ダラスから10年後もオアシスはアメリカの地を踏んでいました。アルバム「DON’T BELIEVE THE TRUTH」のツアー行程はそれまでの彼らのパターンと違い、早い段階からアメリカを回っています。おまけに初めてマディソン・スクエア・ガーデンの一夜も含むなど、それまで以上に同国での人気が膨れ上がったことを物語っていました。それに前作「HEATHEN CHEMISTRY」の時と同様、ツアー開始直後からアルバム・プロモーションを兼ねたライブの放送が積極的に行われています。そんな6月の短期アメリカ・ツアーから生み出されたのが24日のマンスフィールドはトウィーター・センター公演。ツアー開始直後のヨーロッパでも映像と音声両方の放送が実現していましたが、それらは「DON'T BELIEVE~」リリース前ということから同アルバムからの演奏がカットされがちで、なおかつ完全収録から程遠いという問題も抱えていました。ところがマンスフィールドではアルバムもリリースから一か月近くが経過し、初めてこのツアーのステージを鳥瞰できる内容で放送されたのです。この放送はもちろんステレオ・サウンドボード録音な訳ですが、その非常に迫力ある音質の魅力は未だに色褪せていません。リリースに際して演奏のバランスが整理されたオフィシャルのライブアルバムに比べてもっと荒々しい質感が素晴らしく、それでいて前二作のサイケ寄りなサウンドから一変してソリッドなギター・サウンドを押し出した「DON'T BELIEVE~」のステージを見事に再現してくれた点が魅力かと。そこに加えて収録時間も長い放送であったことから当時でもいくつかのアイテムが居並んだものです。「TURN UP THE STAGE」に「MK VII PHASE 1」などがそれに該当するかと思われますが、それぞれCD-Rであったり、あるいは曲が欠けていたりといった問題を抱えており「これぞ!」という決定版に及ばないリリースであった点は何とも歯がゆいものでした。それ以上の問題として放送時に「DON'T BELIEVE~」収録曲から二曲がカットされていたということ。アルバムから先行シングルとしてリリースされ、なおかつ最大のメジャーソングとなった「Lyla」が放送されなかったというだけでも驚きですが、それ以上に重大なのがこの時期だけの「Love Like A Bomb」までもカットされてしまったということ。今となっては同曲がライブ演奏されていたという事実すら知らない人の方が多いのでは?何しろ「Love Like~」は6月のアメリカで投入されたは良かったものの、ゲムをして「a perfect summer tune」と言わしめたアルバム・バージョンと比べ、ライブアレンジが今一つステージ映えしないままセットから落とされた悲運のナンバーなのです。決して演奏の出来が悪いわけではなく、今聞いてみるとむしろ新鮮でカッコイイくらい。しかし演奏がツアーの中で練られてレパートリーとして化ける前に諦められてしまった点が惜しまれるのです。そこで今回のリリースに際しては問題の二曲を同日のオーディエンス録音から補填し、初めてコンサート当日の全曲が通して聞けるようまとめました。同じようなアメリカのラジオ放送でも「CHICAGO 1998」の場合はカットされた曲を補填しなくとも収まりがよかったのですが、今回はライブ序盤、なおかつレア曲がカットされてしまったことからオーディエンス録音での補填を行っています。またシカゴの時と違ってオーディエンス録音の音質が良いということも補填された要因。そして冒頭で「コンプリート・コンサート」というアナウンスされたにもかかわらず、実際にはコンプリートではなかったのですね(笑)。そこで聞かれたアナウンスの言語からも解るかと思いますが、この放送はドイツで実現しています。この放送バージョンが当時もリリースの元になった訳ですが、今回は放送の最初と最後はもちろん、ライブの合間にも入るアナウンスもカットすることなく当時の放送を収録しています。逆に言えば過去のリリースではそれらがことごとくカットされていたことが今回のリリースで解ってもらえることでしょう。音質的にもベストと呼べるもので、音の歪みなどもみられません。そしてこの放送は迫力満点な音質だけでなく、リアムをはじめとしたグループ全体が絶好調なステージを素晴らしい音質で捉えてくれているという点が大きい。オアシスの歴史を振り返ると、リアムの声の衰えという点では残念ながら「DON’T BELIEVE THE TRUTH」ツアーがどん底といえ、実際に調子の悪い日の彼は唸り声で押し歌い通すといった日があったほど(今のリアムがよくあそこまで盛り返したものです)。この点においてもマンスフィールドはライブ全編を通してリアムが抜群に調子良い。さらにノエルもこの日は元気いっぱいで、自身が歌う当時の新曲「The Importance Of Being Idle」エンディングなどテンションは非常に高い。リアムの声だけでなく「DON’T BELIEVE~」の製作から参加していたザック・スターキーのドラミングなど、バンド全体のはつらつとした演奏ぶりもツアー序盤ならでは。こうして2005年ツアーの中でも間違いなく必須音源と呼べる名放送なのですが、最初に挙げた理由によって当時から決定版と呼べるアイテムがなく、むしろ今となっては見過ごされた感すらある迫力満点のステレオ・サウンドボード録音がカットされた曲までしっかり網羅してリリースされます。もちろん素晴らしい音質を誇る放送とオーディエンス録音の間に生じる違和感は免れられないのですが、それでもオープニング「Turn Up The Sun」からオーディエンス録音の「Lyla」への切り替わりは非常にスムーズに編集されていますので、マニアでなくともサラッと聞きこめてしまうことを保証します。これによって極めてレアな「Love Like A Bomb」もばっちり楽しめてしまう。2005年「DON'T BELIEVE~」ツアーの定番ステレオ・サウンドボード録音の全曲収録編集版がようやく登場! Live at Tweeter Center, Mansfield, MA, USA 24th June 2005 STEREO SBD Disc 1 (36:37) 1. Fuckin' In The Bushes 2. Turn Up The Sun 3. Lyla 4. Love Like A Bomb 5. Bring It On Down 6. Morning Glory 7. Cigarettes & Alcohol 8. The Importance Of Being Idle 9. Little By Little Disc 2 (48:03) 1. A Bell Will Ring 2. Live Forever 3. The Meaning Of Soul 4. Mucky Fingers 5. Champagne Supernova 6. Rock 'n' Roll Star 7. Songbird 8. Wonderwall 9. Don't Look Back In Anger 10. My Generation STEREO SOUNDBOARD RECORDING Liam Gallagher - vocals, tambourine Noel Gallagher - guitar, vocals Gem Archer - guitar Andy Bell - bass Zak Starkey - drums