日本洋楽史に異形の伝説を残した“UDO MUSIC FESTIVAL”。そのトリとして出演した際の極上プロショットがリリース決定です。そんな本作に収められているのは「2006年7月23日:フジスピードウェイ公演」。そのマルチカメラ・プロショットです。2006年は“UDO MUSIC FESTIVAL”をメインにしつつも、各地も回るミニツアー形式でした。まずは、その日程でショウのポジションを確かめておきましょう。・7月18日:名古屋レインボーホール ・7月20日:福岡国際センター ・7月22日:泉大津フェニックス(大阪)・7月23日:富士スピードウェイ(静岡) 【本作】 以上、全4公演。後半2公演が“UDO MUSIC FESTIVAL”であり、本作の静岡公演こそが伝説の現場なのです。その伝説とは、記録的な不入り。当日が濃霧と雨のパラつく悪天候だったこともありますが、それ以上だったと言われるのがアクセスの悪い富士スピードウェイのロケーションとメンツ。SANTANAやポール・ロジャース、THE DOOBIE BROTHERSといった渋めの大物をメインにしたまでは良かったものの、他にはハードコアパンクやオルタナ、ソフトロック、ヘヴィロック、日本のバンド等々、とにかく雑多。良く言えば多彩なものの、これらを一気に混ぜたことによって、特定ジャンルのファン層から敬遠されてしまった。その結果、会場はガラガラ。トイレやショップに列はできず、ロッカーもベンチも使い放題で、ビニールシートやイスまで持ち出して眺める観客の多数。中には犬や猫を連れた観客までいたそうです。後日、この日の富士スピードウェイは3万人を動員したと発表されましたが、裏では5,000人ほどだったとも言われています。当然(?)第2回は行われず、幻にして伝説のフェスとなったのです。とは言え、大手音楽事務所が看板まで掲げた大規模フェスには変わりなく、その模様は某民放局によってテレビ放映。本作は、その放送プロショットなのです。そして、気になるクオリティは鉄壁。先日、このフェスのジェフ・ベック編もご紹介しましたが、本作も同じ記録マニアによる極上マスター。ノイズも劣化もまったくなく、四の五の言っても始まらない完全なオフィシャル・クオリティ。もちろん、その凄味は極上ステレオ・サウンドボード音声も然り。伝説が伝説だけに公式でのアーカイヴは望めませんが、クオリティ自体はオフィシャル作品化すべき超美麗マスターなのです。そんなクオリティで描かれるショウは、あらゆる意味で必見。まず、肝心要のショウはKISSらしいプロフェッショナリズムと豪華絢爛のヒット・パレードの極地。「70年代代表曲の山盛り+ノーメイク時代ちょっと」というバランスはいつも通りなものの、1つ前のツアーの公式作品『ROCK THE NATION LIVE!』でも聴けない名曲もたっぷりと演奏。「Watchin' You」や「King of the Night Time World」「Firehouse」「Strutter」「God of Thunder」「Do You Love Me」「Black Diamond」「Let Me Go, Rock 'N' Roll」と、あの名作の続編としても楽しめる。歌詞カードを見ながらの「上を向いて歩こう」も披露します。また、そんな名曲の合間を繋ぐMCシーンも美味しい。本作は日本放送だけあって、MCに日本語字幕が付く。決まり文句「You wanted the best, you got the best. The hottest band in the world..... KISS!!!!」にも「最高を求めてただろ! 最高を見せるぜ! 世界一ホットなバンド!キッス!」が表示されますし、他にも「準備は出来てるか? 準備できてなくてもやっちゃうぜ!」「今晩はたっぷり見せちゃうぜ!」「一発よろしく頼むぜ!」等々、なかなかに趣きのある口調なのです。さらに、本作なればこその醍醐味はショウ意外にも及ぶ。画面の端々に前述した不入り伝説の鱗片がうかがえるのです。もちろん、後日になって編集されたマルチカメラだけにパッと見には不入りには感じないものの、知った上で見ているといつになく観客の顔が近い。客席を映すカットが普通のKISS映像よりもグッとアップであり、スケール感よりも1人ひとりをフィーチュア。そんな客席に向けられたライトも小さく端を照らそうとはしないですし、観客カットも短くサッと切り替わっていく。観客の数を意図的に目立たせないように見えて仕方がないのです。そして、極めつけは「Makin' Love」後のポールのMC。字幕では「今日はいっぱいいるぜ お前らよそ見するなよ!」と出るのですが、よくよく聞いてみると「40 thousands people here, today. Don't turn around!(ここには4万人も集まったぜ。おい、見回すんじゃない!)」と言っている。思わず本音が漏れたジョークだったわけですが、その表情は笑ってない。しかも、それを悟らせまいとする日本語字幕……。まさしく“UDO MUSIC FESTIVAL”だからこそ、本作なればこその迷シーンなのです。とにもかくにも、2006年の“RISING SUN TOUR”の象徴となる公式級マルチカメラ・プロショット。その最高峰版です。音楽作品として超豪華でありつつ、決してオフィシャル作品化はないであろう1枚。それと同時に当時に想いを馳せると、そこはかとないフェス伝説の薫りが鼻腔をくすぐる2つとない超娯楽傑作です。 Fuji Speedway, Shizuoka, Japan 23rd July 2006 PRO-SHOT (102:28) 1. Intro 2. Detroit Rock City 3. Makin' Love 4. Watchin' You 5. King of the Night Time World 6. Deuce 7. Christine Sixteen 8. Firehouse 9. Got to Choose 10. Strutter 11. Lick It Up 12. I Love It Loud 13. Love Gun 14. God of Thunder 15. Do You Love Me 16. Shout It Out Loud 17. I Was Made for Lovin' You 18. Black Diamond 19. Let Me Go, Rock 'N' Roll 20. God Gave Rock 'n' Roll to You II 21. Rock And Roll All Nite PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.102min.