英国ハードロックの伝統を守る新星だった70年代のJUDAS PRIEST。その極上ヴィンテージ録音が登場です。本作に収められているライヴは3公演。『SIN AFTER SIN』時代の「1977年6月21日:サンアントニオ公演」「7月18日:ニューヨーク公演」をメインに、さらに遡った「1975年10月11日:スラウ公演」をボーナス収録。初期の貴重な記録をコレクションできる2枚組なのです。そもそも、PRIESTの初期記録は非常に限られています。デビュー以前はもとよりデビュー後もしばらくはマイナーな存在で、彼らの録音がグッと増えるのは4thアルバム『STAINED CLASS』以降。当時はハードロック暗黒時代だった事もあり、オーディンス記録もままならない状況でした。まずは、『SIN AFTER SIN』時代までのライヴ記録を整理してみましょう。ROCKA ROLLA時代(1975年)・4月25日:テレビ出演 公式『ELECTRIC EYE』・8月22日:レディングフェス出演 『READING ROCK ‘75』・10月11日:スラウ公演 ←★本作ディスク2 SAD WINGS OF DESTINY時代(1976年)《記録ナシ》SIN AFTER SIN時代(1977年)・6月21日:サンアントニオ公演 ←★本作ディスク1・7月18日:ニューヨーク公演 ←★本作ディスク2以上、5本。スタジオ・アルバム3作に対し、あまりにも少ない。公式には『ELECTRIC EYE』のボーナス映像だったOLD GREY WHISTLE TEST出演の2曲しかなく、他はすべてオーディエンス録音。その中も歴史的名盤『READING ROCK ‘75』が代表作として知られていますが、本作はそれ以外の3本を総まとめしたライヴアルバムなのです。それでは、各公演を詳しくご紹介していきましょう。【ディスク1:1977年6月21日サンアントニオ公演】まず登場するのは、SIN AFTER SIN時代の代表録音にして最高傑作たる1977年サンアントニオ公演。この年、PRIESTは初めてアメリカ・ツアーを体験するわけですが、その4公演目にあたるオーディエンス録音です。驚くべきはクオリティ。聴けるだけでありがたい1977年録音でありながら、そのサウンドは70年代の全オーディエンス録音でも屈指の素晴らしさ。アナログ・マスターからダイレクトにデジタル化されており、轟音・爆音どころかマニアから「まるでサウンドボードだ」と賞賛を集める名録音なのです。実のところ、リアルな熱狂をサウンドボードとは言い難いわけですが、肝心の演奏音/歌声のクリアさ、会場反響のほとんどないダイレクト感には「ライン録音ばり」と言いたくなるのもよく分かる。原音では1/4音以上狂っていたピッチも正確に揃え、SIN AFTER SIN時代の最高峰を更新する1枚に仕上げました。そのサウンドで描かれるショウがまた素晴らしい。素晴らしすぎる。ジョー・アンソニーによるバンド紹介「Their first US tour, JUDAS PRIEST!!」からしてムード満点。そこから雪崩れ込むオープニングの「Let Us Prey/Call For The Priest」はもう目も眩むような激レア度。そこから“英国ロックの新星”だった彼らの覇気が止めどもなく溢れ出す。正直なところ、後年に比べるとやや怪しい演奏だったりもするのですが、アメリカ初体験に奮起する姿が浮かぶような熱演が溢れ出し、ショウ全体に漲る。特に素晴らしいのは当時25歳のロブ・ハルフォード。そのハイノートの若々しいこと! 後に鋼鉄神として名を轟かせるわけですが、本作からはただひたすら無垢で英国ハードの叙情感をたっぷりと聴かせる。張りも艶も超絶な歌声を聴くだけでも、感無量のライヴアルバムです。【ディスク2:1977年7月18日ニューヨーク公演】続いては、約1ヶ月後のニューヨーク。伝統の名会場“パラディウム”でのライヴです。この後、彼らはツアーの度にパラディウムでライヴを行い、1979年や1981年には素晴らしいサウンドボードも残している(『ON AIR 1979 』『DEFINITIVE BLITZ 1981(Zodiac 266)』でお楽しみ頂けます)。まさに彼らにとって“米国の前哨基地”とも言える会場ですが、この日はその初見参だったのです。そのサウンドは、こちらもなかなか素晴らしいヴィンテージ・オーディエンス。かつて「Diamonds & Rust」がカットされた既発もありましたが、本作は発掘されている6曲すべてを収録しています。さすがに奇跡的なサンアントニオ公演(ディスク1)には及ばないわけですが、轟音・爆音の類ではなく、ノイズだらけの中から演奏を探すタイプでもない。骨太・肉厚な楽音が力強く現場を制圧しきっている。端正な美やディテールまでは望めないものの、逞しさはサンアントニオ公演にも負けない。実のところ、曲間にはテープチェンジのキュル音やテープを節約するカットもあったりする(演奏部には被りません)のですが、それさえも味わい深いのです。