ロックを愛するなら知らぬ者のない永遠の名曲「いとしのレイラ」。その誕生の裏舞台を詳らかにする大傑作ドキュメンタリーがリリース決定です。「1曲」にこだわった日本製作の大傑作シリーズそんな本作に収められているのは、近年まで放送されていた伝説的な深夜番組“SONG TO SOUL”。その「いとしのレイラ」回をDVD化したものです。ひと口に「音楽ドキュメンタリー」と言っても様々なタイプがありますが、この番組は1曲に焦点を絞り込み、その曲がどうやって生まれたかを深く深く掘り下げるもの。BS民放チャンネルでしたが、その作りはBBCやNHK特集にも似たディープで品格のあるものでした。特に素晴らしいのは、深みのある独自取材。当然の話ですが、洋楽は関係者が海外在住で新規の取材は視聴者が考える以上に費用がかさむもの。そのため、ロック系ドキュメンタリーはBBCやMTV製作の海外番組を和訳したものや、既存の素材を組み替えるだけのものが多いのです。もちろん、単に新規コメントを取っただけでは意味はない。この番組の素晴らしいところは、そのコメントが深く、濃く、面白い。スタッフがテーマとなる曲やアーティストを深く深く愛しているのは明らかで、人選からして普通では考え垂れない。さすがにクラプトン本人に取材はしなかったようですが、当時を知り尽くしている元メンバー:ボビー・ウィットロックに白羽の矢を立て、さらにアルバム製作の裏舞台を語る役にエンジニアを務めたハワード&ロン・アルバート兄弟を選んでいる。人選基準に「視聴率を稼げる知名度」などまったくなく、「誰が現場を深く知っているか」「いかに面白い話を引き出せるか」しか考えていないのでしょう。ウィットロックが語るディープで生々しい裏舞台 もちろん、そんな人選ができる日本スタッフですから引き出した話も面白い。特に本作の主役と言ってもいいのがウィットロック。クラプトンとの出会いからDEREK AND THE DOMINOS結成、トニー・アシュトンのカン違いによって決まったバンド名の由来、「ハートウッド・エッジ」での作曲セッション等々、現場に居合わせた当事者視点で話してくれるのです。例えば、イントロ・リフをアルバート・キングの「As the Years Go Passing by」から拝借した話、それをアルバートに打ち明けたときの反応、後半のピアノ・パートを書いたのはジム・ゴードンの彼女リタ・クーリッジだった事、それがBOOKER T. & PRISCILLAの「Time」として先にレコーディングされていた事など、次々に明かしていくのです。さらにTHE ALLMAN BROTHERS BANDとの出会いのくだりでは、クラプトンとデュエインがあっと言う間に意気投合していった様子をリアルに語ってくれる。ここでは故トム・ダウドの記録映像も登場し、マルチ・トラックを操作しながら2人のソロを目の前でリミックスしていくのです。そして、「いとしのレイラ」で避けて通れないのがパティ・ボイドへの想い。クラプトンとパティの本心を自伝から引用しつつ、現場で惹かれ合っていく2人を目の当たりにしていたウィットロックのコメントがあまりにも生々しく素晴らしい。ちょっと書き出してみましょう。「歌詞の意味はすぐわかったよ。僕は彼らの関係について知っていたけど、エリックには何も言わなかった。仲間たちも同じだ。当時者だけの問題だからね。(中略)僕が歌うときは途中でテンポを速める。この曲をブルースとして歌うと胸が張り裂けそうになる。『レイラ』はロックンロール版のブルースだ」「たまたま信じられないタイミングでパティによく似た絵に出会った。エリックは見るなりその絵に歩みより『パティだ!』って叫んだ。その瞬間、僕らにはこの絵がアルバムのジャケットになることがわかった。だってレイラはパティだからね」「たとえパティがいなくてもきっと別の女性がエリックにインスピレーションを与えただろう。この曲には「パティ」なんて出てこない。歌われているのは「レイラ」だ。たまたまあの時エリックはパティに夢中になり、彼女が親友の妻だったというだけの話だ。別の親友の奥さんに恋をした可能性だってあるんだし…誰の心にも『レイラ』がいるのさ」クラプトン&パティの恋心を見守りつつ、その想いはあくまで2人だけのもの。それとは無関係にミュージシャンとして曲と向き合っていたウィットロックの本音が透けるのも本作の見どころなのです。