・7月10日:バレッタ公演・7月12日:タオルミーナ公演・7月14日:ラヴェンナ公演 >>今ココ<<・7月16日-27日(8公演)以上、全15公演。現在はこのヨーロッパ・ツアーまで公表されており、2019年内の活動はそれで終了となる見込みです。本稿が公開されるタイミングではすでに半数の7公演目が終了している予定。本作のアウグスト公演は、そんな欧州ツアーの2公演目にあたるコンサートです。そんなショウを記録した本作最大のポイントはサウンド。このところ、SAUCERFUL OF SECRETSの録音は「クリア・タイプ」「ダイナミック・タイプ」「ムード・タイプ」の3種に分類してご紹介しており、本作は「クリア・タイプ」。それもズバ抜けた名録音です。とにかくクリスタル・クリア。もちろん、距離を感じさせない芯のダイレクト感は必須条件ですが、それ以上に空気感の透明度が圧倒的でキラキラと輝く高音の伸びが美しいのです。もちろん、これは「中音域や重低音が聞こえない」という意味ではありません。中音を担うギターはピッキングのレベルで克明ですし、低音のベースもブンブンと唸るヴァイヴまでクッキリ・ハッキリ。しかし、そうした演奏音が鳴りを伴わず、輪郭が際立って聞こえるのです。そのサウンドの要因は、恐らく会場。現場となった“アウグスタ・ラウリカ”は、植民地時代の残されたローマ遺跡。ポンペイのような闘技場とは違って半円形の劇場ですが、広く開かれたオープン・スペースなのは同じ。そのため、音を反射する壁も天井もなく、演奏音を濁らせる反響そのものが存在しない。PAから吐き出される出力音をダイレクトに拾い、虚空へと伸びていく芯の美しさだけが際立っているわけです。その演奏音だけならサウンドボード的なのですが、本作はオーディエンスらしい臨場感も記録されている。それは、観客の息吹。とにかくこの日はえらく盛り上がっているのです。実のところ、1曲目の「Interstellar Overdrive」でいきなり絶叫一発が入って不安にもなりますが、それはあくまで一発止まり。その後はクリスタル・クリアな演奏が現場を支配するのですが、曲間になるとやはり盛大な喝采が湧く。もちろん、以前の春先の北米/英国ツアーでも盛り上がってはいましたが、本作は強烈なクリア・サウンドだけに喝采が大波にならず、1人ひとりの歓喜の表情まで浮かぶほどにリアルなのです。思えば、SAUCERFUL OF SECRETSが軌道に乗ったのは昨年の欧州ツアーでしたが、大陸ヨーロッパ、それも中欧こそが彼らに対してもっとも熱狂的なのかもしれない……そんなリアルな熱気を感じられるのです。そんな歓待を目の当たりにしたショウが悪かろうハズがない。初日の『ULM 2019』からして2ヶ月のブランクを感じさせないアンサンブルなのですが、本作もその好調ぶりが透ける。もちろん、セットは北米/英国と同一のレパートリー全曲披露の最長ボリューム。あまりにもクリアなサウンドも相まって、その長丁場を一気に駆け抜けていくような爽快感まで宿ったライヴアルバムなのです。昨年から大量の録音をご紹介してきたわけですが、その中でも群を抜くクリア・サウンド。正直なところ、理想バランスと比べると軽めでもあり、観客の熱狂がリアルすぎるシーンもある。それだけに永久保存には不向きな録音ではあるものの、ここまでの透明感はそれだけで超・個性的です。その輝く現場サウンドで初期FLOYDナンバーが甦るライヴアルバム。 Live at Augusta Raurica, Augst, Switzerland 5th July 2019 PERFECT SOUND Disc 1(52:42) 1. Intro 2. Interstellar Overdrive 3. Astronomy Domine 4. Nick Mason Introduction 5. Lucifer Sam 6. Fearless 7. Obscured By Clouds 8. When You're In 9. Remember A Day 10. Arnold Layne 11. Vegetable Man 12. Nick Mason Speaking 13. If 14. Atom Heart Mother 15. If (reprise) Disc 2(56:34) 1. The Nile Song 2. Guy Pratt Speaking 3. Green Is The Colour 4. Gary Kemp Speaking 5. Let There Be More Light 6. Childhood's End 7. Nick Mason Speaking 8. Set The Controls For The Heart Of The Sun 9. See Emily Play 10. Bike 11. One Of These Days 12. A Saucerful Of Secrets 13. Point Me At The Sky Nick Mason - drums Guy Pratt - bass & vocals Gary Kemp - guitar & vocals Dom Beken - keyboards Lee Harris - guitar & vocals