本作が撮影されたのは「1982年7月4日ロック・ウェルフテル公演」。そのマルチカメラ・プロショットです。前述の通り、古くから知られる定番映像の1つなのですが、本作はその最高峰マスターからDVD化されたもの。さすがにアナログ時代のエアチェックだけにデジタル大全盛の現代基準で「完全オフィシャル級!」と喧伝するわけにはいきませんが、当時基準なら全力で吠えられる。何よりも素晴らしいのはマスター鮮度。画素的にアナログ感は否めないものの、その一方でダビング痕や経年劣化がほとんど見当たらない。白線ノイズや走行ヨレの歪みも起きませんし、アナログ・ダビング特有のゴワゴワ感もないのです。その威力を痛感するのは、大観衆のスペクタクル。U2は日の高い時刻の出演だったため、隅々までびっしりと詰まった野外の客席がしっかりと見える。そこに本作のマスター鮮度が加わると、観客1人ひとりの表情までクッキリ鮮やかに見渡せてしまう。その広くて細やかなスペクタクルが素晴らしいのです。もちろん、そんな人の群れを目の当たりにして上気したボノの素顔も細やか。音声だけのCDでも若々しい演奏や歌声が楽しめましたが、映像はその説得力が数十倍……いや、数百倍にハネ上がる。実のところ、TV版はオープニングの「Gloria」や「The Ocean」「11 O'Clock Tick Tock」が未放送で、CDより数曲も少ない。そのため、決定盤はあくまでもFM放送のCDの方なのですが、それでも「百聞は一見にしかず」の説得力を見せつける映像作品なのも確かなのです。成功への野心に満ち、若々しい情熱の限りを叩きつけていた『OCTOBER』時代のU2。その瑞々しいU2の姿を約40分しっかり楽しめる1枚です。Festival Grounds, Werchter, Belgium 4th July 1982 PRO-SHOT 1. I Threw A Brick Through A Window 2. A Day Without Me 3. An Cat Dubh 4. Into The Heart 5. Rejoice 6. The Cry / The Electric Co. 7. I Fall Down 8. I Will Follow 9. Out Of Control 10. Fire PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.40min.