1989年、日本のレコード会社が、ピンク・フロイドのライヴアルバム及び同名ビデオソフト「Delicate Sound of Thunder」のプロモーション用に作製したオリジナルVHSビデオテープをダイレクトにDVD化。恐らく多数複製されて、店頭に流れたにもかかわらず、マニア間でも全く知られていないものであり、「Delicate Sound of Thunder」短縮版という位置付けのみならず、何故か「Final Cut」のプロモ2曲を途中に意味ありげにインサートした、独自編集されたその内容は、コレクターにとっては興味深いものであるはずです。「PINK FLOYD 店頭演奏用ビデオ」とビデオ上面と背面にインデックスシートが貼られたVHSテープをそのままディスク化、収録時間は52分です。Shine On You Crazy Diamond (Part I)は公式盤同様にピンク色のライトからスタートしますが、4分目の、例の4音階が登場する前でフェイドアウトという異例のショートヴァージョンであることに驚かされます。SOYCDのストリングシンセパートから、曲はそのまま2曲目のSigns Of Lifeにそれ程違和感なく繋がっており、あまりフロイドを知らない人がみたら「こういう楽曲か」と思うような巧妙な編集です。Signs Of LifeからLearning To Flyは序章〜本編のようにメドレーで収録されるべきなのに、何故か、ここでいきなり「The Final Cut」期のWhen The Tigers Broke Freeのプロモが丸ごとインサートされています。「鬱」の世界からいきなりロジャーの情念のこもったボーカルと例の戦争期のイメージフィルムになり面食らってる所に、これまたいきなり(そして劇的に)Learning To Fly が流れ、観てる側は、製作者の意図が判らず混乱すると同時に、その場面展開の急激さに何が何だか分からなくなります。フル収録されたLearning To Fly の後は、またしても「The Final Cut」よりタイトルトラックのプロモ。ハッピーに大会場で演奏するギルモアの演奏の直後に、陰鬱なロジャーの詞世界が画面といっしょに展開される様はシュール以外なにものでもありません。On The Turning Awayのプロモの目のアップに「The Final Cut」の白黒映像が流れる様を自然に繋げるセンスと技術はお見事で、まるで繋がってるみたいですが、勿論、両者は楽曲的には「ピンクフロイド名義」であること以外、接点は殆ど無く、なまじ編集技術が高度なだけに、見ていて疑問符だらけになってしまいます。1989年のライヴ映像のプロモーション・サンプル・ビデオなので、「鬱」のひとつ前のアルバムの曲のプロモも混ぜて、販促用ビデオを製作しようという意図だったのかもしれませんが、結果的に非常に奇妙な内容のものになっています。(バック・カタログ(在庫余りの「ファイナル・カット」)も、この際、しっかりフィーチャーするように上司から言われたのか?そして、製作者も、さすがに「Not Now John」プロモをインサートするのは躊躇したのではないでしょうか。)しかし、流石にレコード会社が製作してるだけのことはあり、The Dogs Of War、Time、Comfortably Numb、One Of These Days とそれらの編集と繋ぎの技術は高度で、これはこれで、ジャパニーズ・オンリーのオリジナルな魅力を持った、大変興味深いソフトであると言えます。音楽・映画に限らず、海外に確認をとらずに、独自にいろいろな企画・宣伝が出来た、おおらかな時代の興味深いアイテムです。マニア限定のアイテムではありますが、ファンにとってはとてつもなく面白い、コレクター必見・必携の一枚と断言できます。Live at Nassau Coliseum, Uniondale, New York, USA 19-23 August 1988 PRO-SHOT Taken from the original Japanese In-store video sampler tape 1. Shine On You Crazy Diamond (Part I) 2. Signs Of Life 3. When The Tigers Broke Free(Promo) 4. Learning To Fly 5. The Final Cut(Promo) 6. On The Turning Away 7. The Dogs Of War 8. Time 9. Comfortably Numb 10. One Of These Days PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.52min.