もちろんクラプトン本人にも登場して欲しかったところではありますが、彼が語る内容は想像ができなくもありません。そうではなくウィットロックが語るからこそ、よりディープで興味深いドキュメンタリーになっているのです。「ヂュエインはあのアルバムが出てからまもなくバイクの事故で死んだ。トラックに追突したんだ。カールもドラッグと酒をやり続けたことが祟って死んでしまった。ジムは自分の母親を殺害した。死刑を免れたものの、死ぬまで刑務所で暮すことになった。僕は今こうしてここにいる。そしてエリックは、たぶんロックンロール・ショーの準備に今日も忙しいんじゃないかな」そう噛みしめるように語るウィットロック。最後に原詩と対訳をフィーチュアした独自PVで「いとしのレイラ」がフルで流れ、本作は幕を閉じます。長くなるので触れませんでしたが、アルバート兄弟によるレコーディング裏話も面白く、詳しくなくても万人に分かりやすいナレーションも見事。見どころの尽きない映像傑作です。日本でもBBCに負けない音楽番組が作れると証明してくれた“SONG TO SOUL”。その神回として知られる「いとしのレイラ」特集。名曲「いとしのレイラ」をテーマにした日本特番が・リリース。ボビー・ウィットロックやエンジニアのアルバート兄弟が語る裏舞台がディープで興味深い日本製作ドキュメンタリーの大傑作です。Featuring exclusive interview with Bobby Whitlock at his home and exclusive interview with Ron and Howard Albert (engineers worked with Tom Dowd) at Criteria Studios, Miami, Florida Ron and Howard Albert, known as the Albert Brothers, are an American record production duo best known for their work on recordings at Criteria Studios in Miami, Florida, United States. Their work includes notable albums such as Layla and Other Assorted Love Songs by Derek and the Dominos one piece of eternity - 永遠の一曲 Broadcast Date: 14th October 2010 (46:45) 1. Programme Intro 2. Segment 1 3. Segment 2 4. Segment 3 最後にボビーがレイラ後半のピアノを弾く 5. Segment 4 ハワード「聴くたびに嬉しくなる。何時聞いても新鮮だ。40年前に録音した曲なのに音が古くない」 ロン「いくつもの要素がお互いをそれぞれ高めあっていた。トム・ダウドも僕らも皆が更に良いサウンドを作ろうと発奮した。彼のおかげで僕らは頑張れたし、僕らが頑張ったから彼もより張りきった。みんながそんな気持ちだったのでロック史に残るこの名盤が生まれたんだ」 ボビー・ウィットロック 「たとえパティがいなくても、きっと別の女性がエリックにインスピレーションを与えただろう。この曲には「パティ」なんて出てこない。歌われているのは「レイラ」だ。たまたま、あの時、エリックはパティに夢中になり、彼女が親友の妻だったというだけの話だ。別の親友の奥さんに恋をした可能性だってあるんだし・・・誰の心にも「レイラ」がいるのさ。「レイラ」は愛の歌なんだ。歌が出来る前から「レイラは既に皆の中にある。愛も「レイラ」も地上から消えてなくなることは永遠に無い。」(★素晴らしい言葉)「ヂュエインはあのアルバムが出てからまもなくバイクの事故で死んだ。トラックに追突したんだ。カールもドラッグと酒をやり続けたことが祟って死んでしまった。ジムは自分の母親を殺害した。死刑を免れたものの、死ぬまで刑務所で暮らすことになった。僕は今、こうしてここにいる。そしてエリックは、多分、ロックンロール・ショウの準備に今日も忙しいんじゃないかな」最後の「Layla」の対訳入り独自PV