2013年に実現した「CONCERT VAULT」サイトにおけるライブ音源の大量放出の中にあってローリング・ストーンズは1981年のアメリカ・ツアーがメインだった訳ですが、それらの中にあって日本のマニアを仰天させたのがストーンズ初来日公演の最終日、2月27日の東京ドームのステレオ・サウンドボード録音でした。あまりにも予想外の音源であったということはもちろんですが、何と言っても我々にとって永遠であるストーンズ初来日の最終日を配信してくれていたという事に多くのマニアが狂喜したものです。なぜ初来日公演の音源が同サイトで公開されたのは未だに謎なのですが、前日がテレビ放送、さらに24日がテレビ放送用のテスト収録が行われていたことから、もしかしたら最終日はラジオ放送用の候補として録音されたのかもしれません。今やオフィシャルでリリースされた24日の映像も古くからマニアの間には浸透していましたし、ましてや26日の方はリアタイでの放送を通して永遠のアイテムと化していた。そんな中でまさかの最終日サウンドボードの登場には本当にびっくりさせられたことを昨日のように思い出します。その衝撃音源をリアタイで速攻リリースした名盤が「TOKYO DOME 1990 FINAL NIGHT」でした。それは当時、リリースされた週にあっという間に売り切れてしまった伝説の名盤でもあったという。やはり初来日公演の未発表ステレオ・サウンドボードという神通力は強烈。当然2013年の時点で再リリースの声が寄せられた訳ですが、衝撃の発掘音源故に他レーベルからもリリースされたことで当時はマニアの注目がそちらへと移った感がありました。それも今は昔、そうしたアイテムすら入手困難となってきた2021年、今こそあの衝撃のサウンドボードを再リリースさせる時がやってきました。こちらの音源ですが、ステレオ・サウンドボード録音とは言えど1990年ということから、元はデジタルのマルチトラック・レコーディング。そのラフミックスを参考用にカセットへと落としたものが元になっていたのだと推測されます。よって同じラフミックスでも1981年ツアーのそれとはまるで質感が違う。デジタル・レコーディング故の現象だと思われるのですが、一枚ベールをまとったような感触に聞こえ、なおかつライブ前半では特にその傾向が顕著。このライブ前半はギター類の音も薄っぺらく鳴っており、まるで「臨場感のPAアウト・サウンドボード」といった風に聞こえたほど。 当時はこの音質を劇的に改善させるべくイコライズが加えられたアイテムがリリースされていたものでしたが、最速リリースという事もあって、もっとも原音に近い質感で収録されていたのが「TOKYO DOME 1990 FINAL NIGHT」でもあります。そこで今回の再リリースに際しては例のモヤモヤした感触を緩和させるべくGraf Zeppelinによるオーバーホールが行われました。特にモヤモヤとした状態は中高域を強めることで明るめな状態へと変化。当時もそうした処理を施したアイテムがあったものですが、そのせいで若干のヒスノイズが生じてしまっていたりした(このことで一度カセットに落としたことが裏付けられる)もの。今回は2021年の最新テクノロジーを使ってのオーバーホールということもあり、もちろんそうした不備のない状態で音質を改善させています。もっとも元の状態がああした癖のあるものですので、いくらマルチトラックのステレオ・サウンドボードだとは言えど、ヘッドフォンよりはスピーカーから鳴らした方が楽しめるかと。またカセットにコピーした際の掛け替えポイントに当たってしまった「Mixed Emotions」ですが、「TOKYO DOME 1990~」を始めとした2013年当時のアイテムはどれもサウンドボードを極力活かしたいが故に曲の別の個所をコピペさせたことが裏目に出てミックの歌う歌詞がおかしくなってしまうという現象がみられましたが、今回は潔くオーディエンス録音をパッチすることでようやく正しい歌詞でのアジャストが実現。もう一つのカット個所である「2000 Light Years From Home」冒頭も同様の処理を。これらの補填もまた2021年ならではのテクノロジーが生かされたスムーズなつなぎと音処理によって、サウンドボードからオーディエンスに切り替わる違和感がまったくと言っていいほどありません。それこそスピーカーから鳴らしていた場合など、まったく気付かず聞き通してしまうのではないでしょうか。よってライブ前半は違和感のある質感が気になる一方、ラフミックス故に通常の「STEEL WHEELS」ツアー音源では感じることの出来ないキースとロニーを中心としたギターバンド感が聞き取れるのが大きな魅力。例えば「Harlem Shuffle」などでは二人がそれぞれにファンキーなプレイを披露していている様子が生々しく楽しめてしまう(それ故にキースの方はプレイの粗も目立ちますが笑)。それに「Ruby Tuesday」以降はあの「臨場感のあるPAサウンドボード」と例えたくなるような状態が払拭され、マルチトラックのステレオ・サウンドボードならではのクリアネスを堪能できるでしょう。そしてストーンズとして初めて訪れた日本での最終日ということもあり、ミック以下グループの演奏には気合が入りまくり。テレビ放送の前日はミック一世一代の名唄と呼べるほど気合の入ったパフォーマンスが披露されていましたが、この日も特に「Sympathy For The Devil」以降で彼の熱唱ぶりが凄まじい。それどころか、この曲ではキースのギターソロもいつも以上に熱がこもっているのがツアー最終日らしいところ。そして「Jumping Jack Flash」のバックコーラスが「オオオ」パターンなのも日本公演終盤ならではのパターン。前日と24日の映像がオフィシャル・リリースされて気軽に入手できるようになった現在だからこそ、その再登場が長らく待たれていた最終日のステレオ・サウンドボード音源でもある。満を持して2021年に実現した名盤「TOKYO DOME 1990 FINAL NIGHT」アッパー版です! (リマスター・メモ)全体に小さめだった音量を持ち上げ、ライブ序盤と終盤でアンバランスだった音量差を補正。EQ処理若干してます。中高域中心に明るめに、かつ低域も僅かにパンチを付加。当然、ヒスが目立つほどの過剰な処理はしてません。2箇所の曲中カットをAudで補填 *関連タイトルでは初。(元々Audノイズ成分の多いSB音源のため、さほど違和感もないと思います。)Live at Tokyo Dome, Tokyo, Japan 27th February 1990 STEREO SBD (UPGRADE) Disc 1 (63:53) 1. Continental Drift 2. Start Me Up 3. Bitch 4. Sad Sad Sad 5. Harlem Shuffle 6. Tumbling Dice 7. Miss You 8. Ruby Tuesday 9. Angie 10. Rock And A Hard Place 11. Mixed Emotions★2:51-2:56 当日のAudで補填★サウンドボードタイトルでは初めて歌詞が正しい 12. Honky Tonk Women 13. Midnight Rambler Disc 2 (73:43) 1. You Can't Always Get What You Want 2. Can't Be Seen 3. Happy 4. Paint It Black 5. 2000 Light Years From Home ★0:12-0:21 当日のAudで補填 ★既発0:09(わかりづらい) / 0:13(わかりやすい)のカットをAUD補填でカバー 6. Sympathy For The Devil 7. Gimme Shelter 8. Band Introductions 9. It's Only Rock'n Roll 10. Brown Sugar 11. Satisfaction 12. Jumping Jack Flash STEREO SOUNDBOARD RECORDING