正調SCORPIONS節の名作を送り出しつつ、記録の少ない穴場時代となっている“PURE INSTINCT Tour”。そのフルショウを目撃できるプロショット作品が登場です。そんな本作が撮影されたのは「1997年7月19日モスクワ公演」。そのマルチカメラ・プロショットです。90年代後期のSCORPIONSと言えば、エレクトロ実験やオーケストラ/アコースティックなどの他流試合に邁進。『PURE INSTINCT』は、そんな実験時代に突入する直前の最後の正道アルバムでもありました。そのライヴは黄金時代の集大成であり、その決定盤として当店のサウンドボード・アルバム『PURE INSTINCT IN GERMANY 1996: FM MASTER』が人気を博しております。そんな中で本作はどんなポジションなのか。まずは、当時のツアー・スケジュールから振り返っておきましょう。1996年・5月1日:クアラルンプール公《5月21日『PURE INSTINCT』発売》・8月24日:ブレーマーハーフェン公演 ←※PURE INSTINCT IN GERMANY 1996・8月30日ー9月11日:アジア(5公演)←※NAGOYA 1996・10月5日ー12月3日:欧州#1(30公演)1997年・5月11日:シュタインハイム公演・6月24日ー7月19日:欧州#2(15公演)←★本作★・10月2日ー11日:ドイツ(3公演)・11月8日ー23日:中南米(8公演)1998年・6月18日ー7月1日:欧州#3(4公演)・10月3日:Rock for Germany出演 これが“PURE INSTINCT Tour”の全体像。『PURE INSTINCT IN GERMANY 1996』はメインの全米ツアーが終わった直後というタイミングでしたが、本作のモスクワ公演はそこからさらに1年ほど世界を巡った「欧州#2」。その最終日にあたるコンサートでした。当時のSCORPIONSと言えば冷戦終結時代の象徴であり、年がら年中東欧でライヴを行っていたようなイメージもありますが、実際にはそうでもない。本作にしても“MOSCOW MUSIC PEACE FESTIVAL”以来、8年ぶりのロシア公演でした。久々とは言え、SCORPIONSが東欧で絶大な人気を誇っていたのは事実。そのショウは現地局でテレビ放送。本作は、そのベスト・マスターからDVD化されているのです。最大のポイントは、ナチュラル感。実のところ、90年代の東欧放送だけに「完全オフィシャル級!」と呼ぶにはややザラ付いたタイプでもあるのですが、それだけに従来マスターはハイライトを強引に上げて細部が潰れまくっていました。それに対して本作は新発掘の若ジャネ・マスターのため、デジタル加工なしでもくっきり発色。ハイライト加工もしていないため、ディテールも潰れずに当時の放送電波そのものを楽しめるのです。そんなナチュラルな映像美で描かれるのは、正道ハードロックの桃源郷であった“PURE INSTINCT Tour”のフルショウ。ツアー開始から1年以上が経っていることもあり、セットはサウンドボード名盤『PURE INSTINCT IN GERMANY 1996』とも異なっていますので、ここで比較しながら整理しておきましょう。70年代/80年代(13曲)・ラヴドライヴ:Loving You Sunday Morning/Is There Anybody There?(★)/Coast to Coast/Holiday・ブラックアウト:Blackout/Dynamite(★)/When The Smoke Is Going Down(★)・禁断の刺青:Bad Boys Running Wild/Big City Nights/Still Loving You/Rock You Like a Hurricane・その他:We'll Burn The Sky(★)/The Zoo 90年代(5曲)・クレイジー・ワールド:Tease Me Please Me/Wind of Change・ピュア・インスティンクト:Oh Girl (I Wanna Be With You)/You and I/Wild Child ※注:「★」印はサウンドボード・アルバム『PURE INSTINCT IN GERMANY 1996: FM MASTER』で聴けなかった曲。……と、このようになっています。“PURE INSTINCT Tour”最大のポイントと言えば、その後は演奏しなくなってしまう新曲群。『PURE INSTINCT IN GERMANY 1996』で聴けた「Stone In My Shoe」が落ちてしまったのは残念ですが、その代わり(?)集大成感はアップ。ショウの前半では『LOVEDRIVE』が固め撃ちセクションが設けられ、『BLACKOUT』ナンバーも増量。さらにはウリ・ジョン・ロート時代の「We'll Burn The Sky」まで14年ぶりに復活を遂げています。そんな中で面白いのが「Wild Child」。チアガールのような女性ダンサー大挙として登場するのですが、これがとっても妙。ワラワラと無造作にやって来て、決まった振りもなくクネクネと身体を揺らしているだけ(APAホテルのCMみたいな感じです)。その意味不明な「出てきただけ」感が強烈な素人臭を発散していますし、そもそもケルト風の哀愁メロディとクネクネがまったく似合っていません。もう1ヶ所「え?」となるのが「Dynamite」。曲が始まる前にステージに出てきて紹介されるのがハーマン・ラレベル。「おぉ!」と盛り上がるものの、おもむろに曲が始まると叩いているのはジェイムズ・コタック。そのまま突入するドラム・ソロもコタックですし、一体ハーマンは何しにモスクワへ? なんでこのタイミングで紹介された? まったくナゾです。実験的な他流試合に臨む前、自らの手でSCORPIONS流ハードロックの正道を総括していた“PURE INSTINCT Tour”。その充実度に反して、オーディエンス録音ですら少ない音源稀少時代でもありました。そんな穴場時代をマルチカメラのフル・プロショットで楽しめる……この醍醐味は何物にも代えられません。「1997年7月19日モスクワ公演」のマルチカメラ・プロショット。現地局によるTV放送で、新発掘の若ジャネ・マスターからDVD化。ハイライトを強引に上げていた従来マスターとは異なり、ナチュラルなまま発色もくっきり。加工もしていないためにディテールも潰れずに当時の放送電波そのものを楽しめます。集体制的なセットや貴重な「Oh Girl (I Wanna Be With You)」、珍妙なダンサーが大挙して登場する「Wild Child」等々、多彩な見どころ満載なフル・プロショットです。Luzhniki Stadium, Moscow, Russia 19th July 1997 PRO-SHOT 1. Intro 2. Tease Me, Please Me 3. Bad Boys Running Wild 4. Oh Girl (I Wanna Be With You) 5. Loving You Sunday Morning 6. Is There Anybody There? 7. Coast To Coast 8. Holiday 9. You & I 10. The Zoo 11. We'll Burn The Sky 12. Wild Child 13. Big City Nights 14. Blackout 15. Dynamite 16. Drum Solo 17. Dynamite (Reprise) 18. Still Loving You 19. Wind Of Change 20. Rock You Like A Hurricane 21. Russian Theme 22. When The Smoke Is Going Down PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.118min. Klaus Meine – Lead Vocals Rudolf Schenker – Guitar, Backing Vocals Matthias Jabs – Guitar, Backing Vocals Ralph Rieckermann – Bass, Backing Vocals James Kottak – Drums, Backing Vocals