人気の“モービル・フィディリティ”のCD復刻シリーズ。その最新弾がリリース決定です。アナログ・マスター専門メーカーの“モービル・フィデリティ・サウンド・ラボ(MFSL)”と言えば、世界のオーディオ・マニア達が絶大な支持を寄せる信頼のブランド。音の匠が情熱の限りを込め、大名盤の数々をマスター・テープからデジタル化していきました。そんなシリーズの中で、本作に収められているのは1988年にリリースされたCD『UDCD 515』。グラミー賞にも輝いたSTEELY DANの最高傑作『AJA』です。マスターテープ・サウンドを最重視したモービル・フィディリティアナログ作品のCD化が最盛期を迎えた90年代には高音質CDが数多く登場しましたが、その中でもMFSLは別格でした。他の高音質CDは新技術によって圧縮の違和感を減らしたり、素材で読み取りエラーを減らしたりといった「デジタル劣化を抑える」発想のもの。それに対してMFSLのポリシーは「マスターテープに刻まれた音を忠実に再現し、余分なものを足したりしないこと」。磁気テープから音を引き出す段階にも目を向けた独自の“ハーフスピードマスタリング”技術を開発するなど、“アナログ録音された音そのもの”を最重視にしているのです。そんなMFSLは1987年からレコード会社からオリジナルのマスターテープを借り受け、数々の名盤を1本1本緻密にデジタル化。マスターテープの音をCDに移し替えていく“Ultradisc”シリーズをリリースして行きました。現在はSACDやLPの分野にも進出していますが、本作は80年代末期にCD化していたというのもポイント。磁気テープのマスターは経年劣化に弱く、時間が経てば立つほど録音当時の音が失われていく。テープが歪んだり張り付いたりといったケースもありますが、たとえ精密に保管されていたとしても磁気の消失までは防げない。現在では、マスターテープそのものより物理的な溝で記録するLPの方が音が良かった……などという事態も起こりつつあるのです。その点においても“Ultradisc”シリーズは偉業だった。CDの普及期にあった80年代から始められており、高音質を謳う新技術CDの登場よりも早くにマスターテープの音をデジタルに残したのです。楽器の存在感まで宿る瑞々しい再現度の『AJA』そうして“録音から11年”時点のマスター・サウンドを伝えてくれるのが、本作の『AJA』。MFSLのゴールドCDには「Ultradisc」と「Ultradisc II」がありますが、本作はより初期に制作された「Ultradisc」なのです。そのサウンドはスーパ-・ナチュラルにして超鮮明。現行リマスターCDでも音色は悪くないのですが、細部の再現度が全然違う。その威力は冒頭からして明らか。「Black Cow」のイントロでは印象的なフレーズが繰り返されるわけですが、よく聴くと右チャンネルのフレーズの残響が左チャンネルに抜けていき、ギターと重なることで余韻を生み出している。現行CDでは、この残響が弱々しく、ギターに掻き消され気味。その点、本作では在京の端の端まで綺麗に再現され、制作時の意図が鮮やかに感じ取れるのです。そして、楽器本来の鳴りも超自然。「Aja」ではピアノ・フレーズに導かれるように様々な楽器が絡んでいくわけですが、現行CDでは、このピアノのアタックが強調されていてやや唐突感がある。それに対し、本作は楽器がその場で鳴っている現実感があり、重なっていく他の楽器たちと同じ部屋にいるようなナチュラル感があるのです。恐らく現行盤のリマスター・エンジニアはピアノをキラキラと輝かせたかったのでしょうが、まるで違う楽器に変えてしまったような加工感が生まれてしまっている。もちろん、そうした感触はギターやクラヴィネット、ヴォーカル、コーラス、スネア、ベース……と、すべての1音1音に宿っているのです。優れた名盤ほど多くの人に愛されるものであり、その思い入れが1人ひとり少しずつズレているのは致し方ないこと。それはエンジニアとて避けられるものではなく、結果として後年のリマスターCDは「AJAかくあるべし」のイメージで変質した仕上がりになっていくのです。しかし、本作は違う。あくまでもマスター・テープの再現だけに努められており、そのマスター鮮度は製作からわずか11年という瑞々しさ。それこそスタジオ内のウォルター/ドナルドが何を狙っていたのかまで伝わってくるのです。“モービル・フィディリティ”によるCDだからこそ現代まで保持し得た大名盤のマスター・サウンド。今になって現物を手に入れようと思っても、元々が少数限定生産なために困難。その美麗サウンドを1人でも多くの方に触れていただくためのリリース。高音質CDレーベル「モービル・フィディリティ」盤の『彩(エイジャ)』がリリース。楽器1つひとつの鳴りまで肌感覚で、フレーズを交わし合う演奏の呼吸感もリアルに感じられる史上最高サウンド盤です。 Taken from the original US Mobile Fidelity Sound Lab CD(UDCD 515) from Mobile Fidelity Sound Lab "Original Master Recording" Collection (39:55) 1. Black Cow 2. Aja 3. Deacon Blues 4. Peg 5. Home At Last 6. I Got The News 7. Josie