ジョン・ウェットンが最期に望んでいたのはAISAでした。2017年1月11日には、癌治療のためにツアー参加を断念するコメントを発表しましたが、その際にも「年内にはツアーに合流するつもりだ」と力強い言葉がありました。残念ながらそれは叶わず、コメントから20日後に帰らぬ人となったのです。そんなウェットンが最後に愛したAISAの極上映像をご用意しました。本作に収められているのは「2010年8月3日アレクサンドリア公演」。マニア筋からも人気の高い“OMEGA TOUR”を収めた極上オーディエンス・ショットです。数あるASIAの記録の中から本作をチョイスしたのには理由がある。まず何より、極上のクオリティにあるわけですが、それ以上に感動的なのが撮影者の“想い”なのです。この作品を撮影したマニアは、猛烈にASIAを、そしてウェットンを愛している。別に撮影者が何を言うわけでもないのですが、アングル/カメラワークから止めどない愛情が湧き出す映像なのです。とにかく、楽曲・見どころの理解度がハンパではない。例えば、ウェットンをズームするにしても、わずかにベースを離した身振り・手振りも逃さず、歌詞に込めた感情を見せる表情も押さえきる。ベースを置いて歌う「Don't Cry」、初期の2部構成に戻された「The Smile Has Left Your Eyes」の押さえ方。特に後者は前・後半で声色と共に変わってゆくウェットンの仕草や表情も鮮明に読み取れる。このカメラマンは、確実に何度もASIAのライヴに足を運び、ウェットンの姿を心に焼き付けている。そうでなければ不可能なカットが淀みなく流れ続けるのです。もちろん、ウェットンだけではない。スティーヴ・ハウやジェフ・ダウンズ、カール・パーマー……各メンバーの見どころも然り。デリケートな指先の動きや大胆なタッチがしっかり観て取れる。ギターソロはもちろんのこと、「Through My Veins」等々でも「ここで、あのフレーズ!」となるところでギターに、キーボードに、と自在に寄る。カールのダイナミックなスティックさばきを大写しで、マエストロの達の姿を至近距離で見せつけてくれるのです。そうかと思えば、現場での臨機応変ぶりも素晴らしい。例えば「Holy War」の前では、曲後半の激しいソロに備えてカールが椅子から離れ、ドラムキットの調整(バスドラ?)するのですが、MC中に後ろでゴソゴソと何やらやっているカールに気付いたウエットンが「?」と苦笑い。単に詳しいのではなく、4人の関係・呼吸感までもが染みついており、現場の空気を心から楽しんでいる。私たちがライヴの現場で見つめ、感じる気持ちを目に見える“カタチ”に変えてくれた映像作品なのです。あまりに素晴らしいカメラワークに大切なことを書き忘れておりました。本作最大の美点は、それだけの視線を描き出す基本のクオリティ。1階の後方席からの撮影なのですが、三脚を使っており、観客の頭上越しにステージを直視。前列の頭や腕に煩わされることなく、ズームに寄るとほぼプロショットのような光景なのです。もちろん、三脚ですから安定度もバツグン。表情アップになろうと手ブレゼロは当たり前で、全景スクロールも滑らかなら、ズームもじっくりと動いて極めて見やすい。その上に来て、音声までもが極上。光景に相応しい遮蔽物ゼロのクリア・サウンドでありながら、サウンドボードとも違う音響が美しい。ハウのギターもダウンズのシンセも荘厳に降り注ぎ、そのド真ん中をブリブリとしたベースと歌声がレーザービームのように真っ直ぐ届く。カールにしても、ハイハットの微細な打音もキラキラと輝いている。音声だけでもCDにできるほどのサウンド・クオリティなのです。そのクオリティで描かれるAISAのショウがまた胸を打つ。ウェットンについては先述しましたが、この“OMEGA TOUR”はハウの円熟ぶりと安定感でも人気で、その旨みもタップリ。「Open Your Eyes」では音色と響きを変えるために固定のサイド・ギターを手持ちのギターと交互に奏で、快活な「Finger On TheTrigger」と重厚な「Time Again」のダイナミズム、ドラマティックな「An Extraordinary Life」の中盤ソロで見せるしなやかな指さばき、「The Heat Goes On」でのハウ印なカッティング……もう、見どころは枚挙に暇がない。そのすべてが猛烈な映像美で描かれていくのです。 「Heat Of The Moment」で大団円を迎えた4人は、肩を組んで会場を去る。その最後の刹那まで極上の映像美で捉えきった1本です。極上の高画質・高音質・完全収録……それ自体が素晴らしい事ですが、それだけならオフィシャル映像を見れば済む。しかし、いかにオフィシャルから幾多の映像作品がリリースされていようとも、ここまで“想い”が溢れ出す映像はない。AISAを、ウェットンを愛し続けたからこその眼差し。それを残したいという情熱。そんな撮影者の“無言の想い”がどうしようもなく私たちの胸を打ち、心の声を代弁してくれるのです。ウェットンを見つめてきた私たちの日々さえもすくい上げ、共感してくれる1枚。今だからこそ、この気持ちを共感してくださるあなたのお手元へ。新たにオーサリングを行い、オリジナル・メニューを付けました。 Live at Birchmere, Alexandria, Virginia, USA 3rd August 2010 AMAZING-SHOT 1. I Believe 2. Only Time Will Tell 3. Holy War 4. Never Again 5. Through My Veins 6. Don't Cry 7. Steve Howe Acoustic Guitar Solo 8. The Smile Has Left Your Eyes 9. Open Your Eyes 10. Finger On The Trigger 11. Time Again 12. An Extraordinary Life 13. End Of The World 14. The Heat Goes On incl. Drum Solo 15. Here Comes The Feeling 16. Sole Survivor 17. Go 18. Heat Of The Moment John Wetton - Vocal, Bass Steve Howe - Guitars Geoff Downes - Keyboards Carl Palmer – Drums