10年ぶりに復帰しつつ、アルバム1枚+ツアー1回で再びBLACK SABBATHを去って行ったロニー・ジェイムズ・ディオ。そんな彼のラスト・ステージを体験できる歴史的な大傑作映像が登場です。そのラスト・コンサートとなったのは「1992年11月13日オークランド公演」。本作は、その一部始終を体験できる絶景オーディエンス・ショットです。当時のロニーはオジー引退コンサートの前座を打診して固辞。そのままBLACK SABBATHを脱退することになりました。その経緯だけ聞くとまるでツアーを放り出してしまったように誤解しかねませんが、もちろん違います。彼の名誉のためにも、まずはスケジュールを俯瞰しつつ当時の事情を振り返ってみましょう。《6月22日『DEHUMANIZER』発売》・6月23日ー7月4日:南米(9公演)←※DEHUMANIZED IN THE SOUTH・7月24日ー8月9日:北米#1(13公演)・8月15日:Super Rock Mannheim出演・9月1日ー8日:英国(6公演)・9月12日ー16日:欧州(6公演)←※DEHUMANIZED MONSTERS・10月12日ー11月15日:北米#2(26公演)←★ココ★ 脱退前夜までプロフェッショナルだったロニー これが1992年のBLACK SABBATH。“DEHUMANIZER Tour”の映像というとリオ・デ・ジャネイロ公演やレッジョ・エミリア公演のプロショットが有名で、それぞれ『DEHUMANIZED IN THE SOUTH』『DEHUMANIZED MONSTERS』にセット組みされてお馴染みです。前述のように、ツアー最終はコスタメサでのオジー引退コンサート(2公演)だったわけですが、ロニーは不参加。JUDAS PRIESTのロブ・ハルフォードが代役を務めました。その交代劇がまたかなりの突貫。ここでさらに日程をフォーカスしてみましょう。「北米#2」の詳細・10月12日ー11月8日:北米#2(21公演)《11月9日+10日:ロブとリハ?》・11月10日:メサ公演《11月11日+12日:ロブとリハ?》・11月12日:サクラメント公演*11月13日:オークランド公演 ←★本作★《ロニー離脱→ロブ交代》*11月14日:オジー引退公演 ←※COSTA MESA 1992*11月15日:オジー引退公演 ←※COSTA MESA 1992 ……と、このようになっています。アイオミの自伝『IRON MAN』によると、ロブとはアリゾナ州フェニックスで2日間に渡ってリハーサルを行ったそう。ただ、当時のツアー日程はかなり過密で2日間のオフはなく、最寄りのメサ公演の前後で行われた可能性が高いと考えられます。つまり、ロブの代役が決定してからもロニーはBLACK SABBATHのシンガーとしてステージ(サクラメント公演/オークランド公演)に立っていた。決してツアーを放り出したわけでも怒って逃亡したのでもなく、事前の計画すべて完璧にこなしつつ、追加(オジーの前座)の打診を受けなかっただけ。あくまでもプロスフェッショナリズムを貫いていた。しかも、本作の最終公演はロブ交代の前夜でもありました。DEHUMANIZER時代を代表する超・絶景ショット そんな「最後の夜」を伝える本作は、貴重度を度外視するド級の絶景ショット。ステージ右側(アイオミ側)の2階席から見下ろし気味に撮影しているのですが、最前列なのか前方客の姿がまるで映らない。アンプなども遮蔽物にならず、ステージの端から端まで見たいところを見放題なのです。しかも、ズームが果敢。最アップではロニーやアイオミのウェストアップが画面いっぱいになりますし、そこまで果敢に攻めているのに安定感が素晴らしく、画質もボケないから驚き。1992年ですから機材の性能は現代とは比べものにならないはずなのに、それが信じられない強力ズームなのです。さらに、音声も極上級。当然カメラ付属マイクによるオーディエンス録音なのですが、力強い芯は細やかなディテールまで伴って耳元に届き、歌詞の一語一語も、リフの一発一発もえらくクリア&ダイレクト。音声だけのライヴアルバムとしてもリリースしたいくらいです。そんな映像美で体験できるのは、再評価高まる“DEHUMANIZER Tour”の最終形。ここでセットも整理しておきましょう。ロニー時代(10曲)・へヴン&ヘル:Children Of The Sea/Die Young/Heaven And Hell/Neon Knights・悪魔の掟:The Mob Rules・ディヒューマナイザー:Computer God/Time Machine/I/Master Of Insanity(*)/After All(★)オジー時代(4曲)・War Pigs/Black Sabbath/Iron Man/Paranoid ※注:「★」印は『DEHUMANIZED IN THE SOUTH』のリオ・デ・ジャネイロ公演プロショットで観られなかった曲。「*」印は後のHEAVEN & HELLプロジェクトで演奏しなかった曲。さり気なさすぎるカーマイン・アピスとの豪華共演『HEAVEN AND HELL』『MOB RULES』『DEHUMANIZER』を濃縮した名曲選は後のHEAVEN & HELLプロジェクトでも味わえましたが、演奏の質はかなり違う。特に強力なのはロニーのヴォーカリゼーション。さすがのロニーも2005年辺りで声の変質を余儀なくされましたが、1992年はその遙か以前。それこそ全盛の80年代から微塵の衰えもなく、それどころかヘヴィネス全盛時代に挑みかかるような鬼神の気迫で歌い、吠える。この裂帛の歌声こそ、“DEHUMANIZER Tour”が再評価されている最大の理由なのです。そんなフルショウの最後には、本作だけのサプライズも飛び出す。ヴィニーの実兄カーマイン・アピスがゲスト参加。ヴィニーに代わって「Paranoid」で共演するのです。ただ、面白いのは誰も気づいていないこと(笑)。短い暗転の間に人知れずシレッと交代し、ロニーが名前をコールするでもなくさり気なく曲に入っていく。たしかにカーマインらしいパーカッシヴな超個性ドラミングではあるものの、映像の本作でなかったら「この日のヴィニーは変わった叩き方してるな」としか思わなかったことでしょう。この翌日にはロブ・ハルフォードとステージに立ち、2006年のHEEAVEN & HELLプロジェクト立ち上げ袂を別つBLACK SABBATHとロニー・ジェイムズ・ディオ。その「最後の夜」を目撃できる絶景映像です。日本では叶わなかった“DEHUMANIZER Tour”の現場体験に最高なだけでなく、カーマイン・アピスのゲスト共演まで楽しめる1枚。「1992年11月13日オークランド公演」の絶景オーディエンス・ショット。2階席から見下ろし気味に撮影されており、前方客の姿がまるで映らない。ズームも果敢で最アップではロニーやアイオミのウェストアップが画面いっぱいになりますし、そこまで果敢に攻めているのに安定感が素晴らしく、画質もボケないから驚き。カーマイン・アピスのゲスト共演も美味しく、日本では叶わなかった“DEHUMANIZER Tour”のフル体験にはベストの1枚です。Henry J. Kaiser Convention Center, Oakland, CA, USA 13th November 1992 AMAZING SHOT!!! 1. E5150 2. The Mob Rules 3. Computer God 4. Children Of The Sea 5. Time Machine 6. War Pigs 7. I 8. Die Young 9. Guitar Solo 10. Black Sabbath 11. Master Of Insanity 12. After All 13. Drum Solo 14. Iron Man 15. Heaven And Hell 16. Neon Knights 17. Paranoid/Heaven And Hell (with Carmine Appice) Tony Iommi - Guitars Ronnie James Dio - Vocals Geezer Butler - Bass Vinny Appice - Drums Geoff Nicholls - Keyboards COLOUR NTSC Approx.96min.