『A BIGGER BANG』ツアーは2005年がスロースターターだった分、いざスイッチが入った2006年は演奏レベルが一気に上がって名演を続出させていたように思えます。実際日本公演も前年との差を見せつけるかのごとく素晴らしい演奏が披露されていましたし、日本の後に訪れたオーストラリアにしてもまたしかり。むしろ日本での勢いを持続した素晴らしい演奏をストーンズが披露されていたのでした。もっともあれだけ多くのアイテムが生み出された日本公演とは対照的に、オーストラリア公演に関してはリアタイポツポツとリリースされていたという程度。今となっては日本公演の直後というタイミングやと合わさって公演が行われた事実そのものが忘れ去られてしまった感が否めません。そんな不遇の時期ながら、オーストラリアと言えばこの人「Waz From Oz」が4月11日のシドニー公演をしっかり録音してくれていたのです。おまけに「Waz From Oz」はこれまでも1973年のストーンズを捉えた貴重オーディエンスを多く公開してくれていましたが、今回は何とネットを介さず直接オーディエンス・マスターを提供してくれたのだから驚きです。そのオーディエンス録音の音質が実に素晴らしい。程よい距離感とエコー感が合わさった独特の聞き心地は抜群。是非その質感をヘッドフォンでじっくりと味わってもらいたいクオリティ。それでいてミックの歌声が近くに録れているものだから、いよいよ聞きやすい。Bステージになると少し音像が団子状になりますが、それとて聞いていてストレスを感じるほどのレベルではない。何よりこれほどのオーディエンス・マスターが今まで秘匿されていただなんて。それにこの日に限ってボビー・キーズが欠席というハプニングのあった日で、当時ファンの間でも「今日ボビーどうした?」といった書き込みがネット上に多数みられたのも今となっては懐かしい。その穴埋めに駆り出されたのはティム・リース。彼が「Brown Sugar」の間奏でボビーの代わりに吹いたフレーズは一聴して解るほどボビーと違ったもので、しかも急に駆り出されたものだからフレーズがちょっと危なっかしいほど。これもまた今となっては貴重なハプニングであり、その記録としての価値も高い。そして何と言ってもストーンズの演奏が素晴らしい。日本、中国と回ってきた疲れを見せることもなく、むしろこの日も絶好調ぶりが圧巻。特にミックは日本で見せた輝きを完全に持続させており、もはやキレッキレと言ってもおかしくないレベル。先の「Brown Sugar」では彼がピンチヒッターのティムを煽るかの如くハイテンションにシャウトしているのも頼もしい。実際この日のミックのテンションがあまりにも高く、ライブ後半の「Paint It Black」になると演奏と噛み合わなくなって雲行きが怪しくなる場面があるのですが、それすら勢い余ったがゆえの微笑ましさに映るというもの。それほどこの日はミックを中心としたグループの絶好調ぶりが際立っていた。そんなミックを支えるチャーリーのプレイがまた絶好調。「Oh No, Not You Again」のエンディングで聞かせたバスドラ踏みまくりの煽り、さらに軽快な「Start Me Up」そしてバンド全体が爆発するような「Satisfaction」を支える彼のプレイの素晴らしさ。当時はそれが当たり前だと思っていたものですが、彼が居なくなってしまった今、改めてチャーリーが唯一無比な存在であったことを思い知らされるかと。長い間まともなアイテムが存在しなかった2006年のオーストラリアツアーからマニア狂喜のオーディエンス・マスター。Telstra Stadium, Sydney, Australia 11th April 2006 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) Disc:1 (53:46) 1. Intro 2. Jumping Jack Flash 3. Let's Spend the Night Together 4. You Got Me Rocking 5. Oh No, Not You Again 6. Dead Flowers 7. Angie 8. It's Only Rock 'n' Roll 9. Tumbling Dice 10. Night Time Is the Right Time 11. Band Introductions 12. This Place Is Empty 13. Happy Disc:2 (62:01) 1. Miss You 2. Rough Justice 3. Get Off of My Cloud 4. Honky Tonk Women 5. Paint It Black 6. Sympathy for the Devil 7. Start Me Up 8. Brown Sugar 9. You Can't Always Get What You Want 10. Satisfaction