“US FESTIVAL ’83”はテレビ放送もされ、そのプロショットも有名ですが、実は近年プロショット版も格段にアップグレードしています。本作に収められているのは、「1983年5月29日:US FESTIVAL」公演。その流出マルチカメラ・プロショットです。先述の通り、当時からTV放送のエアチェックが大定番となってきましたが、本作は長さもクオリティも大幅にアップグレードしたもの。近年になって発掘されたマスターで、タイムカウンターも入った編集段階のバージョンです。まずは、いかに長くなっているのか。本編解説でも触れましたが、ここで映像基準でまとめ直してみましょう。 ●従来のTV放送(3曲)・Mr. Crowley、Crazy Train、Paranoid●TVではなかった曲(4曲+α)・Diary Of A Madman(Opening SE)、Over the Mountain、Drum Solo、I Don't Know、Flying High Again、Iron Man ●まだ映像が未発掘の曲(5曲)・Suicide Solution、Revelation (Mother Earth)、Steal Away (The Night)、Fairies Wear Boots、Children Of The Grave ……と、このようになっています。まだ全曲が発掘されたわけではありませんが、本作は未発掘の5曲を除く7曲+α(開演を告げるDiary Of A Madmanとドラムソロ)を収録しているのです。しかも単に長いだけではなく、クオリティもケタ違い。従来のTVエアチェックとはまったく異なり、超美麗の超極上。同じ日に出演したJUDAS PRIESTがデラックス・エディションで“US FESTIVAL ‘83”を公式化していましたが、それに匹敵するオフィシャル級クオリティ。さらにサウンドも超極上の上にステレオ。実のところ、発掘元ロゴの透かしがデカデカと入るものの、モノラルでボケボケな従来のエアチェックとは根本の次元が違いすぎるのです((なぜか3曲「Over the Mountain」「Flying High Again」「Iron Man」ではロゴもカウンターも入らず、完全オフィシャル級です)。そのクオリティで描かれるショウは、まさに歴史的な超名演。何しろ“US FESTIVAL ‘83”と言えば、単に巨大なフェスという次元を超え、音楽ジャンル“ヘヴィメタル”にとって一大転換となった歴史的なショウ。4日間で67万人という膨大な動員を記録し、特に目玉の日曜日は“HEAVY METAL DAY”と題され、VAN HALEN SCORPIONS、TRIUMPH、JUDAS PRIEST、MOTLEY CRUE、QUIET RIOTといった面々が出演。「重金属とかいう新しい音楽」をアメリカ全土に叩きつけた。もちろん、それ以前からメタルは米国進出していましたが、それはあくまで“ロックファンにとって”の話。この一大フェスはTVやラジオ放送によってお茶の間にまで浸透させた。特に異様なレザー&スタッドのJUDAS PRIESTと入れ墨だらけの怪人オジーの邪悪なヴィジュアル・イメージはインパクト絶大で、理屈抜きで「ヘヴィメタルとは何者か」を見せつけたのです(後にPRIESTやオジーはPMRCの餌食にもなったわけですが、IRON MAIDENやBLACK SABBATHではなく彼らに目を付けたのも、それだけ両雄がお茶の間にも通じるアイコンだったからでしょう)。閑話休題。本作で目撃できるショウは、そんな歴史的なショウ。オジーの一挙手一投足に全米が「これがメタルか」と刮目し、ジェイクの引っ掻きギターが重金属のイメージに直結していった。この直後に核爆発を起こし、世界の一大潮流へと拡大していった音楽ジャンル「ヘヴィメタル」。 Devore, San Bernardino, CA, 29th May 1983 PRO-SHOT 1. Introduction 2. Diary Of A Madman 3. Over The Mountain 4. Mr. Crowley 5. Crazy Train 6. Drum Solo 7. I Don't Know 8. Flying High Again 9. Iron Man 10. Paranoid 11. Outro. Ozzy Osbourne - Vocals Jake E. Lee - Guitar Bob Daisley - Bass Tommy Aldridge - Drums Don Airey - Keyboards PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.40min.