1972年の来日公演を境にライブ・サウンドを大きく変化させたZEPの到達点が1973年のアメリカ・ツアー。元々73年ツアーは年頭のイギリスから要所要所においてサウンドボード録音が存在するという点において、ZEPのライブ音源分布図においては分岐点となった時期。それだけにアメリカ・ツアーにおいてもサウンドボード録音に恵まれているのですが、そんな中で当店が今回リリースするのは5月14日のニューオリンズ公演。CD時代に入ってから広まった73アメリカのサウンドボード録音の一つとして、マニアにはおなじみの音源。それまで「永遠の詩」サウンドトラックで事足りると思い込まれてしまっていたアメリカ・ツアーも、時期によって演奏スタイルがまったく異なっていたことを伝えてくれた貴重音源の一つでもあります。ニューオリンズだけでなく、73年アメリカ・ツアーの前半でサウンドボード録音が集中しているのがこの時期。とはいっても、一見すると音源に恵まれているように映るこの時期ですが、ツアー最初期になると音源の発掘が極端に限られてしまうのです。何しろツアー開始直後で存在する音源が今も昔もツアー二日目だった5月5日のタンパ(オーディエンス録音)だけ。その後の公演はサウンドボード録音どころかオーディエンスすら未だに発掘されないというエア・ポケットであり、ある意味では謎に包まれていると言っても過言ではありません。ところが13日のモービル公演を皮切りとして、それこそダムの水門が開いたかの如くサウンドボード録音が出回っています。今やツアー前半はサウンドボード録音の方が多いほど。しかし今回のニューオリンズを始めとした5月中旬のステージを収録したサウンドボード録音ですが、先のモービル以外は音質の粗い録音状態のものが多く、やや見劣る印象が否めない感があったのです。しかもこの日の音源などは最初にCDでリリースされたのではなく、カセット・タイトルでリリースされていたことも音源の状態を反映していたものだったと言えるでしょう。もう一つの問題は、ショウを完全収録していないこと。これは73年サウンドボード録音において一貫した欠損状態なのですが、元々ライブ・アルバム用のマルチトラック録音ではなく、PAアウトの音源であり、記録用あるいはスタッフのチェックといった目的から録音されていたものであり、ライブを完全収録するという意思なしで録音されていた音源だったからこそ起きた現象でした。そこで近年この音源を収録したアイテムは、どれもオーディエンス録音を用いて欠損部分をアジャストした状態でのリリースが当たり前となっています。オーディエンス録音の方は比較的近年になって発掘されたものでしたが、このツアーの中でも上位に属する高音質だったことから、マニアの間では評判を呼びました。そこで二つの音源を駆使したアイテムが当たり前となった現在ではありますが、今回当店がリリースするのはマニアの間でおなじみWinston Remastersよって作られたバージョン。これは何といってもサウンドボード録音のラフな質感を緩和させたイコライズが実にうまく施されているのです。この後のダラスやフォート・ワースのサウンドボード録音にも当てはまることですが、その粗さ故に見過ごされがちなこの時期の音源。しかしWinston Remastersの仕上がりは見事なものがあります。あのラフな音質が随分と滑らかに生まれ変わっており、聴きやすさが大幅に向上しているのです。元があのような抜けの悪い音質の音源でしたので、これには驚かされます。この日のサウンドボードはオープニング「Rock And Roll」の途中から録音がはじまっており、それを始めとしたいくつかの欠損部分に関しては例のオーディエンス録音でアジャストされています。先にも触れた臨場感豊かな音源から、正反対の臨場感が希薄なサウンドボード録音へと切り替わる違和感こそ否めませんが、やはり演奏のディティールを克明に再現してくれるサウンドボード録音は別格。しかもこの日の演奏ぶりなどは後のサントラで聴かれるツアー終盤の演奏とは雰囲気がまったく違うのだからなおさらというもの。7月のツアー後半と比べると、この日の演奏は非常に落ち着いたものですが、それでいて春のヨーロッパ・ツアーのようなヘヴィ・グルーブとも違う。むしろ「Celebration Day」などはいつも正確無比なジョンジーがミスを犯しそうになるといった珍しいハプニングまでみられます。しかし何といっても聞き逃せないのが、遊びを含みつつも非常に丁寧なジミーのギター・プレイ。勢いを増した7月のプレイとはまるで印象が違います。「Since I’ve Been Loving You」などはフレーズを丁寧に紡ぎ出す様に好感を持てますし、彼が最高の冴えを見せるのが「Dazed And Confused」。この日に関して言えば「San Francisco」セクションに向かう前でクリーム(ロバート・ジョンソン)の「Crossroads」のリフを繰り返す場面が昔から有名ですが、この日のジミーはクリーム・モードだったのか、後半でも彼らの「Cat's Squirrel」のリフを弾き出すというハッスルぶりがとても印象的。 しかしミスが無い訳ではなく「Misty Mountain Hop」ではプラントが歌い出すタイミングを間違えてしまうのですが、ボンゾが彼に合図を出してすぐに歌い出す場面などは息が合ったバンドならではの阿吽の呼吸ぶりが伝わってきて鳥肌モノ。それに「Stairway To Heaven」の終盤になると、プラントの声のキレの悪さが目立ちますが、これはコンディションの問題というよりは、自身の声の衰えを自覚して唱法を変え始めたプラントの発展途上な姿と呼ぶのが正確でしょう。そしてプラントが冒頭「Drag Queen Of New Orleans」とボンゾを紹介してから始まったのが有名な、20分に及ぶ「Moby Dick」ですが、実はイントロとアウトロの両方でジミーの音が不安定になる場面があったのです。こうした73年アメリカ・ツアー前半ならではの魅力がたっぷり詰め込まれたサウンドボード録音ながら、その音質のせいから今一つ敷居が高く映ってしまったニューオリンズ公演。Winston Remastersによる見事な仕事ぶりで生まれ変わったサウンドボード録音の聴きやすさを、ぜひあなたの耳でお確かめください。しかも今回のCDによるリリースに当たっては、さらにピッチと音量レベルを調整しただけでなく、例の粗さをWinstonが緩和しても微弱ながら残っていたチリチリというノイズを解消させ、さらに聴きやすい状態へと仕上げました!
Live at Municipal Auditorium, New Orleans, LA. USA 14th May 1973
Disc 1 (61:38)
1. Introduction 2. Rock And Roll 3. Celebration Day 4. Black Dog 5. Over The Hills And Far Away 6. Misty Mountain Hop 7. Since I've Been Loving You 8. No Quarter 9. The Song Remains The Same 10. The Rain Song
Disc 2 (61:43)
1. Dazed And Confused 2. Stairway To Heaven 3. Moby Dick
Disc 3 (29:05)
1. Heartbreaker 2. Whole Lotta Love 3. Communication Breakdown





























