不世出の天才キース・エマーソンの名を世に知らしめ、(ある意味)EL&P以上の影響力でフォロワーの種を全世界にまき散らした伝説のグループ、THE NICE。そのマルチカメラ・プロショットを集成した決定盤が登場です。THE NICEほど過小評価なグループはないかも知れません。ロックの常識「ギターが主役」をあっさりとひっくり返し、ジャズやクラシック、現代音楽を力業でロックへ引き込む娯楽性は、まさに“コロンブスの卵”。その衝撃はEL&Pの登場を待たずしてヨーロッパ全土へと広がり、LE ORME、TRIUMVIRAT、PELL MELL、ELECTRA、COLLEGIUM MUSICUM等々、各国のフォロワー達の源泉にもなった。ともすれば頭でっかちな思考性が先行する「プログレッシヴ・ロック」において“分かりやすい楽しさ”を体現する原点でもありました。とは言え、THE NICEが大規模なワールド・ツアーで人気を広めていったかと言うと、そうでもない。あっと言う間にEL&Pへ進化したこともあり、彼らのステージは大部分が母国イギリス。むしろ、彼らの革新性や魅力を広めていったのはアルバム作品やテレビ等のメディア出演でした。本作は、そんなTHE NICEのテレビ出演プロショットを集成した1枚。それも、奇しくも2019年現在で次々とアップグレード版が登場している最高峰版を一網打尽にしたDVDなのです。そんな本作に収められているTV番組は7種類。いずれもマニアには定番となるプロショット映像ですが、それぞれに最高峰を極めるマスターばかり。それでは個別にご紹介していきましょう。 【前半:西ドイツ放送(3番組)】 ●HITS A GO GO(1968年/1969年の2回分)本作に収められた7番組は大きく2つに分けられ、前半は西ドイツ放送。冒頭を飾るのは名物番組“HITS A GO GO”の出演した2回分のプロショットです。冒頭に配されていることからもご想像頂ける通り、この演奏最大のポイントはクオリティ。本作に収録されたマスターはすべてオフィシャル級の超極上物ばかりですが、この映像は本当に凄い。詳細は伝わっていませんが、ダビング痕や経年劣化などとは完全無縁。この映像美は局マスター……控えめに見てもデジタル再放送なのではないでしょうか。それ以外にはあり得ない次元の美しさ。この番組からは「1968年9月(America)」「1969年11月12日分(Country Pie・Hang On To A Dream)」の2回分が収録されていますが、特に冒頭1968年分はフルカラー。その鮮やかさが目に染みる美超美麗映像です。そして中身がまた素晴らしすぎる。冒頭のゴーゴーダンスからして時代感が炸裂し、「Hang On To A Dream」ではまんまホラー映画な寸劇と同時進行する。もちろん肝心のライヴ凄まじく、「America」では金袖から伸びる若きキースの指先が華麗に舞い、スタジオ・ライヴにも関わらずオルガンにナイフを刺し、飛び越えながら弾きまくる。1969年は「Country Pie」「Hang On To A Dream」と歌物なのでリー・ジャクソンも多めに映りますますが、それでも主役はやはりキース。若きマエストロの大熱演をマルチカメラでじっくりと楽しめるのです。 ●STAR-CLUB(1969年)3つめも西ドイツ放送の“STAR-CLUB”。これまたモノクロながらフィルムの粒子感まで鮮明な極上マスター。“HITS A GO GO”は放送局内のスタジオ・ライヴでしたが、こちらはハンブルグのコンサート映像で「Rondo」を披露。そこにドイツ語ナレーションが(少し)被さるニュース風の映像です。 【後半:フランス放送(4番組)】 ●BOUTON ROUGE(1968年3月/4月の2回分)後半はフランスのTVプロショット4種。まず登場するのは幻の音楽番組“BOUTON ROUGE”。この番組は1967年4月から翌1968年5月まで約1年間だけ放送され、「テレビ初のロック・マガジン」とも称されたもの。THE NICEは後期の「1968年3月23日(Rondo)」と「1968年4月20日(Azrael)」に2回出演。前者はモノクロ、後者はフルカラーで大熱演が見られるわけですが、さらにポイントなのはギタリスト。画面奥ではデヴィッド・オリストがギターを弾いている! ただでさえTHE NICEの映像は貴重なわけですが、初期の4人編成時代をマルチカメラ・プロショットで見られるわけです。キースがオルガンと格闘しながら大暴れし、それを静かに見つめながら黙々とリズムを刻むオリスト……。明らかに彼だけが浮いており、去っていくのも自然の成り行きだったと分かる貴重映像です。 ●FORUM MUSIQUES(1968年11月)続いて登場するのはトリオになってからのTV番組“FORUM MUSIQUES”。PINK FLOYDでも有名な番組ですが、THE NICEは『少年易老学難成』の発売期だった「1968年11月20日」に出演。モノクロで3曲「Brandenburger」「America」「She Belongs To Me」のスタジオ・ライヴを披露しています。シンプルな曲内スタジオでひな壇に大人しく座って声も出さない観客を前にしているせいか、最初のうちはわりと淡々等した演奏ぶりですが、「America」が加熱してくると押さえきれなくなったキースがナイフを突き刺し、暴れ出す。3人が客席よりも互いの演奏を見ながら熱いインタープレイを交わす演奏をたっぷり見つめられます。 ●DIM DAM DOM(1969年3月) 最後に登場するのは再びフルカラーの超美麗映像。「1969年3月1日」に出演したフランスのTV番組“DIM DAM DOM”です。本作の中盤はモノクロも多いのですが、この映像は本当に美しい。冒頭の“HITS A GO GO(1968年分)”と同じく、局マスターとしか思えず、現代のデジタル基準で見ても完全オフィシャル級の映像美です。そして、その中身がまた極めてカラフル。2曲「Intermezzo From The Karelia Suite」「Rondo」のスタジオ・ライヴなのですが、そこに煌びやかな衣装の美女達が大挙して登場する。彼女たちがまた凄い。「Intermezzo From The Karelia Suite」ではカジュアル・スタイルのマネキンが踊っているような感じなのですが、「Rondo」になると一気に異世界。全員がキラキラ光り、それこそ「宇宙大作戦(スタートレック)」や「アウター・リミッツ」からそのまま出てきたような出で立ち。激しく狂うTHE NICEのインタープレイに合わせて身体をくねらせている。もちろん、キースもナイフ片手にオルガンと格闘しており、何とも狂乱の異空間が描かれていくのです。いやはや、60年代って本当に素晴らしいです。まさに鍵盤のジミヘン。ロック黎明の最中にキーボードの可能性を力ずくで広げたキース・エマーソン。アレンジ・演奏・パフォーマンス……すべてが開拓期の輝きに満ちていたTHE NICEを約1時間に渡って楽しめる大傑作映像です。史上最高峰マスターで集成された極上マルチカメラ・プロショット作品。 THE NICE - TV ARCHIVES 1968-1969 UPGRADES & RARITIES HUGE UPGRADE!!! (53:17) -German TV Archives- Hits A Go Go 1968 01. Introduction 02. America 03. InterviewHits A Go Go 1969 04. Country Pie 05. Hang On To A Dream Star Club, Hamburg 1969 06. Rondo -French TV Archives- Bouton Rouge 23rd March 1968 07. Rondo Bouton Rouge 20th April 1968 08. Introduction 09. Azrael (Angel Of Death) Forum Musiques 20th November 1968 10. Brandenburger 11. America 12. She Belongs To Me Dim Dam Dom 1st March 1969 13. Intermezzo From The Karelia Suite 14. Rondo PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.53min.