元REFUGEE/YESのパトリック・モラーツを迎え、『LONG DISTANCE VOYAGER』を全米1位に送り込んだ1981年のMOODY BLUES。商業的な一大全盛の現場を極上体験できる貴重なライヴアルバムが登場です。そんな本作に吹き込まれているのは「1981年6月28日ロングビーチ公演」。昨年に引き続き、2021年も伝説名手マイク・ミラードのマスター発掘事業が盛んですが、本作はその最新作なのです。ミラード・マジックが輝くサウンドもさることながら、モラーツ時代のMOODY BLUESの貴重度にも目が眩みそう。まずは、キャリア絶頂のツアー・スケジュールから振り返ってみましょう。 《5月15日『LONG DISTANCE VOYAGER』発売》・5月26日-30日:欧州(4公演)・6月2日-9日:英国(8公演)・6月15日-7月19日:北米#1(26公演)←★ココ★・10月16日-12月6日:北米#2(34公演)これが1981年のMOODY BLUES。全米1位を反映してか、過去最大規模となる全米ツアーが実現。本作のロングビーチ公演はその序盤である「北米#1」の10公演目にあたるコンサートでした。そんなショウで記録された本作は、伝説ミラードの手腕が光る銘品。ミラードはMOODY BLUESのファンだったらしく、1974年(!)から1990年まで何度か録音している。彼は様々なバンド/アーティストを記録しているために見落とされがちですが、実はかなり気に入ったバンドでないと繰り返し録音はしない。伝説名手がいかにMOODY BLUESを愛していたのか、行動と作品が物語っているのです。そして、そんなミラードなだけにMOODY BLUESの出音も完璧に把握。いつも以上にサウンドボード的な美録音を実現しているのです。実際、そのサウンドはゼロ距離で猛烈にタイト。開演時や曲間に生々しい喝采が沸くのですが、それさえも「ラジオ局がわざと生っぽい喝采をオーバーダブしたのかな?」と思うほど、素晴らしい演奏音と歌声がたっぷりと吸い込まれているのです。ただし、そんな本作も「鉄壁」ではなかった。オープニングの「Gemini Dream」冒頭が録音漏れにもなっていますが、もう1つがマスター鮮度。タイトルをご覧の通り、本作の元になっているのは(大元カセットではなく)1stジェネなのですが、その保存状態が今ひとつなのかネット原音では細かな音落ちがあり、中盤でピッチが狂っていたのです。もちろん、本作では丁寧なマスタリングで補正。完璧に修復しきっているわけではありませんが、可能な限りベストな状態に仕上げているのです。嘘をつくわけにも行かないので難点も挙げてしまいましたが、録音自体は名手ミラードのコレクションでも最高傑作レベルであることも間違いない。実際、“LONG DISTANCE VOYAGER TOUR”には定番としてシカゴ公演のFMサウンドボードもあるのですが、本作の方が(ハッキリ言って比較にならないほど)遙かに優れている。そんな超タイト・サウンドで描かれるのは、『OCTAVE』『LONG DISTANCE VOYAGER』の2作で当代きってのヒット・メイカーとなった新星MOODY BLUESのショウ。前述したシカゴ公演サウンドボードと違ってフルセットですので、ここで比較しながら整理してみましょう。プログレ時代(11曲)・デイズ・オブ・フューチャー・パスト:Twilight Time/Tuesday Afternoon/Nights In White Satin・失われたコードを求めて:Legend Of A Mind/Ride My See-Saw・子供たちの子供たちの子供たちへ:Gypsy ・クエスチョン・オブ・バランス:The Balance/Question・童夢:The Story In Your Eyes・セヴンス・ソジャーン:Isn't Life Strange/I'm Just A Singer (In A Rock And Roll Band) 再始動時代(12曲)・新世界の曙:The Day We Meet Again(★)/Steppin' In A Slide Zone/Driftwood ・ボイジャー:Gemini Dream/The Voice/Nervous/Meanwhile(★)/Talking Out Of Turn/22,000 Days/Painted Smile(★)/Reflective Smile/Veteran Cosmic Rocker(★)※注:「★」印はシカゴ公演の定番FMサウンドボードでも聴けない曲。……と、このようになっています。日本で黄金時代と思われているプログレ時代のナンバーは約半分に抑えられ、「生まれ変わり」を表明するように新生面が大フィーチュア。特に新作『LONG DISTANCE VOYAGER』からは「In My World」以外の全曲が大盤振る舞いされており、しかもそれが大ウケ。まさに大ヒット真っ最中という熱いムードがスピーカーから吹き出してくるのです。もちろん、EL&P/YESファミリーとして鳴らしたモラーツも大活躍。ソロを弾き倒すというよりはアンサンブル指向ではあるのですが、意外なほどにメロトロンを多用した演奏が素晴らしい。重厚さの演出に使われる事の多いメロトロンですが、MOODY BLUESはそれだけでなく泣きや軽快な疾走感など、あらゆる表現に活かせることを証明してきた。本作は、その旨みがステージ・テンションで倍加。ともすれば時代遅れにされていた80年代のメロトロンが美味しいアルバムでもあるのです。往年のコンセプト道をPINK FLOYDに譲り(?)つつ、ポップなヒット・メイカーとして全盛を築いていたモラーツ時代のMOODY BLUES。そのフルショウを名手ミラードの銘品録音で体験できる貴重なライヴアルバムです。完璧ではないとしても、定番FMサウンドボードを超えるサウンドと長尺ぶりで1981年を象徴する名作。パトリック・モラーツ時代「1981年6月28日ロングビーチ公演」の絶品オーディエンス録音。伝説名手マイク・ミラードの1stジェネ・マスターからデジタル化されたサウンドは距離感ゼロの超タイト。 1981年には定番としてシカゴ公演のFMサウンドボードもあるのですが、本作の方が(ハッキリ言って比較にならないほど)遙かに優れています。新作『LONG DISTANCE VOYAGER』から「In My World」以外の全曲が大盤振る舞いされており、しかもそれが大ウケ。まさに大ヒット真っ最中という熱いムードがスピーカーから吹き出し、モラーツが操るメロトロンもたっぷり楽しめる貴重なライヴアルバムです。 Long Beach Arena, Long Beach, CA, USA 28th June 1981 PERFECT SOUND Disc 1 (67:26) 1. Gemini Dream 2. The Day We Meet Again 3. The Story In Your Eyes 4. Twilight Time 5. Tuesday Afternoon 6. The Voice 7. Nervous 8. Meanwhile 9. Steppin' In A Slide Zone 10. Talking Out Of Turn 11. The Balance 12. Isn't Life Strange 13. Gypsy 14. Driftwood Disc 2 (45:26) 1. 22,000 Days 2. Painted Smile 3. Reflective Smile 4. Veteran Cosmic Rocker 5. I'm Just A Singer (In A Rock And Roll Band) 6. Nights In White Satin 7. Legend Of A Mind 8. Question 9. Ride My See-Saw Justin Hayward - Guitar, Vocals John Lodge - Bass, Guitar, Vocals Ray Thomas - Vocals, Flute, Percussion, Harmonica Patrick Moraz - Keyboards Graeme Edge - Drums, Percussion