1979年に発生した“スリーマイル島原子力発電所事故”を機に開催されたチャリティ・コンサート“NO NUKES”。歴史的な一大イベントを伝える傑作映画がリリース決定です。“NO NUKES”は、80年代に一大潮流となったロックのチャリティ・コンサートの先駆けとも言えるものでした。主催したのは、ジャクソン・ブラウン、グラハム・ナッシュ、ボニー・レイット、ジョン・ホールらが反核を目指して設立した活動グループ“MUSE(Musicians United for Safe Energy:安全なエネルギーのための音楽家連合)”。スリーマイル島の事故を契機に核エネルギーに反対運動を起こし、そのチャリティのために「1979年9月19日-23日」に5つのコンサートが実施されました。人気ミュージシャンが多数参加したこともあり、バッテリー・パーク公演では約20万人の動員を記録するほどの巨大イベントとなったのです。その模様はアナログ3枚組のライヴアルバム『NO NUKES: THE MUSE CONCERTS FOR A NON-NUCLEAR FUTURE』として作品化されただけでなく、映画『NO NUKES』としても公開。日本でもVHS/レーザーディスクなどでリリースされました。本作は、公式にDVD化されたことのない幻の音楽映画を当時の日本盤からDVD化したものなのです。そのクオリティは絶品。あくまでも40年前のソフトですのでデジタル全盛の現代基準では画質に甘みも感じますが、その鮮度はズバ抜けている。海外マニアのトランスファーだけにソースは不明なものの、白線ノイズやテープの走行ヨレが一切感じられないところを見ると恐らくレーザーディスク。ところどころで入る日本語字幕もビビッドな映像美なのです。そして、その内容がまた素晴らしい。とにかく今をときめく豪華な出演陣が次から次へと登場。そのラインナップだけでなく、貴重な共演もたっぷりと出てくるのです。本作では“マディソン・スクエア・ガーデン公演”をメインにしつつ、ハイライトの“バッテリー・パーク公演”の模様も見られる。ここで、その内容と豪華さを整理してみましょう。 マディソン・スクエア・ガーデン公演(17曲)・ジェームス・テイラー:Mockingbird(withカーリー・サイモン)/The Times They Are a-Changin’(withサイモン、ナッシュ、ホール)/Your Smiling Face(★)/Stand and Fight(★)・ボニー・レイット:Runaway ・グラハム・ナッシュ:Suite: Judy Blue Eyes(CS&N:★)/Barrel of Pain(★)/Our House(★)・ジャクソン・ブラウン:Running on Empty(★)/Before the Deluge・THE DOOBIE BROTHERS:Dependin' on You/What a Fool Believes(★)・ギル・スコット・ヘロン:We Almost Lost Detroit ・ブルース・スプリングスティーン&THE E STREET BAND:The River(★)/Thunder Road(★)/Quarter to Three(★)・オールスター:Takin' It to the Streets バッテリー・パーク公演(3曲)・JOY RYDER/AVIS DAVIS BAND:No More Nukes(★) ・ジョン・ホール:Power(withサイモン、レイト、CS&N、ブラウン:★)・ジェシ・コリン・ヤング:Get Together(withホール、サイモン、レイト、CS&N、ブラウン:★)※注:「★」印は3枚組ライヴアルバム版では聴けなかった曲。……と、このようになっています。特に3曲収録されたブルース・スプリングスティーン&THE E STREET BANDは、本作こそが初の公式映像です。このラインナップだけでも特濃ですが、さらにイベント自体の時代感も素晴らしい。当時は遠い国の他人事だった原発事故ですが、現代の私たちにはビビッドなのです。会場に詰めかけた観客も反核を口にするだけでなく、核を擁護する人もいれば、将来の温暖化など想像もできずに化石化燃料を賛美するオバサン、「みんな偽善者だよ。音楽を聴きに来たくせに」と思いっきり正直なロックファン……。もちろん、主催ミュージシャン達はステージ上から反核を呼びかけ、記者会見で真摯に訴えるわけですが、その一方でメッセージそっちのけで「明日もCS&Nの再結成はあるの?」と質問する記者もいたり。真面目だったり、そうでなかったり、あらゆる人々を巻き込みながらみんながみんな巨大イベントに平静ではいられない……そんな“時代のうねり”も日本語字幕でダイレクトに伝わってくる音楽映画の傑作なのです。福島第一原子力発電所事故を経験し、毎年の自然災害から温暖化の脅威も肌感覚になってきた現代の私たち。本作の肝は1979年だからこそ実現した豪華絢爛のロック・コンサートはありますが、今だからこそ「音楽は世界を変えられる」と信じた“時代感”も痛いほどリアルに感じるのです。まさに2020年に観るべき音楽映画の大傑作。 Madison Square Garden, New York, USA 19th-23rd September 1979 PRO-SHOT Madison Square Garden 1. Introduction 2. James Taylor & Carly Simon - Mockingbird 3. Bonnie Raitt - Runaway 4. James Taylor, Carly Simon, Graham Nash, John Hall - The Times They Are a-Changin' 5. Crosby, Stills & Nash - Suite: Judy Blue Eyes 6. Jackson Browne - Running on Empty 7. Jackson Browne - Before the Deluge 8. The Doobie Brothers - Dependin' on You 9. The Doobie Brothers - What a Fool Believes 10. Graham Nash - Barrel of Pain 「CSN&Yと間違ってクレジット出る」 11. James Taylor - Your Smiling Face 12. James Taylor - Stand and Fight 13. Gil Scott-Heron - We Almost Lost Detroit 14. Graham Nash & Family - Our House 15. Bruce Springsteen & The E Street Band - The River 16. Bruce Springsteen & The E Street Band - Thunder Road 17. Bruce Springsteen & The E Street Band - Quarter to Three 18. Doobie Bros -James Taylor, Carly Simon, John Hall, Graham Nash - Takin' It to the Streets Battery Park 19. Joy Ryder/Avis Davis Band - No More Nukes 20. John Hall with Carly Simon, Bonnie Raitt, Graham Nash, David Crosby, Stephen Stills, Jackson Browne - Power 21. Jesse Colin Young with John Hall, Carly Simon, Bonnie Raitt, Graham Nash, David Crosby, Stephen Stills, Jackson Browne - Get Together 22. End Credit PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.102min.