そして、こちらでも「Let Us Prey/Call For The Priest」が聴けるだけでなく、フレッシュな演奏が眩しい。ロブは初のアメリカで後のレザー&スタッドのヒントを得たそうですが、ショウ全体を覆う興奮した歌声からもカルチャー・ショックの凄さがうかがえる。そして、約1ヶ月で急速に進化しつつある演奏ぶりもポイント。サンアントニオ公演では、いかにも不慣れ感が漂い、曲名をコールしてから演奏が始まるまでにやたら戸惑っていた。その姿も70年代らしくリアルだったわけですが、このニューヨーク公演ではショウ運びがグッとスマート。まさに1日・1公演ずつ進化していった20代の成長ぶりがうかがえるのです。【ボーナストラック:1975年10月11日スラウ公演】ディスク2の最後には、ボーナスとして『ROCKA ROLLA』時代の超・貴重録音を収録。このスラウ公演は、復帰したアラン・ムーアの初日でもありました。上記したように、1975年の録音は『ELECTRIC EYE』『READING ROCK ‘75』と本作のみ。本作は初期録音コンプリートに欠かせない1作なのです。こちらも貴重音源らしいヴィンテージな味わいと骨太・肉厚な感触が素晴らしい。鮮度は今ひとつではあるものの、ダイレクト感では70年代でもトップクラスで『READING ROCK ’75』を超えはしませんが、確実に肉薄する名録音。ボーナスと呼ぶにはもったいないクオリティではあるものの、5曲・約30分の短さゆえにここに収録されました。その5曲が特濃! 本編よりも更に若々しい演奏が凄まじくリアル。タイムラインとしては『ROCKA ROLLA』時代なものの、『ROCKA ROLLA』の曲はいっさいなく、大名盤『SAD WINGS OF DESTINY』の初期バージョンがたっぷり聴ける。特に凄いのは「The Ripper」。完成版とはアレンジがまったく異なり、歌詞も仮なら正規版にはないパートにもギターに沿って早口ヴォーカルが入る。ファイナルよりも遙かに禍々しく邪悪なバージョンなのです。そして、極めつけは「Mother Sun」! これがただの未発表曲じゃない。『READING ROCK ‘75』でも目玉トラックだった8分超の大作でして、濃厚な英国ロックの叙情がたっぷり漂う名曲。まるで超巧い歌付きのWHISHBONE ASHです。なぜ、これほどの名曲を正規に残さなかったのか。大作だけに細部のアレンジが決めきらないまま、バンドの音楽性が変化していったのか……そんな妄想まで広がる素晴らしい1曲なのです。貴重極まる『SIN AFTER SIN』以前。ヘヴィではあってもメタルではない時代を本生100%体験させてくれる大傑作です。貴重度以上のクオリティでコレクションとしても必須の1本。BLACK SABBATHに憧れ、カルチャー・ショックを受けつつ、英国ハードロックの理想を一身に体現していた若きユダ司祭。Freeman Coliseum, San Antonio, TX. USA 21st June 1977 PERFECT SOUND The Palladium, New York City, NY. 18th July 1977 TRULY AMAZING SOUND Disc 1 (47:15) Freeman Coliseum, San Antonio, TX. USA 21st June 1977 1. Introduction by Joe Anthony 2. Let Us Prey/Call For The Priest 3. Victim Of Changes 4. Diamonds & Rust 5. The Ripper 6. Sinner 7. Genocide 8. Drums Solo 9. Starbreaker Disc 2 (68:04) The Palladium, New York City, NY. 18th July 1977 1. Let Us Prey/Call For The Priest 2. Diamonds & Rust 3. Victim Of Changes 4. The Ripper 5. Genocide 6. Starbreaker Bonus Tracks Slough College, Slough, England 11th October 1975 7. Victim Of Changes 8. Dreamer Deceiver 9. Deceiver 10. The Ripper 11. Mother Sun Rob Halford - Vocals K.K. Downing - Guitars Glenn Tipton - Guitars Ian Hill - Bass Les Binks - Drums Alan Moore - Drums(on Bonus Tracks)