オジー・オズボーンを擁する編成のBLACK SABBATHは、1997年の再結成以降、何度かの休止期間を挟み、断続的にツアーを行っています。しかしこの再結成は常に「これが最後かも知れない」という危うさと表裏一体でもあります。例を挙げれば、1999年ツアーの終了をもって一度は"活動停止"が宣言され、2003年暮れにはオジーがあわやの重傷を負うアクシデントが起きています。さらに2007年にはトニー・アイオミがロニー・ジェイムズ・ディオと三度目の合流を果たしてHEAVEN & HELLとして活動するなど、ファンに何度も「オジーのSABBATHはもう観られないか知れない」と思わせてきました。そして2012年の復活に際しても、アイオミの病気とビル・ワードの不参加という突発事態のため、ライヴの実現すら危ぶまれました。こうして考えると、現在のリユニオンSABBATHは薄氷を踏み続けているのです。だから彼らが残したライヴは、マニアにとって全てが特別。その再結成ライヴを高いクオリティで記録したこれらのアイテムは、SABBATHファンの宝物と言えるでしょう。1997年に再結成したSABBATHは1999年に"活動停止"を宣言、永遠の眠りについたと思われました。しかし 2001年になると「6月から行われるオズフェストでヘッドライナーを務める」とアナウンスされ、さらにツアー開始前の3月には「新しいスタジオ・アルバム用の楽曲製作に入った」という噂も流れました。残念ながらその時の「新作アルバム」は完成しませんでしたが、これらの情報は、世界中のSABBATHファンを大いに喜ばせ、来るツアーに大きな期待を抱かせました。本作「SCARY DOCKS」は、その"オズフェスト 2001"として行われた2001年の北米ツアーより、7月24日のカナダ・トロント公演を74分間に渡り、極上と断言できるオーディエンス・ソースでCDに収録したもの。近年のオーディエンス録音なので、平均レベルも相当高くなった時期ですが、本作の音質はその基準から見ても大別格。「再結成サバスはお腹いっぱい」という声も聞かれますが、本作はそんなファンをも満足させるであろうクオリティです。各楽器の優れた分離感やクリアさはもちろんのこと、豊かに響く低音がなんとも素晴らしい! 特にギーザー・バトラーが紡ぐ芳醇なベースサウンドはまさに「漆黒」。透明感を保ちながらも、聴いているうちに心の奥底に澱が溜まっていくような深遠なる響き。サバスの全キャリアを通しても、ここまで素晴らしいベース・サウンドが記録されたことはないのではないでしょうか。これはもはや"ギーザー・サバス"! しかも単にギーザーの音がデカいだけとは違うところがミソ。そこに絡むアイオミのギター、オズボーンのヴォーカルも、広がるベースワールドを突き破るがごときコントラストを魅せてくれます(なお「Into The Void」の1:30頃から5:30頃にかけて音が篭ったような状態になりますが、テーパーが機材を隠したか移動させたためだと思われます)。くっきりと切り立った演奏の輪郭とパートの分離感は、単に「音が良い」とはまったくの別次元。平凡なライン音源などを超えた個性溢れる録音は、まるで金属が黒光りするような極上のサウンドを楽しませます。オジーがオーディエンスを煽り立てるオープニングの「N.I.B.」から、ギターリフとベースノートが極上のグルーヴを会場全体に漂わせており、そのえも言われぬコクとオジーの特徴的な歌声が聴き手をたちまち魅了する事でしょう。続く「Snowblind」ではビルの後乗り気味のドラムが独特の倦怠感を滲ませたリズムを生み出し、歌詞の世界に通じるダウナーなムードを醸しています。オジーが「皆に新曲を聞かせてやろう!」と言い放って演奏される「Scary Dreams」は、この2001年ライヴの目玉。陰鬱で淡々と進行する平板な曲想はまさしく'70年代初期のSABBATHをストレートに想起させる楽音であり、この時点でアルバムデビューから30年を越えた彼らが原点回帰しようとしていた事を窺わせます。もちろん本音源中でも最大の聴き所で、この曲をライン並みのクオリティで聴ける事に誰もが驚く事でしょう。この後は「War Pigs」から「Black Sabbath」や「Children Of The Grave」など、SABBATHとして絶対に欠かせない名曲が並びます。ショウ後半の「The Wizard」は本作もうひとつの聴き所です、この曲はトニー マーティンが'94年から'95年のツアーでは歌っていたものの、オリジナル編成としては非常にレアな選曲で、'70年代でもほとんど記録に残っていません。「Scary Dreams」とこの「The Wizard」を聴くためだけに本作を手に入れても、きっと損はしないでしょう。セット本編は「Sabbath Bloody Sabbath」のイントロが付け加えられた「Paraoid」でクロージング。アンコールに「Children Of The Grave」が位置しているのもこの'01年ライヴの特徴。74分間の録音を通じ、会場の熱気はピークのままです!ファンにとってスペシャルな2001年ツアー。その中でも特に充実したライヴを、頂点といえるサウンドで切り取った本作は、数あるリユニオンSABBATHの音源でも超が付く決定盤と言えます。Live in The Docks, Toronto, Canada 24th July 2001 TRULY PERFECT SOUND 1. N.I.B. 2. Snowblind 3. Scary Dreams ★ 4. War Pigs 5. Member Introduction 6. Iron Man 7. Into The Void 8. The Wizard ★ 9. Black Sabbath 10. Sabbath Bloody Sabbath/Paranoid 11. Children Of The Grave Ozzy Osbourne - Vocals Tony Iommi - Guitars Geezer Butler - Bass Bill Ward - Drums ★ Geoff Nicholls - Keyboards