スタジオ作品の究極盤をご用意しました。本作はアナログ・マスター専門メーカーの“モービル・フィデリティ・サウンド・ラボ(MFSL)”から2007年にリリースされたCD『UDCD 772』。そう、RUSHの新時代を切り拓いた名作『PERMANENT WAVES』です。【マスターテープ・サウンドを最重視したモービル・フィディリティ】アナログ作品のCD化が最盛期を迎えた90年代には高音質CDが数多く登場しましたが、その中でもMFSLは別格でした。他の高音質CDは新技術によって圧縮の違和感を減らしたり、素材で読み取りエラーを減らしたりといった「デジタル劣化を抑える」発想のもの。それに対してMFSLのポリシーは「マスターテープに刻まれた音を忠実に再現し、余分なものを足したりしないこと」。磁気テープから音を引き出す段階にも目を向けた独自の“ハーフスピードマスタリング”技術を開発するなど、“アナログ録音された音そのもの”を最重視にしているのです。そんなMFSLは1987年からレコード会社からオリジナルのマスターテープを借り受け、数々の名盤を1本1本緻密にデジタル化。マスターテープの音をCDに移し替えていく“Ultradisc”シリーズをリリースして行きました。現在はSACDやLPの分野にも進出していますが、本作は90年代の前半期にCD化していたというのもポイント。磁気テープのマスターは経年劣化に弱く、時間が経てば立つほど録音当時の音が失われていく。テープが歪んだり張り付いたりといったケースもありますが、たとえ精密に保管されていたとしても磁気の消失までは防げない。現在では、マスターテープそのものより物理的な溝で記録するLPの方が音が良かった……などという事態も起こりつつあるのです。その点においても“Ultradisc”シリーズは偉業だった。CDの普及期にあった80年代から始められており、高音質を謳う新技術CDの登場よりも早くにマスターテープの音をデジタルに残したのです。【リマスター盤もアナログも圧倒する驚きの鮮度が流れ出す『PERMANENT WAVES』】そんなMFSLによって甦った『PERMANENT WAVES』が本作。当店ではすでに『MOVING PICTURES』や『SIGNALS』のMFSL盤もご紹介してきましたが、それらは90年代のリリース。それに対し、なぜか『PERMANENT WAVES』はMFSL化が遅れ、グッと時の経った2007年に発売されました。それだけの時間が経っているだけにマスター鮮度は望めない……と思いきや、そうではないからびっくり。実際、40周年盤リマスターと比べてみても本作の方が遙かに音が良い。40周年盤もアナログちっくなナチュラル・サウンドではありましたが、マスターに経年劣化でもあったのか音は曇り、立体感もダイナミズムもスポイルされていました。それに対して本作は1音1音がクッキリと浮かび上がり、当代きってのアンサンブルが構造物のようにそそり立つ。もちろん、イコライジングでムリヤリ演出した立体感では意味がありませんが、MFSLですからその心配はない。鳴りの微細部までナチュラルでありつつ、現代リマスター盤を遙かに超える鮮やかさを描き出しているのです。さらに驚くべきは、当時のアナログ盤と比べてみても鮮度が良い。磁気で記録されたマスター・テープは時間が経つほどに情報が失われていきますが、物理的な溝で刻むアナログ盤は経年に強い。再生せず、保存状態も良ければ半永久的に原音を保持し続けるわけです。今回比較に使用したのは、そんなアナログでも特別とされる英国初盤や当時の日本盤。それでもなお、本作の方が瑞々しいのです。この衝撃は『MOVING PICTURES』『SIGNALS』の時以上です。ここからは完全に想像でしかありませんが、MFSL盤『PERMANENT WAVES』はリリースこそ2007年ではあるものの、もしかしたらデジタル化作業自体はもっともっと以前に行っていたのかも知れません。そうとでも考えないと、この音の美しさには納得がいかないのです。“モービル・フィディリティ”によCDだからこそ現代まで保持し得た大名盤のマスター・サウンド。本作は、その美音を精緻に復刻した1枚です。Taken from the original US Mobile Fidelity Sound Lab CD(UDCD 772) from Mobile Fidelity Sound Lab "Original Master Recording" Collection (35:50) 1. The Spirit Of Radio 2. Freewill 3. Jacob's Ladder 4. Entre Nous 5. Different Strings 6. Natural Science