知られざるボウイ史上の最重要盤、まさか、まさかの登場です。その中身は、オフィシャル・リリースもされた大名盤『LIVE SANTA MONICA '72』。コアなマニアも知らなかった、その最高峰盤です。「1972年10月20日サンタ・モニカ公演」と言えば、長らく“もっとも有名なブートレッグ”・“ZIGGY STARDUST TOURの最高峰”としても知られるFM放送で、無数の既発群を生み出してきた歴史的大定番。幾多の記録の中でも頂点として君臨し続け、細かなジェネレーションやサウンドの違いを探しては最高峰を追い求められる。そんな長い歴史を持っている名録音中の名録音です。そして、その歴史に終止符が打たれたのが、2008年。満を持して公式が発掘した『LIVE SANTA MONICA '72』がリリースされ、頂点を極める超美麗の公式クオリティをもって総ての探求は終了した………はずでした。ところが、「頂点」「究極」「これ以上は存在しない」と思われていた公式盤は、実は頂上ではなかった。その“頂上越え”を果たした1枚が、本作なのです。そんな本作の正体は、実はオフィシャル盤。もちろん、リリース版『LIVE SANTA MONICA '72』ではありません。その発売前にEMI UKが極わずかな枚数を制作し、関係各所に配布されたプロモCD『THE EMI UK ADVANCE/PROMOTIONAL CD』なのです。通常、プロモ盤はレアではあるものの、封じ込まれた音声は製品版と同一なことがほとんど。単に“珍しい物”を追い求めるコレクター以外には縁のないものです。『THE EMI UK ADVANCE/PROMOTIONAL CD』もまた、そんなプロモ盤の1つと思われてきたわけですが、実は中身も違った。発掘されたマスターでプロモ盤を作り、その後でフィニッシュの工程を経て製品版が作られたのだと思いますが、なんと製品版よりも2分ほど長く、サウンドも異なっていたのです。この事実は、現品を持つコア・コレクターにも知られておらず、それゆえにネットに出回ることもなかった。ここでしか聴けないサウンドなのです。製品版でカットされた2分は、チューニング等の曲間。恐らく、記録の貴重さよりも初心者でも聴きやすい完成度を狙ってカットされたのだと思いますが、歴史的記録になんという暴挙。そもそも、わずか2分の曲間に辟易する人間に、このコンサートの価値が分かるとは思えない……。しかしまぁ、その気楽さがオフィシャルでもあるわけです。その2分以上に重要なのが、全編を貫くサウンド。もちろん、録音自体は製品版と同じですが、プロモCDの方が遙かにナチュラル。発掘マスターそのもののサウンドが聴けるのです。製品版がリリースされた2008年というと、名盤のリマスター再発商法も一段落付き、“リマスターのリマスター”も蔓延してきた頃。違いだを出すためか、ラウドネスウォー(音圧競争)が激化していた時代でした。現在では、安易な音圧競争も落ち着いてはきましたが、当時は猫も杓子もガンガン音圧を上げていた。その時代の世界に問うためか、製品版『LIVE SANTA MONICA '72』も過激なイコライジングが施されていたのです。実際、プロモCDのサウンドは鳴りが自然なだけでなく、製品版で潰れていた音のピークも綺麗に再生される。もし、波形編集ソフトを使われる方なら、ぜひ見比べていただきたい。トップが平坦につぶされていた製品版とはまるで違い、クッキリと美しい波を目にされることでしょう。もちろん、波形など見なくても違いは一聴瞭然。単なる迫力だけを追い求めていた時代に失われた、“美しい音”。それが76分間を貫くのです。そんな奇跡のようなプロモCDのナチュラル・サウンドをダイレクトに楽しめるのが本作なのです。ただ、その現品は完璧ではなく、トラック間に1.75秒ずつの間が空いていた。関係者の“お試し”ゆえの荒っぽさなのか、リリース前の流出を嫌ったのかは分かりませんが、もちろん、本作ではていねいに詰め、キチンとシームレスに聴ける形に整えました。もちろん、サウンドそのものには一切の手を加えていません。あまりにも有名で決定的な歴史的名音源。オフィシャルしか発掘し得ないマスターでありながら、蛇足でしかなかった“最後のひと仕事”が施される前の超美麗サウンドが存在したのです。ボウイ史上でも頂点となるライヴアルバムの地上最高峰版にして、オフィシャルの気まぐれが生んだ奇跡の1枚。今週末、あなたは“真のLIVE SANTA MONICA '72”に遭遇するのです。
Live at Santa Monica Civic Auditorium, Santa Monica, CA. USA 20th October 1972 STEREO SBD (76:17)
1. Introduction 2. Hang on to Yourself 3. Ziggy Stardust 4. Changes 5. The Supermen 6. Life on Mars? 7. Five Years 8. Space Oddity 9. Andy Warhol 10. My Death 11. The Width of a Circle 12. Queen Bitch 13. Moonage Daydream 14. John, I'm Only Dancing 15. I'm Waiting for the Man 16. The Jean Genie 17. Suffragette City 18. Rock 'n' Roll Suicide
David Bowie - guitar, vocals Mick Ronson - guitar, vocals Trevor Bolder – bass Mick "Woody" Woodmansey - drums Mike Garson – piano