モントルーにコペンハーゲン、さらにハンブルグ二日間、そしてデュッセルドルフといった具合に良質オーディエンスに恵まれた1970年ヨーロッパツアーの中にあって完全に見過ごされていた3月9日のウィーン。過去に『LIVE IN VIENNA 1970』や『HIGH FLYIN' ZEP』といったアイテムがリリースされていたものの、それぞれ「ジェネ落ちが激しい」あるいは「強烈なイコライジング」のせいでマニアから重要な音源として扱われることなく現在に至っています。問題は過去のリリースがそれぞれに状態の良くないテープを元にしたことであり、実際にはずっと…いや驚くほど聞きやすいテープであったことが今回のリリースで明らかに。そもそもこの日は二種類のオーディエンス録音が存在し、先に挙げたアイテムに使われていたのが「ソース1」。これがジェネ落ち感の全開なアイテムばかりリリースされてきたせいで本来の聞きやすさがまったく伝わって来なかった。さらにこの日は「ソース2」たる別音源が存在し、それが『D'YA FEEL ALRIGHT, VIENNA?』や『VIENNA 1970』といったアイテムで地味にリリースされていましたが、音質面ではソース1が俄然ベスト。その上で二つの音源を駆使したベストバージョンも可能でありながら、辛うじて後者で試みられていた以外、これまた見過ごされてしまっていたのが現状。そこで今回は70年ヨーロッパのミッシング・リンクであったウィーンを「GRAF ZEPPELIN」が徹底的にレストア。これが正に本領発揮と言える見事な仕上がり。まず過去のアイテムとは比較にならないソース1のアッパー感。1st Genという状態によって過去のアイテムからはまったく感じられなかった鮮度の良さが驚き。過去のアイテムはデュッセルドルフやハンブルグと比べてちょっと厳しいかな…と思わせた音質が生まれ変わっていてびっくり。そこに補填要員となるソース2ですが、こちらは基本ソース1より劣る音質ながら堂々マスターからの収録によってこちらもまた非常に聞きやすくなっています。これら二つの音源を緻密に組み合わせた結果、他のヨーロッパ70に比肩する仕上がりのウィーンが遂に完成。ところが、そこで収まらないのが「GRAF ZEPPELIN」たる所以。二つのソースを駆使した「Since I've Been Loving You」のベスト編集のなめらかさなどお手の物。両方のソースそれぞれのモノラル感を緻密に修復してみせた上、何と言ってもソース2最大の欠点であった「Thank You」に生じる回転ムラを見事にレストア。同曲そのものがテープの不備があると目立ちやすい曲調でしたので、この差はあまりにも大きい。初めて安心して聞き通せるようになったのです。そして演奏の平均値が当たり前のように高いヨーロッパ70ではありますが、この日は「Dazed And Confused」で極めて珍しいハプニングが。いつもの弓弾きタイムに突入するものの、それを演出するエコーの調子がどうにもおかしい。6:00辺りで遂にジミーが弓弾きを止め、言い訳するという面白い場面が捉えられているのです。同じようなハプニングとしては五か月後のタルサが挙げられますが、そこは騒がしい観客に対するジミーの注意だったのに対し、こちらは「言い訳」という事情が微笑ましい。こうしたハプニングに左右されることもなく、以降は70年ヨーロッパらしいZEPの躍動がプラントを中心として炸裂。本当にこの時期は最初から最後まで安心して聞いていられる演奏ですよね。ライブ終盤「How Many More Times」などはイントロからしてクリーム「Cat's Squirrel」リフを挟むといった余裕をみせつつ、それでいて20分を超える大熱演が圧巻。何よりメインのソース1が今回の1st Genという状態のおかげで圧倒的に聞きやすくなってくれた事実によって、この日の70年上半期らしい演奏の爆裂ぶりが実にリアルに伝わってくる。改めてヨーロッパ70他の日にも劣らない名演ぶりを「GRAF ZEPPELIN」入魂のレストアで心ゆくまでお楽しみください。こんなに素晴らしい音源だったとは!リマスター・メモ 2種類の音源を駆使し過去最高音質&最長収録!ピッチも正確!メインとなるのは既発「LIVE IN VIENNA 1970」(Ocean Sound Studio)や「High Flyin' Zep」(エレマジ)などに収録のソース1。サブは「D'ya Feel Alright, Vienna?」や「VIENNA 1970」(MMachine)のサブ音源で知られるソース2。ともにモノラルのAud音源。音が良いのはソース1の方で、当然ソース1が今回のメインソース。ソース1はWe're Gonnaやサンキューなどを丸ごと収録していない問題がありますので、極力音の良いソース1を引っ張りつつも、欠落パートをソース2で補う構成。音源の補填等詳細は下記曲目参照。両音源とも現状ベストと思われる素材が採用され、ソース1は1st Gen、ソース2はマスターからのDatクローンとされる音源を採用。ちなみにメインのソース1は近年数々の良好音源を公開してくれる「Chris」も公開してくれていたのですが、そこでは意外にも強烈なノイズリダクション処理でDATノイズのようなデジタル臭が酷く不採用。今回はソース1、ソース2ともに数年前にひっそり公開されていたバージョンが採用されています。メインのソース1は既発では位相ズレにより大幅に左側に偏ったおかしなサウンドだったり、エレマジ盤のように強烈なデジタル臭のするものだったりと満足のいくモノが一切ありませんでしたが、今回盤ではそのような問題が史上初めて解消された状態で収録!また既発関連盤で唯一の複数音源混合盤であったMMachine盤ではI Can't Quit You Babyも元々ソース1は3秒ほどのカットしかないのに丸ごとソース2で収録という、ザックリ編集でしたので、同曲も音の良いソース1でイコラの問題もなく大部分を聞くことができるように。ソース2の部分は既発では帯域ダウンのあるコモッたサウンドですが、今回盤ではやり過ぎない範囲での適切なEQ調整がなされており、これにより補填時の音源切り替わりも極めてスムーズで絶妙な仕上がり。またあらゆる既発でサンキュー途中から盛大莫大に狂っていたピッチも史上初めて正しく収録 遂にマトモな状態でサンキューも聞けるようになった訳です。Live at Konzerthous, Vienna, Austria 9th March 1970 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND UPGRADE Disc 1 (50:03) 1. Introduction ★0:24以降 Src2で補填 2. We're Gonna Groove ★まるごとSrc2 3. I Can't Quit You Baby ★0:00-0:03 Src2で補填 4. Dazed And Confused 5. Heartbreaker 6:20-6:42(演奏後曲間) Src2で補填 6. White Summer incl. Black Mountainside Disc2 (56:24) 1. MC ★0:00-0:28 Src2で補填 2. Since I've Been Loving You ★2:20以降 Src2で補填 3. Organ Solo ★まるごとSrc2 4. Thank You ★まるごとSrc2 5. Moby Dick 6. How Many More Times