掛け値なしの名演でありながら細々とマニアに認知されていった初日のデトロイトと違い、二日目に関してはオーディエンス、サウンドボード共にライブの全貌を明かしてくれる音源というのが発掘されていません。唯一、それを垣間見させてくれるのがライブ後半のみを捉えたPAアウトのサウンドボード。ライブ後半…つまり「Moby Dick」以降からの録音となれば、以前リリースした「HOUSTON & DENVER 1973 JOHN BONHAMS MASTER CASSETTES」と同じく、ボンゾからの命でカセットに収められたことは明白。つまり、これ以外のPAアウトのサウンドボード・パートは存在しない可能性が高い。そのせいでこの音源、最初は目玉でありながらもわずか1分半でカセットの録音が終わってしまった「Dancing Days」が古の「ONE MORE DAZE」にてお目見えしたのを皮切りとして、様々なアイテムの「オマケ要員」として重宝されてきた存在です。それまでリリースされていた音源パイレートのコピー盤やイコライズ感のあるバージョンといった既発アイテムを一蹴する「DETROIT ROCK CITY 1973」がベスト・バージョンとしてGRAF ZEPPELINからリリースされていますが、今回はマスターに遡って微調整だけ加えました。また問題の「Dancing Days」に関しては微々たる違いながらもカット部分をフェイドアウトさせるのでなく、テープが切れて録音が終わるところまで収録しています。前日に負けじと長い展開をみせた「Moby Dick」の後、バンドが戻って演奏される各曲ではプラントがお疲れ気味。ただでさえ粗の目立ちやすいPAアウトのサウンドボードですが、ライブ終盤ですらこんな調子ということは、それ以前の彼はもっと調子が悪かったであろう様子が伺えます。そもそもシアトルの翌日のバンクーバーが最たる例ですが、73アメリカのセカンドレグはプラントが頑張ると翌日に響いてしまうというジレンマがあり、あれだけ素晴らしい演奏内容だったデトロイト初日の後でプラントが煮え切らなかったとしても仕方がない。実際この音源の目玉である「Dancing Days」でのプラントの歌はまるで覇気がなく、一年前のシアトルで「大好きな曲だから、もう一回歌うよ」と言って一日に二回も歌ってみせた姿とはまるで別人。このツアーでレギュラーに演奏されなかったのも納得かと。ところが他の三人はこの日も好調で、ペイジなど「Heartbreaker」の中盤で前日のファンキーな展開とはまるで違うブルースのパターンを弾き出してボンゾやジョンジーを煽っている。こうした状況に奮起したのが、「Whole Lotta Love」になるとエンディングでプラントがほんの少しだけ「Immigrant Song」の叫びを歌ってみせるのも面白い。これこそ一日で演奏の表情やインプロの展開がガラッと変わってしまう絶頂期ZEPの面目躍如というもの。この日は現状Audがなく、この55分弱のSBD音源のみが存在する。(音源は'90年代になり登場したもの。)ハートブレイカーで4:07付近で生じていた片chの音切れが今回新たに補正されています。 またDancing Daysで前回フェードアウト処理されていたのか今回はカットアウトになっています。(若干最後がよく聞こえる程度の違いです) Live at Cobo Hall, Detroit, MI, USA 13th July 1973 SBD (54:56) 1. MC 2. Moby Dick 3. Heartbreaker 4. Whole Lotta Love 5. Dancing Days SOUNDBOARD RECORDING