本作が撮影されたのは「1994年1月28日ダラス公演」。“COUNTERPARTS TOUR 1994”の初日は1月22日で、この日はツアー開始からまだ一週間も経っていない5公演目なのです。さすがベテランと言うべきか、調子を掴むのも早い。現存する初日・2日目の録音には手探り感もありましたが、この5日目にはエンジンも暖まってきたのか、絶好調のショウを繰り広げています。そんなライヴを収めきった本作は、アレックス・ライフソン側の2階席からの撮影で、ほとんど真横に近いアングルです。私たちは、“ステージは正面がベスト”と思い込みがちですが、この横からの視野も素晴らしい。前列が振り上げる腕に患わされることなく、3人を一挙に見つめることができ、プロショット等では決して味わえない“ステージの立体感”をたっぷりと堪能できる。実際、コンサートに出向けば、こうしたポジションにも常に客席があり、そこにいる観客も楽しめるようにショウが組み立てられている。「メンバーと目が合っちゃった!」と喜ぶようなバンドの場合は厳しいですが、RUSHのようなバンドであれば、全景をたっぷりと楽しめる視界も最高なのです。そして、そのクオリティがまた素晴らしい。もちろん、90年代中期ですからあくまでもビデオ画質ではありますが、鮮度はバツグンでライトが織りなす発色も鮮やか。走行ノイズもなく、劣化がまるで感じられません。音声もクリアで開けた視野と同じく、直接飛び込んでくるような楽音が心地良い。その上で、激烈サウンドボードなCDとはまるで違う、客席ならではの臨場感・現場感もたっぷり。まさに“コンサート体験”には絶好の傑作映像なのです。他でも書きましたが、ライヴ記録の楽しみ方は2つ。“生演奏の鑑賞”と“コンサートの疑似体験”です。超絶サウンドボードで生演奏を詳細に味わい尽くせるCDに対し、本作は「絶好調・フル収録・光景つき」でライヴを追体験できる1枚です。それぞれ違った目的ながら、最上級クオリティで“COUNTERPARTS TOUR 1994”を楽しめる。 Reunion Arena, Dallas, TX. USA 28th January 1994 AMAZING SHOT!!! Disc 1(63:09) 1. Dreamline 2. The Spirit Of Radio 3. The Analog Kid 4. Cold Fire 5. Time Stand Still 6. Nobody's Hero 7. Roll The Bones 8. Animate 9. Stick It Out 10. Double Agent 11. Limelight 12. Mystic Rhythms Disc 2(46:50) 1. Closer To The Heart 2. Show Don't Tell 3. Leave That Thing Alone 4. The Rhythm Method 5. The Trees 6. Xanadu 7. Hemispheres: Prelude 8. Tom Sawyer 9. Force Ten 10. YYZ COLOUR NTSC Approx.110min.