S.T.P.のハイライトでもあった1972年のマディソン・スクエア・ガーデン。その現場をリアル体験できる伝説の8ミリ映像がアップグレード。そんな本作が撮影されたのは「1972年7月25日マディソン・スクエア・ガーデン」公演。そのオーディエンス・ショットです。以前から8ミリ・フィルムが残された事でも知られるショウでもありましたが、本作はライヴ本番から50周年を記念して公開された最新バージョンです。本作は映画のようにスタイリッシュに演出された会場風景で幕を開け、そこから伝説の8ミリ・フィルムがスタート。ステージ左側の真横から撮影された「アーリーショウ」が約9分、正面から超ドアップで迫る「レイトショウ」も9分ほど繰り広げられます。見て一発の麗しい発色と過去最高の鮮やかな映像美に目を奪われるわけですが、真に衝撃的なのは音声。同日のオーディエンス録音がシンクロされており、その精度が凄まじいのです。本稿に目を留められた方ならご存知と思いますが、70年代のオーディエンス・ショットは8ミリ撮影であり、その映像は無声の事が多く、時間も1カット数秒から十数秒ほど。資料的には貴重ではあっても、音楽作品として楽しむレベルにはありません。しかし、デジタル技術の発達した現代では、そんな8ミリを活用した編集作品が流行中。細切れ映像を繋ぎ、同日の録音を被せて当時の現場を復刻する試みが数多く行われています。ただし、その精度はまちまち。何しろ、無声映像を現場通りの順番に並べるだけでも困難ですし、内容から曲目を割り出すのはディープな知識と猛烈な調査が欠かせない。実際、大量に製作されている8ミリのアーカイヴ作品も、プロモ映像的に何となくの雰囲気で被せている作品がほとんどというのが現状です。しかし、本作は違う。これまで何度も作品化が試みられてきた映像なわけですが、今回のシンクロ感は従来とは別次元。弦を弾くピッキングの1つひとつ、口元から発せられる歌詞の一語一語がピタッと完全一致。十数秒毎に映像が飛び、曲が変わってもそのシンクロ感覚がまったく乱れない。それこそ現代オーディエンス・ショットと同じように、「最初からマイク付カメラで撮影されている」ようにしか見えないのです。現代は技術の進歩によって誰でもカンタンに編集できる時代となったわけですが、ピラミッドは裾野が広くなるほど高さも上がるもの。本作は、そんな「ピラミッドの頂点」の高さを見せつける映像作品なのです。研究資料でしかなかった断片映像を「現場の精密再現」の次元にまで引き上げられた50周年の記念映像。これこそが2022年のアーカイヴ技術。貴重な8ミリ映像作がリリース。以前から有名な映像ですが、同日音声のシンクロ精度が圧倒的。まるで最初からマイク付カメラで撮影されたような体験感の傑作です。 Madison Square Garden, New York, USA 25th July 1972 Early & Late Show 1. Intro Madison Square Garden, New York, USA 25th July 1972 Early Show 2. Happy 3. All Down the Line 4. end of Midnight Rambler 5. end of Bye Bye Johnny 6. Rip this Joint 7. Jumping Jack Flash 8. Street Fighting Man Madison Square Garden, New York, USA 25th July 1972 Late Show 9. Brown Sugar 10. Bitch 11. Rocks Off 12. Happy 13. Tumbling Dice 14. Sweet Virginia 15. You Can't Always Get What You Want 16. All Down the Line 17. Midnight Rambler 18. Jumping Jack Flash 19. Street Fighting Man 20. Outro COLOUR NTSC Approx.20min.