母国に戻ってきた初期FLOYD復刻プロジェクト、NICK MASON'S SAUCERFUL OF SECRETS。その最新ライヴアルバムが3作同時リリース決定です。本作はその中でも格別のクオリティで2019年の英国編を代表していく(かも知れない)大傑作です。そんな本作に収められているのは「2019年4月30日アイルズベリー公演」。その極上オーディエンス録音です。スケジュール全体の概要は『CARDIFF 2019』の解説に譲るとして、今回は英国編3作の同時リリースですので、ツアーの詳細でショウのポジションを確かめてみましょう。 ・4月29日『CARDIFF 2019』・4月30日:アイルズベリー公演 【本作】・5月1日『CAMBRIDGE 2019』《5月2日:大英帝国勲章を受勲》・5月3日:ロンドン公演・5月4日:ロンドン公演 以上が今回の英国ツアー概要。全5公演が行われ、今週は前半3公演が登場となりました。本作のアイルズベリー公演は、その2公演目にあたるコンサートでした。コレクター向きにポジションの詳細から始めましたが、本作のクオリティはそんなコレクター以外にも全力でお薦めしたい極上品。当店では世界各地の名録音を次々とご紹介してきましたが、その個性は千差万別。ただ、強引に分類するなら3タイプがあり、名付けるならサウンドボード的なビビッド感を誇る「クリア・タイプ」、鳴りが迫力まで醸し出す「ダイナミック・タイプ」、現場のリアルな体験感を味わう「ムード・タイプ」といった感じ。この分類で言うと本作は「クリア・タイプ」。もちろん、強引な分類ですので正確にはほんのりとしたホール鳴りも吸い込んでおり、それが見事な艶やスペクタクルも描いてはいる。しかし、それ以上に鮮やかなエッジやグイグイと迫る芯の力強さが圧倒的。距離感が出やすいスネアやバスドラさえもギラギラとした輝きでダイレクト感たっぷりなのです。 この美しさや鮮やかさは「英国ツアーの中では」という狭い話ではない。現在、世界中のマニアが1つ前の北米ツアー総括に勤しんでおり、どれが頂点録音なのかと熱い議論が交わされている。本作をその最高峰レースに放り込んだとしても有力な候補になる。まだ北米ツアーの結論でさえ固まっていないので断言はできないものの、「英国ツアーのトップ」ではなく「2019年のトップ」にもなり得る極上サウンドなのです。そしてもし「2019年の頂点」に輝いたとしたら、それは同時に「SAUCERFUL OF SECRETSの頂点」をも意味する。北米ツアーは昨年よりも「Remember A Day」「Childhood's End」が増えた過去最大のセットリストが評判となりましたが、今回の英国ツアーはそのセットを引き継いでいる。しかも、北米ツアーから一週間の間を空けたバンド・コンディションも万全。休みを経た母国だけに疲れもなく、長期の休みではないためにアンサンブルに崩れもない。本作は、なるべくしてなった素晴らしいショウを極上サウンドでフル体験できるわけです。また、英国ツアーというのはSAUCERFUL OF SECRETSの進化を実感するにも重要。彼らは母国のクラブでお披露目ギグを行い、本格始動した昨年ツアーでも英国公演を行い、そして最大規模に拡大された今年も母国でショウを行った。当店では、その各段階の極上ライヴアルバムを取りそろえており、長く鳴っていくセットや演奏の熟達度を比較して楽しむ事もできるのです。最新UKツアーを伝える3作同時リリース。その中でもダントツの完成度を誇るライヴアルバムです(逆に機材トラブルを体験できる『CAMBRIDGE 2019(Amity 553)』も捨てがたいですが)。今後のロンドン公演がどんなサウンドになるのか分からないので軽々にNo.1とは言えないものの、思い切って言ってしまいたい大傑作。 Friars Aylesbury Waterside Theatre, Aylesbury, UK 30th April 2019 PERFECT SOUND Disc 1(55:17) 1. Intro 2. Interstellar Overdrive 3. Astronomy Domine 4. Nick Mason Introduction 5. Lucifer Sam 6. Fearless 7. Obscured By Clouds 8. When You're In 9. Remember A Day 10. Arnold Layne 11. Vegetable Man 12. Nick Mason Introduction 13. If 14. Atom Heart Mother 15. If (reprise) Disc 2(58:20) 1. The Nile Song 2. Guy Pratt Speaking 3. Green Is The Colour 4. Gary Kemp Speaking 5. Let There Be More Light 6. Childhood's End 7. Nick Mason Speaking 8. Set The Controls For The Heart Of The Sun 9. See Emily Play 10. Bike 11. One Of These Days 12. A Saucerful Of Secrets 13. Point Me At The Sky