1969年秋のアメリカツアーのハイライトは10月下旬にフィルモア・イーストで6夜連続にて(ピートの自伝では7夜連続となっていますが勘違い)行われた公演でした。これは『TOMMY』の大ヒットを反映して敢行された連続公演にして当然ボブ・プリデンが録音。ところが今回同時リリースのストーニー・ブルック校でも触れたようにピートの気まぐれからその模様を収めたサウンドボード・リールが燃やされてしまいます。そんなフィルモアでの連続公演から唯一、難を逃れたのが10月22日の公演。これもまた不完全収録ではあるのですが、音質は文句なしのステレオ・サウンドボード。フー歴代のフィルモア出演は近年でも『FILLMORE WEST 1968 3RD NIGHT』や『FILLMORE WEST 1969 2ND NIGHT』といった歴史的な音源が発掘されたのは記憶に新しいところですが、それだけに秋のフィルモアが不完全とはいえこれほどまで見事な音質のステレオ・サウンドボードで残されていたというのは本当に重要であると同時に、確かにこのまま公式でリリースできてしまうほどのクオリティが圧巻。この日のサウンドボードに関しても懐かしのKTS系『ACCEPT NO SUBSTITUTE』やストーニー・ブルックの解説で触れた『WINTERTIME TRIP』などに分散して収録されていましたが、やはり「Prof. Stoned」がきっちりアジャスト。とはいえ、さすがの彼もピッチ修正を攻めきれなかったようで「We're Not Gonna Take It」以降になるとピッチが遅いまま。そこに関しては今回のCDに相応しくアジャストし直して万全な状態とさせました。この日も公式ライブアルバムのリリースを前提として録音されただけのことはあり、本当に素晴らしい音質のステレオ・サウンドボード。本来であればこのクオリティで残りの日も録音されていたことを考えると無念でなりません(よりによって燃やすとは…)。だからこそ一日だけでもリールが生き残ってくれたありがたみを噛み締める思いが。それにストーニー・ブルックよりも『TOMMY』パート前半が長く収録されているというのもポイントが高い。というのも10月のフィルモア連続公演はポスターにも『TOMMY』上演が喧伝されており、それこそ『TOMMY』ウィークと呼ばれるほどの一大イベントと化していたのです。むしろ『TOMMY』モード69年を象徴する時期であった。にもかかわらず、このフィルモア連続公演からはオーディエンス録音が一切発掘されていない。そうした状態でステレオ・サウンドボードが一公演だけでも残されていたとは。そんな貴重さ、さらに音質の素晴らしさ以上に重要なのは演奏の爆裂ぶり。特に『TOMMY』パート「Sparks」の演奏は強烈の一言。あのウッドストックの名演も凌駕するような壮絶な展開は聞いていて口をあんぐりさせられるレベルですし、ストーニー・ブルックの同曲と違って録音にカットが入らないのも嬉しい。先にも触れたようにピッチを今回アジャストして収録した「We're Not Gonna Take It」以降は同じフィルモアでも別の日の録音(ただし短すぎて日時まで断定できず)とされているのですが、このパートを締めくくった「Shakin' All Over」が公式『LIVE AT LEEDS』を超えるのでは?と思えるほど壮絶な演奏。それでいて音質も完璧。そもそも『LIVE AT LEEDS』自体がオリジナルはLP一枚でのリリースでしたし、今回のCD一枚に収まる収録時間にしても、むしろサクッと聞き通せて良いのでは。同時リリースのストーニー・ブルックと共に、こちらも69年秋のフーの絶頂を見事に凝縮してくれたステレオ・サウンドボード。完璧な音質で再現してくれるフィルモアでの幻の『TOMMY』Fillmore East, New York City, NY, USA 22nd October 1969 STEREO SBD UPGRADE (50:17) 01. Jerry Pompili Introduction 02. Heaven and Hell 03. Can't Explain 04. Fortune Teller 05. Young Man Blues 06. Overture 07. It's a Boy 08. 1921 09. Amazing Journey 10. Sparks 11. Eyesight to the Blind Trk 12-14: from another night at Fillmore East, October 1969 ★ピッチが遅いので修正 12. We're Not Gonna Take It 13. Summertime Blues 14. Shakin' All Over STEREO SOUNDBOARD RECORDING