“モービル・フィディリティ”と並んでカリスマ的人気を誇る高音質CDレーベル“DCC Compact Classics”。そのCD『GZS-1144』から復刻されたQUEENの大代表作『オペラ座の夜』がリリース決定です。カリスマ・エンジニアによる高音質CDシリーズ“DCC”90年代から2000年代にかけて登場した、さまざまな高音質CD。しかし、ひと口に「高音質CD」と言っても手法は多種多様。各社が競い合うようにリリースするようになって優劣や人気にも差が出るようになりました。種々雑多な手法を大きく分けると3つ。1つは「素材系」とでも呼ぶべきもの。通常CDは信号を記録したアルミ蒸着膜をポリカーボネートで挟み込む構造となっていますが、その素材を反射率の高い金属膜や透明度の高い樹脂に代え、読み取りエラーを減らすもの。「SHM-CD」や「Blu-spec CD」があたります(ただし、これは記録されたデータ自体は通常のものと変わらず、プレイヤー側の読み取りチューニングによっては逆にエラーが増える恐れもあるとも言われています)。2つめは言わば「デジタル技術系」。CD規格は16ビットなのですが、高音質のデジタル・リマスタリングはアナログ・マスターから20ビット以上の高音質でデジタル化し、16ビットに変換します。その変換の際に新技術でデジタル劣化を抑えるタイプのこと。「SBM CD」「HDCD」等が代表的です。そして、3つめはさしずめ「エンジニア系」。レコード会社からアルバムの大元マスター・テープを借り受けてデジタル化していくもので、そのテープ再生環境や手法に徹底的にこだわり抜く。もちろん、メーカーそれぞれに独自のノウハウがあり、仕上げにも細心の注意が払われ「マスターテープの音そのもの」の再現に注力される。これの代表格は“Mobile Fidelity”や“DCC Compact Classics”なのです。そして、このタイプで重要なのは「誰がリマスタリングしたか」。デジタル技術や素材による音質向上ではないため、その行程1つひとつが職人の技量やセンスに左右され、誰がやっても同じとはならない。その中で人気のエンジニアも登場し、巨匠ボブ・ラディックやRhinoレーベルのビル・イングロット等、数々のエンジニアがカリスマとなった。彼らが手掛けた名盤は数ある高音質CDの中でも格別の人気を誇り、物によっては中古でも数万円で取引されているほどなのです。そして、その1人がスティーヴ・ホフマン。マスタリング機材に真空管を採用したアナログ・サウンドはマジックとさえ呼ばれ、“DCC Compact Classics”のブランドを世界に広めたカリスマなのです。曲ムードまで違うスーパー・ナチュラルな『オペラ座の夜』そして、本作はそんなホフマン・マジックで甦ったQUEENの『オペラ座の夜』。そのサウンドはリッチで艶やか、そして超ナチュラル。当店では既にMobile Fidelity版『オペラ座の夜』もギフト・リリースしておりますが、本作は輪をかけてナチュラルです。例えば「Death On Two Legs (Dedicated To...」。オペラティックなコーラスワークやギター・オーケストレーションが映える名曲ですが、原稿リマスターCDでは重ねられたギターもコーラスもアタックがどぎつく、鮮やかさを超えてヒステリックな印象になっている。ところが本作は、その1音1音が楽器の鳴りを感じさせるほどナチュラル。立体的に飛び交うノート達が互いに主張しながらも喧嘩せずに調和し、狂乱の美を湛えつつもヒステリックにはならないのです。そんな美しさを特に感じるのがアコースティックな「'39」。現行リマスターCDも違和感がなかったのですが、スーパー・ナチュラルな本作を体験した後ではもう無理。アコギのカッティングやバスドラのキックが強烈に突き出し、穏やかなコーラスやギターが引っ込み、本来の演奏バランスさえ変わっている。本作は、そうした変質がない。曲のムードまで変わるという点では「Good Company」も同じ。現行盤ではコミカルなフレーズがグイグイ前に出てくるわけですが、本作では同じ旋律にもかかわらず、楽器の鳴りが鮮明で曲本来の穏やかで牧歌的なムードもしっかり。現行盤では強すぎたビートも柔らかな躍動感がたっぷりと味わえるのです。そうしたマスター・テープ本来の美しさはMobile Fidelity盤でも感じられましたが、本作が互角の再現度を誇りつつ、鳴りはさらにアナログ的。現行リマスターCDに慣れた耳にはさらに違いが大きく、「本来のムードはこんな感じだったのか」と再発見する思いです。デジタル媒体CDとは言え、やはり音楽は人の手と感性の賜。特にアナログ時代に手作りされた作品なら尚のことです。デジタル新技術や素材も素晴らしいですが、最後はマスター・テープ自体の鮮度とエンジニアの“カン”こそが頂点を極める。本作は、そんなカリスマ:スティーヴ・ホフマンの全盛期にデジタル化された希代の大名盤。“モービル・フィディリティ”と同じく今になって現物を手に入れようと思っても、元々が少数限定生産なために困難。カリスマ・エンジニア:スティーヴ・ホフマンによってデジタル化された『オペラ座の夜』がリリース。Mobile Fidelity盤よりもさらにナチュラルな真のマスター・サウンドをたっぷりと味わえます。Taken from the original DCC Compact Classics GZS-1144 Remastered by Steve Hoffman 1. Death On Two Legs (Dedicated To... 2. Lazing On A Sunday Afternoon 3. I'm In Love With My Car 4. You're My Best Friend 5. '39 6. Sweet Lady 7. Seaside Rendezvous 8. The Prophet's Song 9. Love Of My Life 10. Good Company 11. Bohemian Rhapsody 12. God Save The Queen