『Live ’85』…イングヴェイ・マルムスティーンもとい、ライジングフォースのファンはこのライブ映像に一体どれだけ泣かされてきたでしょう。アルカトラズ脱退後の1985年1月、日本のレコード会社の強力なプッシュのもと初めて自身のソロ・プロジェクトとしての来日公演を行い、その模様をビデオ・シューティングしたこの映像作品が発売された時、購入したファンは固唾を呑んでブラウン管の前で見守った訳ですが…そこから長い悪夢が始まりました。何しろファンが一番観たい、インギーがギターでリードを取る大半のシーンでエンピツ型に揺れる意味不明なエフェクト処理や画面分割を無意味に織り交ぜ、殆ど観るに堪えない・購入者への嫌がらせとしか思えない仕上がりになっていたのですから。この映像処理のあまりの不評ぶり(当たり前です)に発売元のレコード会社は慌てふためき、急遽この映像エフェクト処理を取り除いた『Chasing Yngwie ? Live in Tokyo’85』という別バージョンをリリースし直した事で当時のファンはひとまず溜飲を下げたものでした。というのもこの” Chasing Yngwie “バージョンはそのタイトル通りインギーを煩わしい映像エフェクトが一切無い映像で追っているだけでなく、先の『Live ’85』とはカメラアングルが一部差し替えられインギーのショットが多めになっていて、まさにファンが待ち望んだ映像そのものだったからです。しかしその後は版権等の問題からどちらのバージョンも販売停止となり、暫く入手困難になっていた訳ですが、2006年12月にタイトルを『Yngwie J. Malmsteen Rising Force ? Live In Japan ’85』と変えた日本版DVDがリリースされると、これが再びファンの物議と混乱を招きます。何故ならその内容はChasing Yngwieバージョンではなく、あの忌々しいエフェクト処理だらけの” Live ’85 “バージョンだったからで、ファンはまた苛立ちと幻滅の坩堝に叩き落されたのでした。以後、2015年現在に至るまでファンが最も望むChasing YngwieバージョンはDVD化されていない現状が続いている訳ですが…でもその長かった苦難も遂に終わりの時が来た様です。今週末、ファンが待ち焦がれていたChasing Yngwieバージョンを過去最高の高画質と高音質で収録した本DVDが登場するからです!!では何をもって過去最高の画質と音質か、という事になります。このChasing Yngwieバージョンを収録したブートレッグDVD-Rが既に他メーカーから出ている事も当然承知しております。それでも何故そう断言出来るのか。それはズバリ、本作が現時点でChasing Yngwieバージョンの最高ランクにあたる日本版レーザーディスク(POLV-1703)をハイエンド機材でデジタル収録しているからです。順序立てて説明しますと、このChasing Yngwieバージョンには当時3タイプが存在しており、それは2種のビデオカセット版(ベータhi-fi・VHS)と、その最上位ソフトとしてリリースされたレーザーディスク(※以降、LDとします)版でした。このLD版の特徴は何と言っても画質の良さです。水平解像度400本以上で表示されるその発色の良さと鮮明さは、ビデオ版で当時最高の画質を誇ったベータhi-fi版を軽く超えるものでした(※ベータhi-fiは240本が最大値)。それゆえアナログテープ特有の色の滲みも皆無ですし、音質の良さも各ビデオ版とは比べ物にならないほど際立っているのです。この” LD版 Chasing Yngwie “を盤面の傷やアルミ銀板の腐食・劣化が全く無い、保存状態極上の日本LD盤からハイエンド機材でデジタル変換したものが本作で、走査ノイズやチラつき等が一切無いウルトラ・クオリティを実現したプレスDVDとなっている訳です。ところが先に挙げた他メーカーのChasing Yngwieバージョンを収録したDVD-Rタイトル(※数種存在する様です)は、前記したビデオカセット(主にVHS版)をマスター使用しているケースが殆どで、アナログテープ特有の画面のヨレやトラッキングノイズ、果ては劣化したVHS版特有の色の滲み出しや発色の悪さがそのまま出ているものばかりです。加えてサウンド面でも音の抜けと透明感がいまひとつで、分離感もあまり感じられません。しかし本作はミント状態のLDをマスター使用しているのでそれらのマイナス要因が元々ありませんし、それを最新機材で念入りに精査リマスターした上でデジタル変換していますから、LD版のシャープな映像と分離感の良いサウンドが何の劣化も無いまま鋭く鮮明に飛び出してくるのです。ファンの方にはお馴染みの定番映像ですが、画質も音質も最高レベルの” LD版 Chasing Yngwie “ですので、そのグレードの高さを中心に見どころをかいつまんで御紹介致しましょう。まず映像冒頭でライブ当日(85年1月24日)の中野サンプラザの正面入り口付近やそのロビーの様子が映りますが、手持ちカメラによるホームビデオ的なこの映像もベータhi-fi・VHS版以上に映像の輪郭がシャープに出ているのが分かると思います。物販コーナーではリリースになったばかりの1stアルバム『RISING FORCE』のLPレコードや、このライブを主催したレコード会社イチオシのバンド・アーティスト達のカセットテープ(!!)群が所狭しと並んでおり、そのメモリアルな場面も色鮮やかにお愉しみ戴けるでしょう。