場所がらというのは本当にあるんだなぁ…ギャング蔓延るシカゴの街(プラグド・ニッケル)で繰り広げられるのは、あの黄金のクインテットでの1965年をも凌駕する、これぞ本物の「ケンカ・セッション」!既発では団子状態だった各楽器がキチンと分離された、音質含め全ての点に於いて理想的に向上したアップデートの見本のような決定版がこれだ!!エレクトリックへと本格的に舵を切った1969年のマイルス・ディヴィス。実はマイルスの全時代のキャリアのなかでも特に多くのライヴを行っていたのがこの1969年の春から夏にかけてだった。そのほとんどがクラブ(ライヴ・ハウス)での連夜に渡るライヴ三昧。しかし時代が時代なだけにあまり音源が残っておらず(特にクラブギグ)なかなかその全貌を掴むのは難しいが、それでも現在ではヴィレッジ・ゲイトなどのマストな名盤でその稀少な演奏群に触れることが出来、ホールとは違うクラブならではのアグレッシヴで自由な演奏が楽しめるようになった。本作は当時のダウンビート誌に掲載された評論家ラリー・カート氏のレビューで「チャーリー・パーカーの全盛期のグループ以外でアップテンポでこれほど安定した演奏が出来るのはこのマイルスの新しいグループだけだ!」と評された、この新生マイルス・グループ、通称ロースト・クインテットの最初期1969年6月4〜14日(9と10日の2日間だけオフ)にシカゴのプラグド・ニッケルに於ける連続公演から、日付不明ながら現存するすべてとなる全4曲(すべて10分超)を収録。もう20年近く前に初めてリリースされたものを聴いてみると、ホランドのベース、ディジョネットのドラムス(バスドラ)、チックのエレピが団子状態となって迫力こそ伝わるが、所々何を演っているのか分からない、全体的にこもっているなどの欠点のほうが目立っていた。しかし今回の本家So What!レーベルの新プロジェクトGiレーベル盤は、可能な限り各楽器を分離させてそれぞれの楽器がバランスよく聴けるようになり、じつはチックはこの時期で最も攻撃的なプレイをしている、一聴トニー・ウィリアムス?かと錯覚するほど猪突猛進これでもかと叩きまくるディジョネットがかなりクリアとなり、それに呼応したアグレッシヴなマイルス、ショーターと、まさに「ケンカ・セッション」なのだ!エレクトリック化の幕開けとなったロースト・クインテット初期は、新曲と共に未だセットリストに「マイルストーンズ」などの昔の楽曲がインしていますが、本作で聴けるプラグド・ニッケル公演に限っては全てが新しく、スピーディーでアグレッシヴ、ケンカといっても誰か対誰かとかではなく、強者が皆まとめてリングに上がり闘いまくるファイティング・スピリット満載の超絶ライヴなのだ!