毎週のお楽しみマイク・ミラードのマスター公開、今週は1980年のザ・フーでした。彼らの80年ツアーと言えば「LOS ANGELES 1980 1ST NIGHT: MIKE MILLARD ORIGINAL MASTER」の記憶も新しいかと思われますが、それが6月23日のLAスポーツ・アリーナだったのに対し、今回は三日前のLAフォーラム。つまり先のタイトルはスポーツ・アリーナでの初日ということを指していました。80年のアメリカ・ツアーでLAを訪れたフーのスケジュールはちょっと変わっていたのです。まずフォーラムで二回公演を行った後、一日置いてフォーラムより大きなスポーツ・アリーナで五回の公演を行うというものでした。つまり今回の音源はフー80年のLA公演全体での初日ということ。もちろん今回の音質も素晴らしい。ただし「LOS ANGELES 1980 1ST NIGHT」ほど優等生的な録音状態ではなく、ジョン・エントウィッスルのベースが少し奥に追いやられている。とはいえ時にアグレッシブすぎるきらいのある彼のベースですので、今回のバランスを聞いていても思いのほか違和感はないはず。全体的にはロジャー・ダルトリーの声が目立っているのが魅力ですし、「Won't Get Fooled Again」で二回も客席から鳴らされる爆竹の音も生々しい。しかしミラードがライブに遅刻してしまい、「I Can't Explain」から「Sister Disco」のライブ序盤四曲が未収録だったのです。彼のライブ遅刻と言えばZEPのロングビーチ二日目が一番有名ですが、この日もまたやっちまったのですね。曲目を見てもらうだけでも「LOS ANGELES 1980 1ST NIGHT」とはライブの構成がまるで違うことに驚かされるでしょう。しかし今までこの日のオーディエンス録音は1980年と思えないほど音がこもって歪んだ最悪の音源しか存在していなかった(そのせいで補填も諦めた…と言えばどれほど劣悪なものか想像してもらえるかと)ので、今回の発掘は冒頭四曲が欠けていても非常に意義のある発掘だったのです。とにかくこの日はピートが絶好調。「Pinball Wizard」の後で「See Me, Feel Me」にメドレーするという通常の展開を無視し、代わりに「I Can See For Miles」始めてみたら相当に楽しくなった模様。どんどんテンションの上がったピートはスポーツ・アリーナの時と違いアンコールを「Young Man Blues」から開始。これでケニー・ジョーンズ期の同曲の高音質音源が発掘されたことにもなるのですが、その演奏がびっくりするくらいカッコイイ。キース・ムーン時代とは違った激しさは十分に魅力的ですし、サポートのラビットが弾いたピアノもよく合っている。そこから雪崩れ込むように始まったのは何と「Dancing In The Street」。フーがデビューしたころに演奏していたR&Bカバーという印象が強いですが、実はケニー時代の79年から80年にかけては折に触れて演奏していたレパートリー。続いてピートが後にソロアルバムでリリースする「Dance It Away」を始めるのもこの時期に彼が好んだ展開ですが、そこからさらにピートが歌い出したのは、何とまだ録音前だった新曲「Another Tricky Day」の草稿。このことからも解るように、ピートがバンドをグングン引っぱったことで、80年のステージの中でも飛びぬけてスリリングな一日となった日がミラードのおかげでようやく良好音質で楽しめるようになったのです。これはもうケニー時代を毛嫌いしている人にも推したい名演! Live at The Forum, Inglewood, CA, USA 20th June 1980 TRULY PERFECT SOUND Disc 1 (58:44) 1. Behind Blue Eyes 2. Dreaming From The Waist 3. Drowned 4. Who Are You 5. 5:15 6. Pinball Wizard 7. My Generation 8. I Can See For Miles 9. Sparks 10. See Me, Feel Me Disc 2 (32:37) 1. Won't Get Fooled Again 2. Young Man Blues 3. Dancing In The Street 4. Dance It Away / Another Tricky Day 5. The Real Me Roger Daltrey - lead vocals, tambourine, harmonica Pete Townshend - guitar, vocals John Entwistle - bass guitar, vocals Kenney Jones - drums John "Rabbit" Bundrick - keyboards, piano, tambourine, backing vocals Dick Parry - saxophone Reg Brooks - trombone Dave Caswell - trumpet