まだグルーヴに開眼する前、タイトで複雑でアグレッシヴなヘヴィメタルを追究していた1989年のMETALLICA。そんな彼らの再来日を伝える伝説のライヴアルバムが復刻リリース決定です。そんな本作に刻まれているのは2公演。「1989年5月11日:川崎市産業文化会館」公演と「同5月13日:国立代々木競技場」公演で記録された極上オーディエンス録音セットです。本作最大のポイントは凄まじいまでのサウンド・クオリティとライヴの中身なのですが、まずはショウのポジション。当時のスケジュールを振り返ってみましょう。・5月11日:川崎市産業文化会館 ←★本作DISC 1-2★・5月13日:国立代々木競技場 ←★本作DISC 3-4★・5月14日:国立代々木競技場 ・5月16日:大阪厚生年金会館・5月17日:大阪厚生年金会館・5月18日:名古屋市公会堂 以上、全6公演。東名阪を巡るスタイルは1986年の初来日と同じながら、東京では大会場の代々木競技場にスケールアップ。いよいよもって本格化してきた日本人気が透ける日程です。そんな中で本作の2公演は、初日と2日目というスタート・ダッシュでした。 【1989年来日公演を代表してきた超名録音の最高峰】そんな2公演を記録した本作は、二度目のジャパンツアーを代表してきた超名録音。どちらも同じ録音家によるオリジナル・カセットからダイレクトにデジタル化したものなのですが、その人物こそ80年代に名録音の数々をモノにしてきた伝説的なテーパー。その代表作とも言うべき銘品なのです。実際、本作は伝説の名手だからこその超極上サウンド。とにかくキリッと淡麗辛口。サウンドボードと間違えるタイプではないのですが、その空気感はクリスタル・クリアに透き通り、力強い芯がレーザー光線の如く真っ直ぐ耳元に飛び込んでくる。猛烈に吹き出すリフはギャリギャリとしたエッジまで鋭利で、バスドラの乱打も混じり合うことなく1打1打の輪郭までくっきり。それ以上なのがジェイムズのヴォーカル。音の壁(音の塊ではないところがポイント)と化したアンサンブルのド真ん中を貫き、目の前感覚でグイグイと迫る。この頃はまだ後の歌い込みとは次元の違う吐き捨てスラッシュ・ヴォイスなのですが、アグレッシヴでありながら歌詞の1語1語までハッキリと聴き取れるのです。しかも、そんなサウンドが丸々2公演で微動だにしないから驚く。川崎市産業文化会館(ディスク1-2)と国立代々木競技場(ディスク3-4)ではだいぶ会場サイズが異なるのですが、違いと言えば後者の方が鳴りの広がり方と観客の盛り上がりにスペクタクルを感じる程度で、芯のダイレクト感やディテールの詳細さは五分と五分。弘法筆を選ばずとは言いますが、録音の達人も会場を選ばないようです。そして、本作はそんな名録音の最高峰盤でもある。実のところ、代々木録音(ディスク3-4)は、来日当時から有名な録音で無数の既発を生んできた大定番でもある。しかし、本作はそのオリジナル・カセットからデジタル化しているためにダビング劣化がまるでない。初登場した際には専門誌からも「全く同じソースながら、音質は格段に飛躍しており、正に天と地の差くらいのマスタークオリティ」と大絶賛されたのです。 【ギラッギラの金属光沢が輝くDANAGED JUSTICEの世界】そんなサウンドで描かれるのは、初期のクラブ・ライヴとも90年代以降の横綱相撲とも違う、この時期だけのカルトなMETALLICA。“DAMEAGED JUSTICE TOUR”と言えば、何はさておきオフィシャル『LIVE SHIT: BINGE & PURGE』のシアトル公演が有名ですので、比較しながら整理してみましょう。クリフ時代ナンバー(8曲)・KILL ‘EM ALL:Seek & Destroy/Whiplash・RIDE THE LIGHTNING:For Whom The Bell Tolls/Creeping Death/Fade to Black・MASTER OF PUPPETS:Welcome Home (Sanitarium)/Master Of Puppets/Battery●...AND JUSTICE FOR ALL(6曲) ・Blackened/Harvestor Of Sorrow/Eye Of The Beholder(★)/To Live Is To Die/One/...And Justice For All カバー(6曲+α)・ジャム#1(Smoke On The Water/How Many More Times)(★)/ジャム#2(Twist & Shout〈初日のみ〉/Symptom Of The Universe〈2日目のみ〉/Run To The Hills/Helpless)(★) ・その他:Little Wing/Last Caress/Am I Evil?/Breadfan ※注:「★」印は公式のシアトル公演では聴けない曲。 ……と、このようになっています。来日公演はシアトル公演の約3ヶ月前にあたり、セレクト自体は酷似していても流れは結構違う。1st/2ndアンコールの冒頭で遊び的に演奏するカバー・ジャムもしっかりと完全収録しています。そして、それ以上に嬉しいのが「Eye Of The Beholder」でしょう。公式プロショットで見られないだけでなく、1989年7月までしか演奏されなかったレア曲。METALLICAは、現在でも過去曲をちょくちょく復刻するバンドですが、「Eye Of The Beholder」はそれ以降一切演奏していない、正真正銘「1989年だけの名曲」なのです。 そんなショウそのものだけでなく、本作はドキュメント感も最高。初のPVとして浸透していた「One」のイントロでは怒号のような歓声が沸き、お馴染み「Seek & Destroy」のゲップネタでも爆笑が起きる。また、2公演のサイズの違いも面白い。川崎公演の現場は貴重な2000人規模の会場で、当初は女神像なしも検討されつつラーズが頑として拒んで無理矢理に設置したという逸話も残っている。その密室感と代々木の広大なスペクタクルとの対比も超リアルなのです。その後、90年代に突入すると共にグルーヴとダイナミズムに目覚め、変質していったMETALLICA。1989年はその直前。世界的な成功で練度を飛躍的に上げながら、あくまでも金属光沢ギラッギラなメタル・パラダイスを日本に届けてくれた。そんな2公演を極上サウンドで体験できる伝説のライヴアルバム。 Sangyo Bunka Kaikan, Kawasaki, Japan 11th May 1989 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) Yoyogi Olympic Pool, Tokyo, Japan 13th May 1989 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) Live at Sangyo Bunka Kaikan, Kawasaki, Japan 11th May 1989 Disc 1(58:05) 1. Ecstasy Of Gold 2. Blackened 3. For Whom The Bell Tolls 4. Welcome Home (Sanitarium) 5. Harvestor Of Sorrow 6. Eye Of The Beholder 7. Bass Solo 8. To Live Is To Die 9. Master Of Puppets 10. One Disc 2(66:54) 1. Seek & Destroy 2. ...And Justice For All 3. Smoke On The Water / How Many More Times 4. Creeping Death 5. Fade to Black 6. Guitar Solo 7. Little Wing 8. Battery 9. Twist & Shout / Run To The Hills / Helpless 10. Last Caress 11. Am I Evil? 12. Whiplash 13. Breadfan Live at Yoyogi Olympic Pool, Tokyo, Japan 13th May 1989 Disc 3(58:08) 1. Ecstasy Of Gold 2. Blackened 3. For Whom The Bell Tolls 4. Welcome Home (Sanitarium) 5. Harvestor Of Sorrow 6. Eye Of The Beholder 7. Bass Solo 8. To Live Is To Die 9. Master Of Puppets 10. One Disc 4(66:17) 1. Seek & Destroy 2. ...And Justice for All 3. Smoke On The Water / How Many More Times 4. Creeping Death 5. Fade to Black 6. Guitar Solo 7. Little Wing 8. Battery 9. Symptom Of The Universe / Run To The Hills / Helpless 10. Last Caress 11. Am I Evil? 12. Whiplash 13. Breadfan James Hetfield - Guitar, Vocal Lars Ulrich - Drums Kirk Hammett - Guitar Jason Newsted - Bass