1980年代にMTVが登場したことでミュージック・ビデオ(以下MVと称します)は全盛を極めることになるのですが、即ちMVに縁のなかったアーティストもそれと向き合わなければいけないということを意味します。ましてや60年代から活動していたアーティストにとってはMVに対応できるかどうかで明暗が分かれました。ピーター・ガブリエルやエイジアなどはその成功例でしょうが、当初はMTVの波にまったく乗れていなかったニール・ヤングも1983年の問題作「EVERYBODY'S ROCKIN'」から突如としてMV制作に開眼。一般的に彼の迷走期とされるゲフィン時代のブレ具合(笑)を反映するかのように、MVの内容も暴走するという。そんな彼の80年代のMVをマニアがまとめたのが本DVD。時系列ではなく、ゲフィンからリプリーズに戻った80年代後半のMVから収録されているので、はじめは今見てもクオリティが高いものが続きます。「Rockin’ In The Free World」だけピッチが高くて音声がモノラルですが、実は元からこの状態で放送されていたのでした。しかもホームレスを演じるニールが見事にハマり役。また当初は放送禁止となったのに最後にはMTVのベストビデオ大賞に輝いてしまった「This Note's For You」は有名ですが、同じアルバムからの「Hey Hey」はあまり放送されなかったMVですので、初めて見るというマニアも多いのでは。問題は映像まで暴走しまくるゲフィン時代。交通事故現場を無表情で伝える冷酷なレポーターぶりを演じた「Touch The Night」、それ以上にタップダンスまで披露してしまった「People On The Street」、果てはロカビリー漫才的な「Cry, Cry, Cry」など、もはや楽器まで手放してしまい、天下のニール・ヤングがここまでダサい(笑)演技をカメラの前で披露していたことに驚きを禁じ得ないのでは。この時期で唯一まともなMVと呼べた「Wonderin'」ですらニールは楽器を弾いていない。おまけにこれらの映像は人気のない時期ですのでYouTube上でも見られないものが多く、それでいて「Wonderin'」などはそこで見られるものよりもずっと画質が良いのもポイント。後半は1988年のブルーノーツ・ツアー8月18日のトロント公演のオーディエンス・ショット映像からレアな曲の演奏シーンだけを抜粋。ビデオ時代からマニアには有名な存在ですが、中でも「Crime In The City」本来の姿である20分近くに及ぶ長い「Sixty To Zero」の演奏シーンが見られるのが貴重。今回「COMING HOME / A BIT MORE」にてリリースされる絶頂期とは対照的に、ゲフィン時代の貴重MVを中心としたおもしろ映像コンピレーション。ニール・ヤングにもこんな時代があっただなんて…。間違いなくマニア必見のDVD-Rでしょう。ゲフィン時代はもうびっくりのダサさ!笑 NEIL YOUNG - RARE CLIPS 1983-1989 (53:49) PROM CLIPS 1. Rockin' In The Free World (1989) 2. This Note's For You (1988) 3. Hey Hey (1988) 4. Touch The Night (1985) 5. Wonderin'(1983) 6. Cry, Cry, Cry (1983) 7. People On The Street (1985) NEIL YOUNG & THE BLUENOTES Canadian National Exhibition Grandstand, Toronto, Ontario, Canada 18th August 1988 8. On The Way Home 9. Sixty To Zero (Crime In The City) 10. Days That Used To Be COLOUR NTSC Approx.54min.