1971年LAフォーラム初日の初登場音源をフィーチャーしたニューバージョンがリリースされますが、それと同時にZEP1977年のLAフォーラム連続公演から6月25日のミラード・マスターも同時にリリースされるという贅沢な週となります。やはりミラード音源の中でもZEPライブの記録と言うのはマニアでなくとも興奮を隠せないもの。そもそもこの日はミラード録音しか音源が存在せず、古くからアイテムが生み出されてきた77年の有名音源の一つでもあります。そんな中で近年の決定版となっていたのが「L.A. FORUM 1977 4TH NIGHT DEFINITIVE MILLARD MASTER」でしょう。それ以前にも「LOS ANGELES 1977 4TH NIGHT」というベストセラーが存在していましたが、それをも凌駕したクオリティはこれまた大ベストセラーと化したのでした。ですが。今回公開されたマスターはそうした近年のベストセラーすら軽く一蹴してしまう驚異のアッパー感に打ちのめされてしまうばかり。もうナチュラルさがまるで違う。それら既発盤は晩年のミラードがマスターを秘匿する代わりにトレード用に用意していた自分でこしらえたファースト・ジェネレーション(つまりマスターから別のカセットにコピー)からVHSに落とされたものが元となっていて長いこと現状ベストとされていたもの。ところがVHSを経由したが故に生じてしまう「ブーン」というハムノイズが混入しており、それが静かな部分では気になってしまっていた。例えば「Since I’ve Been Loving You」のイントロやアコースティック・コーナーなどになるとはっきり聞き取れてしまうレベル。それが今回のマスターでは一掃されたのです。これだけでも既発盤との差は歴然としているのですが、それ以上にはっきりとしたアッパー感、あるいはナチュラル感は圧倒的なもの。その聞き心地は実に素晴らしく、ヘッドフォンで聞いたらいよいよマイルド。あの決定版との誉れ高き「L.A. FORUM 1977 4TH NIGHT DEFINITIVE MILLARD MASTER」ですらイコライズ…とまではいかないものの、それでも高音を始めとした不自然さが今回のバージョンと比べて気になってしまう。やはりマスターという印籠は無情なもの。もちろんZEPミラード・マスター公開時の恒例行事であるイコライズを加えたバージョンの同時公開も実現しているのですが、今回ばかりは余計なお世話でした。例によってリマスターを担当したのはdadgadなのですが、ただでさえ高音寄りな仕上げにするきらいのある彼が今回はシャリシャリな音に仕立ててくれた挙句、空間系エフェクトまで用いて非常に下品な感触に仕上げてくれたのです。彼が手掛けたリマスターが上手くいった「L.A. FORUM 1975 2ND NIGHT MIKE MILLARD MASTER TAPES」の時のように、ノーマルとリマスターの両方をカップリングできた場合もありましたが、今回はムリ。よって従来のバージョンとアッパー感が歴然としている「Flat Transfer」のみをリリースすることに相成りました。そしてマスターならではのアッパー感を解りやすく伝えてくれるのはナチュラルな音質だけにとどまらない。録音の開始からして既発盤より長いのです。もちろんがZEPが演奏を開始する以前の場面ではありますが、こんなところからもマスターの証拠が。1977年ツアーの中でも名演が居並ぶLAフォーラム連続公演ではありますが、この日は一日のオフを挟んだ後ということもあり、オープニング「The Song Remains The Same」ではジミーの凡ミスや粗が目立ちます。何しろ安定のミラード・クオリティですので彼のギターの音像がまた近い。75年以降のZEPはジミーを始めとして連続公演が重なるほど演奏が良くなる傾向がみられ、オフ開けは概してスロースターターであったように思えます。そんなジミーの寝起き感も手に取るように伝わってくるのがミラード・クオリティ。しかしここはZEPが大好きなLAフォーラム。そんなジミーもすぐに覚醒して「Nobody’s Fault But Mine」からエンジン全開。この勢いに乗って生み出されたこの日最初の名演が「In My Time Of Dying」でしょう。終盤でロバートがいつもの「You Shook Me」の代わりに不意にリトル・リチャードの「Rip It Up」を歌い出したことで往年のようなアドリブ・オールディーズ展開を見せた訳ですが、そもそもロバートは演奏を始める前からこの日が土曜日であること告げ、歌詞が「Saturday night」から始まる「Rip It Up」を歌うつもりであったように思えます。そしていざ歌い出してみれば見事にロバート以外の三人が不意を突かれた形となり、それぞれが慌ててロバートに合わせています。中でもジミーはボトルネック用のオープンチューニングでもしっかりロックンロール・パターンを弾いてロバートを支えているのがお見事。にもかかわらず、ロバートがしかけた歌が一番で終わってしまったことから他の三人が「もう終わりなの?」とでも言いたげな仕草を見せている様子までミラード・クオリティのおかげで伝わってくる。その後も6月21日ほど振り切れない、テンションの高さとじっくり演奏できる落ち着きが同居した雰囲気がこの日の独特な魅力ではないでしょうか。「No Quarter」の中盤以降はジミーの緻密なソロが圧巻ですし、文字通りのご当地ソングでもあった「Going To California」ではじっくりと歌い上げるロバートが絶品。ここでも静と動のバランスが上手く取れているこの日ならではのテンションが上手く現れており、同曲77年のベストテイクと呼んでも過言でないほど素晴らしいもの。ジミーの緻密なプレイは「Stairway To Heaven」にも現れており、やはりこの日は独特の魅力があるのだと痛感させられるかと。そしてアンコールはいつもの「Rock And Roll」に代わって「Communication Breakdown」が「Whole Lotta Love」から雪崩れ込む形で演奏されているのですが、これも希少かつ見事な77年バージョンとなっています。こうした演奏の数々が遂に実現したマスターからの収録でさらに引き立つ。そういえば今回のマスター公開時には曲間にギャップが生じるというJEMSには珍しいハプニングが起きていましたが…安心してください、きっちりつまんでます!リマスター・メモ Flat Transferをディスク割りしたのみです。参考までにリマスターは、おそらく空間系のエフェクトも入れてド派手にしてると思います。オリジナルの曲切り位置で無音が発生してますが修正しました。(ミラードテープで初めての現象) The Forum, Inglewood, California, USA 25th June 1977 TRULY PERFECT SOUND(UPGRADE) Disc 1 (74:28) 1. Intro 2. The Song Remains The Same 3. Sick Again 4. Nobody's Fault But Mine 5. In My Time Of Dying 6. Since I've Been Loving You 7. No Quarter Disc 2 (63:27) 1. MC 2. Ten Years Gone 3. The Battle Of Evermore 4. Going To California 5. Black Country Woman 6. Bron-Y-Aur Stomp 7. White Summer / Black Mountain Side 8. Kashmir 9. Trampled Underfoot Disc 3 (74:23) 1. MC 2. Over The Top 3. Guitar Solo 4. Achilles Last Stand 5. Stairway To Heaven 6. Whole Lotta Love 7. Communication Breakdown