ギター・クレイジー:ゲイリー・ムーアの絶頂期でもあった名バンドCOLOSSEUM II。苛烈なバトルだったライヴを現場体験できる衝撃マスターが新発掘。そんな本作に刻まれているのは「1976年3月16日バーミンガム公演」。その超絶級オーディエンス録音です。COLOSSEUM IIは天才ギタリスト:ゲイリー・ムーアの名を広めたわけですが、商業的に成功を収めたわけではなく、当時の活動もあまり知られていない。良い機会でもありますので(ちょっと長くなりますが)ゲイリー視点で名バンドの活動全景を俯瞰してみましょう。1975年・9月18日ー10月4日:欧州#1(11公演)・10月29日ー12月8日:英国#1(19公演)・12月27日+28日:西ドイツ(2公演)1976年・1月29日ー3月28日:英国#2(25公演)←★ココ★《4月19日『STRANGE NEW FLESH』発売》・4月22日ー6月19日:欧州#2(37公演)・8月19日ー11月13日:英国#3(5公演)・12月27日:ルートヴィヒスハーフェン公演 1977年《1月『ELECTRIC SAVAGE』発売》*1月3日ー3月18日(THIN LIZZY:44公演)・3月31日:バート・ブライジク公演・6月18日ー11月26日:欧州#3(15公演)《11月『WARDANCE』発売》*12月11日(THIN LIZZY:1公演)・12月15日:SIGHT AND SOUND IN CONCERT出演 ※注:「・」印はCOLOSSEUM II、「*」印はTHIN LIZZYの公演。これが1975年ー1977年のゲイリー・ムーア。当時の資料には不明瞭な点も多いので公演数などは断言できませんが、おおよその流れはご理解頂けるのではないでしょうか。COLOSSEUM IIの活動はイギリスをメインとした欧州に限られ、終盤の1977年にはTHIN LIZZYのヘルプで北米ツアーも体験していました。そんな中で本作のバーミンガム公演はデビュー作『STRANGE NEW FLESH』リリース前の「英国#2」。その終盤19公演目にあたるコンサートでした。そんな現場で記録された本作は、芯も極太な極上オーディエンス……と言いますか、本作を「オーディエンス録音」と呼びたくない。ウソをつくわけにもいかないので書かねばなりませんが、流れ出るサウンドは「オーディエンス録音」の言葉でイメージする物とはまるで違う。スネアやヴォーカルの音色に空間感覚も宿しつつ、オンな芯の極太感やダイレクト感は異様で、細部の微細部まで鮮やかなディテールも完全にサウンドボード級。曲間になると沸き立つ喝采でコンサートだと思い出すものの、演奏中は狭いリハーサル・ルームに同席しているような間近感で生演奏が迫ってくる。しかも、鮮度がバツグン。録音自体は数年前にも話題になりましたが、本作はごく最近になって登場した1stジェネ・マスターでして、そのアップグレード幅は「まるで別物級」。楽器そのものの鳴りの機微まで克明に残っているからこそ演奏が脳内侵入してくるようなリアリティが感じられ、オーディエンス離れした異次元感も生み出しているのです。そして極めつけなのが、超絶サウンドで綴られる生演奏そのもの。セットは基本的に「ライヴ版STRANGE NEW FLESH」ですが、それだけでもない。ここでカンタンに整理しておきましょう。ストレンジ・ニュー・フレッシュ(4曲)・Dark Side Of The Moog/Down To You/Secret Places/Gemini And Leo その他(2曲+α)・Walking In The Park/Morning Story/Instrumental ……と、このようになっています。「Walking In The Park」はCOLOSSEUMの『THOSE WHO ARE ABOUT TO DIE SALUTE YOU』でも取り上げていたグレアム・ボンドの曲で、「Morning Story」はジャック・ブルースの『HARMONY ROW』に収録されていたナンバーです。そして、その演奏ぶりがスゴい。スゴすぎる! どの曲にも言える事ですが、とにかく苛烈なインター・プレイがてんこ盛り。スタジオ作では4分ほどだった「Secret Places」も2倍以上に伸長されていますし、元々9分の「Down To You」は14分以上も演奏。「Walking In The Park」に至っては4分に満たない曲を15分の大作に変貌しているのです。もちろん、ダラダラ長くても意味がないわけですが、本作にその心配はない。止まることを知らない熱いバトルと収まりきれないパッションが溢れ出し、どうしても長くならざるを得ない……そんな猛烈な濃度なのです。全員が全員スーパー・プレイヤーなわけですが、特に強烈なのはやはりリーダーのジョン・ハイズマンと我らがゲイリー・ムーアでしょう。もう、この2人のバトルをどう形容したら良いのやら……。全キャリアに渡って熱い弾き倒しを聴かせてくれたゲイリーですが、この時は若干24歳。情熱迸る勢いはもちろんのこと、他メンバーの演奏に感応するセンスが鋭く、反応も早い。まさに「才気走る」「神懸かる」とはこのことです。また、その後すぐ脱退してしまうニール・マーレイもスゴすぎる。彼も26歳の若武者であり、溢れ出すままにフレーズを盛り込んでいくラインは、多彩で複雑で歌心満載。彼を有名にするWHITESNAKE時代も軽々と飛び越え、間違いなくキャリア・ハイです。もちろん、凄まじい手数で歌い続けるハイズマンも、インプロ・マシンと化すドン・エイリーも、熱い歌声のマイク・スターズも、このまま永遠に賛辞を並べ続けていたいくらいです。スタイルと技術はジャズ/フュージョンで、爆発するような演奏エネルギーとカタルシスはハードロック。そんなCOLOSSEUM IIの生演奏が津波となって押し寄せてくる異次元のライヴアルバムです。この手の音楽はステージこそが本領ではありますが、ここまで強烈というのは想定外でした。畏怖まで憶える生演奏をリアルに描き出す1stジェネの新名盤。「1976年3月16日バーミンガム公演」の超絶級オーディエンス録音。新発掘の1stジェネ・マスターで、オンな芯の極太感やダイレクト感が凄まじく、細部の微細部まで鮮やかなディテールもサウンドボード級。狭いリハーサル・ルームに同席しているような間近感で生演奏が迫ってきます。しかも、その生演奏が苛烈で『STRANGE NEW FLESH』ナンバーも猛烈なインター・プレイの応酬で長大に変貌。ゲイリー・ムーア史上、もっとも苛烈な時代の現場を極上体験できる新名盤です。Barbarella's Club, Birmingham, UK 16th March 1976 ULTIMATE SOUND (79:59) 1. Soundcheck & Tunes Up 2. Dark Side Of The Moog 3. Walking In The Park 4. Morning Story 5. Down To You 6. Instrumental (incl. Drum Solo) 7. Secret Places 8. Gemini and Leo 9. Band Introductions John Hiseman - Drums Gary Moore - Guitar Don Airey - Keyboards Neil Murray - Bass Mike Starrs - Vocals