本作に収録されているプロショットは2種。1つはHTP唯一の長尺プロショットとして知られる「2004年2月26日チェリャビンスク公演」のテレビ特番。もう1つは『MADE IN MOSCOW』制作のドキュメンタリーです。HTPと言えば、2回(+1回)の来日公演しか知られていませんので、ここで彼らの活動を整理しておきましょう。 ●2000年・10月18日-22日:日本#1(4公演:グレンはゲスト参加)●2002年《2月6日『HTP』発売》・5月11日-19日:日本#2(7公演)《8月21日『LIVE IN TOKYO』発売》・9月6日-10月5日:欧州#1(21公演)●2003年《9月29日『HTP 2』発売》 ●2004年・2月3日-8日:日本#3(5公演)・2月23日-4月8日:欧州#2(33公演)←★ココ★《9月『MADE IN MOSCOW』制作→2005年7月発売》 これがグレン&ジョーのコラボ史。この他にもTHE VOICES OF CLASSIC ROCKプロジェクトやイベント出演、セッションでの共演もあったりするのですが、2人を主役としたツアー活動はこれで全部です。その中でも最大規模だったのは、最終の「欧州#2」。本作のチェリャビンスク公演はその日本直後となる3公演目にあたるコンサート。ロシア・ツアーは3公演で、その最終日でもありました。このロシア公演がきっかけでマイケル・メンがグレン&ジョーに声を掛け、半年後の9月に『MADE IN MOSCOW』制作へと繋がっていったのです。 【メイン:HTP唯一の長尺プロショット】 本作のメインとなるのは、そのロシア公演。伝説シンガーが揃っての来訪は現地でも話題になったらしく、特番が制作。本作はその最高峰マスターなのです。そのクオリティは絶品。21世紀初頭のロシア制作だけにカメラワークやミックスは荒っぽいのですが、マスター鮮度は局マスターのデジタル・クローンらしく、完全にオフィシャル級です。番組の構成はロシアを訪れたドキュメンタリーとライヴ。ロシアでの人気ぶりや「Stormbringer」のライヴも挿入されるドキュメンタリーも面白いのですが、それ以上に大注目なのはHTPのステージをマルチカメラ・プロショットで目撃できるライヴ。番組の尺に沿っているのでフルセットとはいきませんが、それでも50分以上。他に1曲以下の細切れプロショットもなくはないのですが、ほぼ唯一の“マトモに見られる”映像なのです。しかも、中身も特濃で、公式盤『LIVE IN TOKYO』でも聴けなかったレパートリーが山盛り。『HTP 2』の「Losing My Head」「Alone I Breathe」はもちろんのこと、DEEP PURPLEの「Gettin' Tighter」「You Keep On Moving」も演奏している。『LIVE IN TOKYO』は比較的RAINBOWカラーの強いライヴアルバムでしたが、本作はグッと深紫色のステージなのです。そんなセットに加え、日本人がバックを務めた来日公演とは違ってHTP本来のバンド・アンサンブルも美味しい。特に重要なのは『HTP』『HTP 2』の作曲面でも要だったギタリストのJJマーシュ。グレンのソロではファンキーな彼も、ここでは「黒装束+白のストラトキャスター」でばっちりブラックモア・モード。モミアゲまで70年代のリッチー風という徹底ぶりです。しかも、演奏も思いっきりリッチーを意識しており、「Mistreated」のイントロ・ソロはトーンもフレーズもリッチーがそこにいるかのよう。その一方、グレン・バンドのレギュラーだからこその相性もバツグン。「Gettin' Tighter」中盤ではグレンを主役にしたジャムが繰り広げられますが、そのアンサンブルはスリリングながらも自然。グレンが次に何を弾くか瞬時に理解する呼吸感が素晴らしい。リッチー風だけれど、コピーバンド臭くはない。スタジオ・アルバムでも感じられた“バンドHTP”本来の旨みがたっぷりと楽しめる唯一無二のプロショットなのです。 【ボーナス:MADE IN MOSCOWドキュメンタリー】 そんな本作には、さらに貴重な公式プロショットを追加収録。本編プレスCD『MADE IN MOSCOW』制作時のドキュメンタリーです。この映像は、『MADE IN MOSCOW』デラックス盤のボーナスDVDに収録されていたもの。ただでさえ貴重な『MADE IN MOSCOW』ですが、デラックス盤ともなると中古が数万円で取引されているプレミア品。それを一気にご堪能いただけるわけです。マイケル・メンの解説はロシア語なのでさっぱりなものの、映像は素晴らしい。1974年カリジャムや1982年サンアントニオも流れますが、やはり必見なのはレコーディング風景。グレン&ジョーが仮歌を口ずさみながらああでもないこうでもないと意見を交わし、本番レコーディングでも1本のマイクに向かって一緒に歌う。さらにロシア観光に興じ、ホームパーティ?で「Smoke On The Water」をゴキゲンに熱唱。『MADE IN MOSCOW』のプレイバックをノリノリで浸りきっている。当時の彼らが単なる“有名人の組み合わせ”ではなく、音楽的なパートナーだった事がリアルに描かれるのです。大局的に見れば、ソロ活動の合間でしかなかった泡沫のHTP。しかし、そのコラボレーションの現場は互いの歌とセンスに反応し合う確固たるユニットでした。本作は、そのステージとスタジオ風景をオフィシャル級プロショットで楽しめる映像作品なのです。 Opera Theatre, Chelyabinsk, Russia 26th February 2004 PRO-SHOT (93:49) 1. Russia Documentary 2. I Surrender 3. Losing My Head 4. Alone I Breathe 6. Mistreated 7. Street Of Dreams 8. Gettin' Tighter 9. Jam/Bass Solo 10. Gettin' Tighter(reprise) 11. You Keep On Moving Bonus Footage 12. Made In Moscow Movie PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.94min.