『BLEACH』をリリースし、世界に飛び立った1989年のNIRVANA。彼らにとって初となる欧州ツアーの現場を伝える極上サウンドボード・アルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「1989年11月22日ウィーン公演」。そのステレオ・サウンドボード録音です。この日は2001年にオーストリアの現地FM局で放送された事でも知られていますが、本作はそのエアチェックではありません。その大元となった放送前の流出サウンドボードをベースとし、長さもクオリティも最高峰を更新する1枚なのですとは言っても、従来のFMサウンドボードをご存じの方ばかりではないでしょうから、イチからご説明致します。まずは何より、ショウのポジション。世界に衝撃のサウンドをぶちまけた当時のスケジュールからショウのポジションを確かめてみましょう。《1月24日『BLEACH』完成》・1月6日-2月25日:北米#1(6公演)・4月1日-26日:北米#2(4公演)・5月26日-6月10日:北米#3a(3公演)《6月15日『BLEACH』発売》 ・6月16日-10月13日:北米#3b(33公演)・10月23日-12月3日:欧州(37公演)←★ココ★ これが1989年のNIRVANA。それまで彼らはステージと移動を繰り返す“ツアー”を経験したことがなく、1989年も「北米#2」までは散発的なライヴのみ。『BLEACH』の発売を契機として初めてのツアー「北米#3」に乗り出し、その勢いを持ってヨーロッパにも進出しました。本作のウィーン公演は、そんな「欧州」レッグの26公演目にあたるコンサートでした。そんな現場で記録された本作は、まさに超リアル・サウンドボード。前述の通りFM放送もされたわけですが、それはずっと後年になってからのこと。録音時点では放送を想定していなかったのか荒っぽいミックスながら、普通の卓直結系に比べるとグッと艶やか。まさにオフィシャル級の極上サウンドで若さに任せた灼熱のアンサンブルが脳みそに直接流れ込んでくるのです。もちろん、FM放送よりも遙かに音が良い。もっともFM放送はモノラルで今イチだったこともあり、比較にならない……と言いますか、引き合いに出したことで本作のイメージが悪くなってしまいそうなほど次元が違います。しかも、約9分も長い。実のところ、この流出サウンドボードでも1曲目の「School」が欠けているのですが、本作では同日のオーディエンス録音で補完。当時のフルセットをシームレスにフル体験できるのです。しかも、このオーディエンス録音も「超」をズラズラ並べたい極上サウンド。ハッキリ言ってサウンドボードにしか聞こえない。何も知らなければ、ヘッドフォンで耳を澄ませても「卓のツマミでもちょっと触ったのかな?」程度にしか感じないほどの超絶サウンドなのです。そんな超絶サウンドボードで吹き出すのは、野心と本能が丸出しになったような苛烈なフルショウ。彼ら初の欧州ツアーと言えば、当店でも公式級サウンドボードの超名盤『MANCHESTER 1989』が大人気となっていますが、約1ヶ月後の本作はセットも異なる。比較しつつ、整理してみましょう。 ・BLEACH:School(★)/Scoff/Love Buzz/Floyd The Barber/About A Girl/Negative Creep/Blew・NEVERMIND:Breed(★)・その他:Dive/Spank Thru/Big Cheese/Sappy(★)/Been A Son(★)/Vendetagainst (aka. Help Me, I'm Hungry)(★) ※注:「★」印は『MANCHESTER 1989』でも聴けない曲。……と、このようになっています。『BLEACH』ナンバーをメインに、初期ならではのレパートリーが猛ラッシュ。早くも「Breed」が演奏されているのも目を弾きますが、それ以上にレアなのが「Vendetagainst」。2004年のBOXセット『WITH THE LIGHTS OUT』では「Help Me, I'm Hungry」として収録された曲ですが、ホンの数回しか演奏されていない激レア曲。それを極上サウンドボードで楽しめるのです。そんなフルショウだけでもお腹いっぱいですが、本作はさらに美味しいボーナス・トラックを3曲収録しています。しかも、いずれも1989年のスタジオ・サウンドボードで超極上テイクばかり。1つめはKISSのトリビュート盤『HARD TO BELIEVE』に提供された「Do You Love Me?」で、1989年春に録音されたもの。かなり崩れた演奏ぶりのラフなテイクですが、サウンドは極上。『BLEACH』の制作費を負担したことで演奏していなくてもクレジットされたというジェイソン・エヴァーマンが参加しています。2つめはレッドベリーのカバー「Ain't It A Shame」。1989年8月録音で『WITH THE LIGHTS OUT』にも同じセッションのテイクが収録されていますが、本作はラフミックス・バージョンです。このテイクでドラマーを務めているのは、SCREAMING TREESのオリジナル・メンバーとしても知られるマーク・ピッケレルです。最後は1989年9月録音の「Even In His Youth」。これまた『WITH THE LIGHTS OUT』収録セッションのラフミックス版です。FM放送を遙かに超える流出サウンドボードをさらにアップグレードさせ、『BLEACH』時代のロウなフルショウを極上サウンドで体験できてしまうライヴアルバムです。あの大名盤『MANCHESTER 1989』にも匹敵する……いえ、超えてしまうかも知れない超絶なる1枚。 Live at U4, Vienna, Austria 22nd November 1989 Pre-FM Master Recording(70:22) 01. Introduction 02. School 03. Scoff 04. Love Buzz 05. Floyd The Barber 06. Dive 07. About A Girl 08. Spank Thru 09. Big Cheese 10. Sappy 11. Breed 12. Been A Son 13. Negative Creep 14. Blew 15. Vendetagainst Bonus Tracks Chorus Rehearsal & Audio Studio, The Evergreen State College, Olympia, WA, USA Spring 1989 'Hard To Believe: A KISS Covers Compilation' Producer/Engineer: Greg Babior 16: Do You Love Me? 'The Jury' Reciprocal Recording Studios, Seattle, WA, USA 20-28 August 1989 Rough Mix Producer/Engineer: Jack Endino 17: Ain't It A Shame The Music Source, Seattle, WA, USA September 1989 Rough Mix Producer/Engineer: Steve Fisk 18: Even In His Youth Kurt Cobain: Guitar / Vocals Krist Novoselic: Bass / Backing Vocals Chad Channing: Drums Jason Everman: Guitar [Track 16] Mark Pickerel: Drums [Track 17] Notes for SBD : Pre-FM soundboard source. Missing Cobain's opening dialogue about his guitar, the screaming intro, the very first song ('School') and some announcer banter after 'Blew' about T-shirts being on sale. All other songs and between-song banter are present. From Nirvana Guide: Krist got involved with a bunch of drunks in the audience who were disrespecting women, prompting him to give a long speech about how he is a girl and a brief attempt at singing The Who's "I'm A Boy." Tad Doyle most likely played guitar on "Vendetagainst," since Kurt invited him onstage to play and a guitar can be heard on circulating recordings (the song was normally played without guitar). STEREO SOUNDBOARD RECORDING