ローリング・ストーンズ1978年のアメリカ・ツアーは開始当初、シアター・クラスの会場でのギグを敢行したことが話題となりました。その中でも一番有名なのが6月14日のパサイック、キャピトル・シアターの「GARDEN STATE 78」。それから約一週間後にもニューヨークのパラディアム劇場でシアター・ギグが繰り返されました。ストーンズのパラディアムと言えば72年のハリウッドが有名ですが、こちらはニューヨーク。サウンド面で原点回帰と評されたアルバム「女たち」のリリースに伴い、演奏会場の規模に関しても原点に戻ろうとしたのではないでしょうか。その貴重なパラディアムでのシアター・ギグに関してはモノラルのオーディエンス録音が残されています。これがアナログ時代に日の目を見ることはありませんでしたが、意外にも21世紀を迎えてからCDでのリリースが実現。これが典型的なビンテージ・オーディエンスだったのですが、EXILEレーベルからその名も「NEW YORK PALLADIUM」としてリリースされたのでした。貴重な78年のシアター・ギグがリリースされたという点ではマニアを喜ばせるに十分なリリースではありましたが、相当にジェネ落ちした状態のマスターを元にしていたようで、先のビンテージな質感だけでなく、テープの損傷が随所で見られた点が大きなストレスとなっていたのです。そのせいで後にも先にもEXILE盤(以下、既発盤と称します)しか存在しない音源だったのですが、今回は遥かに状態のいい上位マスターをトレーダーから提供いただきました。そもそも既発盤ではオープニングのアナウンスと、それに続いた「Let It Rock」からして強烈な音のうねりが生じていたのですが、ここではそうした問題が一切ない、一聴して分かるほどの安定感。それに加えて音質自体のアッパー感やナチュラル感も圧倒的。あくまでビンテージ・オーディエンスの範疇ではありますが、既発盤を聞いたことのあるマニアあれば、これらの点だけでも俄然聞きやすいと感じていただけるのでは。もう音源そのものの安定感自体がまるで違いますので、既発盤における最大のストレスだった「Miss You」での回転ムラと次の「Just My Imagination」にあったうねりがまったく生じておらず、もはや別次元と断言できるほどの聞きやすさを保証します。それでいてピッチの狂いもしっかりアジャストしましたので、いよいよマニアが楽しめる状態へと進化しました。こうした圧倒的な安定感がもたらされたことで78年ツアー序盤ならではのハチャメチャ感に加え、シアター・ギグならではの親密さが合わさった演奏の魅力がふんだんに伝わってくる。全体を通しての勢いある演奏ぶりからして78年ツアーらしさが全開なのですが、それが二枚目のディスクになるとさらに加速。ミックの絶叫から始まる「Shattered」など、これぞ78年と呼べるような光景ですし、勢いのある演奏にまるで急ブレーキをかけたような「Tumbling Dice」と「Happy」の終わり方が傑作。この雑さがまた何とも78年ツアーらしい。演奏はもちろん、録音からいかにもシアターらしい親密さまで伝わってくる臨場感も聞きどころ。この日はショー開始当初から周囲の観客が当時の新曲である「女たち」収録曲に対して好意的な反応を見せているのがまた面白いのです。ミックをして「大不評だった」と言わしめたカントリー・チューン「Far Away Eyes」の演奏が始まる前から同曲を期待する声が聞かれるというのは78年の中でもこの日だけでは?おまけに「Love In Vain」でロニーのソロが終わると拍手が起こるのもシアターらしい和やかさ。そして既発盤と同様、最後には前座を務めたピーター・トッシュの「Don’t Look Back」を収録。もちろん78年名物と呼べるミック本番前の飛び入りがここでも実現していて、彼がトッシュとデュエットしている様子も楽しめます。繰り返しますがモノラルのビンテージ・オーディエンス丸出しな音質であり、微弱なテープ揺れを抱えた音源でもある。しかし既発とは比べ物にならないアッパー感で貴重な78年シアター・ギグのハードルがグッと下がりました!Live at Palladium, New York City, New York, USA 19th June 1978 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND(UPGRADE) Disc 1 (40:28) 1. Intro. 2. Let It Rock 3. All Down The Line 4. Honky Tonk Women 5. Star Star 6. When The Whip Comes Down 7. Respectable 8. Miss You 9. Just My Imagination Disc 2 (47:58) 1. Far Away Eyes 2. Love In Vain 3. Beast Of Burden 4. Shattered 5. Sweet Little Sixteen 6. Tumbling Dice 7. Happy 8. Brown Sugar 9. Jumping Jack Flash Bonus Track 10. Don't Look Back (Peter Tosh with Mick Jagger)