伝統のオフィシャル映像『LIVE IN PHILADELPHIA』。その完全別バージョン2種を最高峰クオリティでカップリングした2枚組が登場です。『LIVE IN PHILADELPHIA』と言えば、お馴染みの大定番。「1979年6月21日スペクトラム公演」で撮影されたマルチカメラ・プロショットであり、黄金の5人による結成10周年記念ツアーを目撃できる映像作品です。90年代にVHS/レーザーディスクとしてソフト化され、その後DVD化も実現。現在は日本盤も廃盤となってプレミアが付いていますが、長らく広く愛されてきました。そんな説明不要の『LIVE IN PHILADELPHIA』ですが、実は公式版でもまったく違う2種類があるのをご存じでしょうか。本作は、その両方の日本盤をDVD化。DISC 1は2004年にリリースされた日本盤DVDバージョン、DISC 2は日本盤レーザーディスクから起こされたバージョンを配した2枚組なのです。 【いきなり全然違うオープニング・シーン】「2バージョンと言ってもちょっと違うだけだろ」と思われるかも知れませんが、とんでもない。確かに曲目や演奏自体は同じですが、他はまったくの別物。何が違うって、同じところがないくらいに異なるのです。何しろ、再生するといきなりの別シーン。DVD版は開演BGMが鳴り響く中でメンバーが入場し、スライド写真で5人を紹介しつつ、演奏に入っていく。いわゆる普通のライヴビデオ風です。しかし、オリジナルVHS/LD版は歴史物のようなナレーションから始まる。これがなかなか気持ちを掻き立ててくれるので、日本語訳を書き出してみましょう。 「これは宇宙の映像ではありません 光っているのは星ではありませんここに集まった2万人の観客の中でマッチを灯している人達の明かりですここはフィラデルフィアのスペクトラムフライヤーズと76ersの本拠地 そしてロックン・ロールの殿堂ですロックン・ロールを楽しみに世界中で最も多くの人が集まる場所です しかしここでのロック・コンサートが映像に収められたのは今回が初めてこの1979年6月21日が最初なのですかつてこのスペクトラムを三夜連続でソールド・アウトにしたグループは3つ今夜ここで演奏するのはその中のひとつですさあ今夜はタップリ堪能して下さい イエスとの一夜を」 【丸っきり異なるアングルやトリミング】そうしてショウが始まるや、さらにビックリ! 映像がまったく違う!! もちろん、ショウや撮影自体は同一なのですが、DVD化に際してイチから編集し直しているらしく、明らかに使用されているカットが異なる。しかも、その違い方がハンパではない。普通「別アングルが見られる」と言うと「あ、ココ違う角度じゃね?」と間違い探しする感じですが、本作は「同じシーンあるかな?」と逆方向に探すほど。オリジナルLD版にしろ、DVD版にしろ、片方に慣れ親しんでいる方ほど同じショウとは思えないほど新鮮なのです。しかも、単に違うカットを使っているだけではなく、編集方針も異なる。一言で表すなら「LD版=ステージ重視」で「DVD版=アップ重視」。VHS/LDのオリジナル編集版は、当時話題だった360度の回転ステージのスペクタクルを見せたいのか、全景も多めで回転した結果メンバーが背中向きになるカットも平気で多用されています。それに対し、DVD版はメンバーのズームを重視。撮影し直しているわけではないので限界はあるものの、背中を向くシーンは極力避けられ、手元や表情、メンバー同士が絡むシーンがたっぷり。つまり、現代感覚に近いカット割りになっているのです。さらに言えば、時たま出てくる同じアングルでも仕上がりが違う。VHS/LD版は画面サイズが「4:3」ですが、DVD版は「16:9」なので画面上下をカットしているのです。「画面をカット」というとマイナスのようにも思えますが、これは「ズームを多用」の編集方針にも合致している。単にカットするだけでなく、そこからさらにトリミングしてアップにするシーンもあるなど、手抜きな上下カットではなく、積極的に活用しているのです。そして、そんな映像を伝える画質も違う。基本的にはDVD版の方が鮮やかなのですが、これも一概に優劣が決められない。DVD版はデジタル・マスタリングを施しているのかビビッドな原色が美しいものの、ズームを多用している事もあってか細部が潰れがち。逆にLD版は発色がやや白んでいるのですが、ディテールはキレイに残されているのです。 