一時はライブ音源が出尽くしたと思われたレッド・ツェッペリンですが、ここ数年は72のデトロイトにグラスゴー二日目、71ミラノのロングバージョン、さらには928と929の別音源など、毎年少ないながらも着実に音源が発掘されています。2021年はまだ始まったばかりですが、今年は早くもZEPの新発掘ライブ音源が登場して世界中のマニアを驚愕させてくれました。1969年夏のアメリカ・ツアーは実質的にフェス巡りといったスケジュールにて行われ、ZEPのアメリカでの人気を獲得する上で重要な役割を果たしています。このツアーでもっともメジャーな音源がツアー最終日のテキサス・ポップ・フェスティバルでしょう。反対にツアーの初日となったのがアトランタ・ポップ・フェスティバル。このイベントでのZEPのステージは今まで音源が存在せず、代わりに無音声のカラー8?フィルムでかろうじて垣間見られたもの。またテンガロンハットを被って演奏するペイジの姿を捉えた写真などでも知られていました。ところが今月、突如としてネット上にこの日のオーディエンス録音が姿を現したものだから世界中のマニアが仰天。何でもマスターテープは現存しておらず、そこかコピーされたファースト・ジェネレーションのリールが発見されたという。またショー終盤は誤って消されてしまい、その部分も現存していないとのこと。よって収録時間は42分という短いものなのですが、それでも聞き応えのある素晴らしい演奏と録音であることがまた世界中のマニアを驚かせています。まず驚くほど音質がイイ。特にプラントのボーカルとペイジのギターの音像は意外なほど近くて輪郭がくっきりしている。これまで50年以上も眠っていた音源であれば、音像が遠くてボヤボヤ、あるいはこもった音質だったとしても致し方ない。ところが今回の音源は非常に聞きやすいのです。おまけに鮮度も驚くほどのレベルで、これほどの音源が今まで秘匿されていたとは驚きを禁じえません。翌日のニューポートには当時としては珍しいステレオのオーディエンス録音が存在しますが、こちらはモノラル。このモノラル録音が功を奏して余計にプラントのボーカルの存在感が際立っているように聞こえます。一方で周囲がざわついているのがアメリカのフェスらしいところで、時には缶や瓶を片付けるような音まで入るのが生々しい。ZEPオフィシャル・サイトで見られる当日の画像ではドラッグでトリップしたとおぼしき全裸の男性がステージからつまみ出される場面が捉えられていますが、今回の音源からそのような場面が窺い知れる個所はなく、おそらくライブ終盤に起きたハプニングかと推測されます。この日の一連の画像を見ると、ZEPは日没前からステージに上がり、出番を終える頃には夜になっていたのでしょう。その頃になるとプラントが何故か上半身裸で歌っている姿も捉えられており、そんな彼に刺激されてラリッた男性が全裸のまま飛び出してきたのかもしれません。それに不完全収録でもこの日の演奏の素晴らしさが音質の良さと相まってリアルに感じられる。そもそもこのツアーはニューポートにセントラル・パーク、果てはステート・フェアに定番テキサス・ポップと名演と名音源が居並ぶ時期。ところが今回のアトランタもそれらに負けない素晴らしさ。「I Can't Quit You Baby」からしてプラントのスクリームがバンドをグイグイとひっぱっており、ツアー初日からして彼以下、バンドがトップ・コンディションにあったことを見せつけてくれます。それに続いた「Dazed And Confused」はこの日最高の演奏であるばかりか、69年夏の中でも最上位にランクされるべき名演。おなじみボウイング・セクションを終えるとペイジのトリッキーなフレーズが冴え渡っており、この流れを引きついだプラントの「ラララ~」というハミングのボーカル・インプロが印象的。当時の「Dazed~」は演奏が短めで後のライブのようなリズムの駆け引きがない分、プラントが展開のカギを握っていたことがよく解る場面だとも言えるかと。そして録音では最後となる「You Shook Me」でもプラントのスクリームと得意のブルース・パターンで弾きまくるペイジのプレイが圧巻で、最後はセントラル・パークの予告編と呼びたくなるような観客との絡みが面白い。この時期は演奏の平均レベルが非常に高く、これほどまでの演奏を連日やすやすと生み出していたのだな…と再認識させられる音源だとも言えましょう。先にも申しましたように音源と録音の状態が非常に良く、今回のリリースに際してもピッチを微調整する程度しか手を加えていません。正に驚きの新発掘音源であるばかりか、演奏内容も聞きやすさも抜群!初登場。そして驚きの高音質!!Atlanta International Raceway, Hampton, Georgia, USA 5th July 1969 (42:09) 01. Train Kept A Rollin' 02. I Can't Quit You Baby 03. Dazed And Confused 04. White Summer 05. You Shook Me