「I’ll See the Light…」ではインギーは勿論のこと、故・マルセルやジェフを含むデビュー当時の布陣が元気に動き回る姿が驚きの明瞭さで映し出され、ギターソロでの手元の動きも各ビデオ版をあざ笑うかの様な極上映像で飛び出します。アップでも膝上からの引いたショットでもインギーの指捌きがブレの無いシャープな映像で追えるだけでなく、頭上のライティングやマーシャル群のスイッチの赤い作動ランプ、各イクイップメントのランプ点灯も色の滲みが皆無で、それら何気ないステージの光景も当時撮影したままの姿で息衝いているのです。「Far Beyond the Sun」ではいよいよ愛機” PLAY LOUD “が登場し、使い込まれたボディの傷がまだ浅い頃の姿が最高の鮮明さで堪能出来ます。演奏もこれから上昇気流に乗ってゆく頃の一番エネルギッシュなプレイスタイル圧倒的な美しさで浮かび上がり、初回版ではエフェクトの嵐で見えなかった速弾きやミュートしながらのリードも、その指捌きが元通りの映像で完璧に追ってゆけます。また「Kree Nakoorie」がこの布陣によって演奏される興奮がパーフェクトな画と音質で愉しめるのもトピックスでしょう。ギター以上に熱の入ったジェフの鋭い歌唱力も注目ですし、ギターソロ後にキーボードの黒鍵に映り込む頭上ライトの緑や赤のライトも鮮明で、画質のグレードの高さを感じるシーンが連発しています。ギターソロではあの興奮がミラクルな画質で甦ります。「Coming Bach」のシーンは各ビデオ版ではもっと赤の滲み出しが激しいものでしたが、このLD版では自然な赤みで視覚的に受ける神秘性が増しています。速弾きで押しまくるシーンもその指捌きが間近で鮮明に映し出され、誰もが観たかった、そこに本来あるべき映像が最高の画質・音質で出てくる興奮に改めて酔い痴れて戴けるでしょう。「Disciples of Hell」では演奏開始前にインギーがマルセルと楽しそうにじゃれ合ったり、2人で同じフォームをキメながら曲をスタートさせるという、後の事情を知っていれば信じられないシーンが続出しますが、これが極上の映像で愉しめるのも初期ファンにはたまらない筈です。「Hiroshima Mon Amour」では左利き用のネックを移植した愛機を弾く姿が麗しい映像と音像で飛び出し、歯で熱く弾き込む様子もビデオ版以上の鮮明さで現れ、速弾きの手元の動きも微妙なフレージングの様子が詳細に追えるので画面に釘付けになるでしょう。「Jet to Jet」では来日中にフェンダー・ジャパンから提供され、センター・コイルを抜いて仕立てたストラトと共に曲の殆どをインギーの手元のアップ映像で追っており、まさに” Chasing Yngwie “を地で行くシーンが連発します。手持ちカメラでインギーを追う様子も各ビデオ版以上のリアルな発色で画面に出て、水平解像度440本以上のシャープな映像美を終始お感じになるでしょう。またギターソロの入り口でフィンガリングだけで1ターン目のフレーズを弾き、2ターン目でピッキングに変えるというタッチの違いもその差がビデオ版以上に質の高いサウンドで出ているのも特徴です。もちろんギタークラッシュのシーンも各ビデオ版を一蹴する生々しさで出てきますので御期待下さい。色々書いてきましたが、この映像が2015年現在でも未だに根本的な解決がされないままというのは異常事態と言えましょう。今後” Chasing Yngwie “バージョンで改めてDVD化、或いはBlu-ray Disc化される可能性が無いとは言いませんが、しかしCDやメディア媒体が全く売れなくなってしまった昨今、その可能性はかなり低いと考えた方が良いでしょう。そしてそうであればこそ、現状最高値のハイグレードな画質と音質でLD版が愉しめる本タイトルが俄然大きな意味を持ってくる筈です。フレットを深く削り込んだスキャロップド指板と各愛機達の姿、2年後に交通事故を起こす前のインギーの指捌き、そして何よりその速弾きの秘密とも言えた全く無駄の無いピッキングと、それに呼応して動くしなやかで流麗な左手指の動きが煩わしいエフェクト処理が一切掛かっていない” Chasing Yngwie “バージョンで、しかも最高の画質と音質を極めるLD版で肉迫出来る喜び。これが叶うのは唯一、本タイトルだけです。長きに渡って混迷の歴史を持つこの映像タイトルに今こそ決着を付けて下さい。 (84:49) 1. Pre-Show 2. Intro 3. I’ll See the Light, Tonight 4. As Above, So Below 5. Don’t Let It End 6. Far Beyond the Sun 7. On the Run Again 8. Anguish and Fear (incl. Drum Solo) 9. Icarus’ Dream Suite Op.4 10. I’m a Viking 11. Kree Nakoorie 12. Guitar Solo 13. Disciples of Hell 14. Hiroshima Mon Amour 15. Black Star 16. Jet to Jet 17. End Credits PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.85min. Yngwie Malmsteen ? Guitar Jeff Scott Soto ? Vocal Jens Johansson ? Keyboards Marcel Jacob ? Bass Anders Johansson ? Drums