【サウンド・曲順・日本語字幕……同じところがない】ここまででも別作品と言っても良いくらいですが、異なるポイントはまだまだある。分かりやすいところですと曲順。中盤の「Starship Trooper」「Drum Solo」「Leaves of Green」が豪快に入れ替えられています。それどころか音も違う。それも単なる音質のレベルではない。LD版はいかにもサウンドボードなド直結感のあるサウンドなのですが、DVD版は別物マスタリング。ギターの高音が強調されていますし、ヴォーカルはエコー処理。ジョンの弾き語り「Leaves Of Green」では違和感スレスレなエコーが派手にかけられ、まるでオーディエンス録音かのようです。さらにさらに、日本盤特有の字幕。これもLD版/DVD版でそれぞれ個別に訳しているらしく、同じMCでもまるで内容が違うかのようです。例として「Circus Of Heaven」の曲紹介MCを書き出してみましょう。DVD版 ありがとう 次の曲はこんなふうに聴いてほしい場所はちょうどこのあたり ステージの上の暗闇に想像して映像を思い浮かべてほしい “天国のサーカス”が街に来た日を… LD版 どうもありがとう 次の曲は物語なんだこの暗闇の中で想像して欲しい 天国のサーカスが街にやって来た時のことを ……と、こんな感じ。DVD版は言葉を正確に訳そうとするあまりややまどろっこしい日本語になっていますが、LD版は意訳。正確ではないものの、すっきりと短く、流れる映像の中でも分かりやすい。またLD版では「Starship Trooper」も長々と紹介していますが、DVD版では曲名だけ。さらに言えば、DVD版はジョンの一人称が「俺」だったり、「盛り上がろうぜ」などと、ややイメージの違う訳が多い。さまざまなポイントで甲乙付けがたいところですが、日本語字幕に関してはLD版の方が上のようです。お馴染みでありながら、実はまったく違っていた2つの名作映像。その両者を最高峰クオリティの日本盤でコンパイルした2枚組です。初体験の方が浸りきるのに最高のプロショットであるのはもちろん、マニアックに見比べてみても新鮮極まりない大傑作。アングル・編集・曲順が全然違う2種の『LIVE IN PHILADELPHIA』をそれぞれ最高画質で収録。必見!!! Live at Spectrum Arena, Philadelphia, PA, USA 21st June 1979 PRO-SHOT(2 Diff Version) Disc 1(50:14) 1. Intro 2. Siberian Khatru 3. Circus Of Heaven 4. Drum Solo「この数年間 彼女は俺の魂であり インスピレーションの源だった 12時になったら彼女の誕生日だ この曲をジェニファーに贈る 誕生日おめでとう スイート・シックスティーン」 5. Leaves Of Green「スターシップ・トゥルーパー!」6. Starship Trooper 7. I've Seen All Good People「80年代にはこのようなことをいっぱい出来ると聞いたんだ とりあえず盛り上がろうぜ」8. Roundabout Disc 2(51:05) Laser Disc Edition 1. Intro. 2. Siberian Khatru 3. Circus of Heaven「次の曲はある男達に贈りたい 今日僕たちは連中に本物のサッカーの手本を見せてやった 彼等にはデリケートな曲で元気付けてやることが必要だ フィラデルフィア・フューリーズの連中さ贈る曲は〈スターシップ・トゥルーパー〉」 4. Starship Trooper 5. Drum Solo「彼女は僕のインスピレーション今夜12時を回ると彼女の誕生日 この曲はジェニファーに捧げる 誕生日おめでとう」6. Leaves of Green 7. I've Seen All Good People「80年代もこの調子で続けていきたい」8. Roundabout Jon Anderson - vocals, guitar, percussion Steve Howe - guitar Rick Wakeman - keyboards Chris Squire - bass Alan White - drums PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.101min.(Total)