有名ギタリストを特集した公式ドキュメンタリー映像シリーズ『CAREFUL WITH THAT AXE』。そのトニー・アイオミ篇がリリース決定です。ギタリスト特集ながら教則ではない個性派シリーズ『CAREFUL WITH THAT AXE』は、知る人ぞ知る名作シリーズでした。リリースされたのは90年代初期で、当時はホームビデオの普及が本格化し、エロや映画だけでなく音楽ソフトも百花繚乱。正道のライヴ・ビデオに留まらず、PV集や教則ビデオ、レーベルや音楽番組でくくったコンピレーション、ビデオ・マガジン等々………映像商品の可能性を探るように様々なタイトルが乱発されました。『CAREFUL WITH THAT AXE』もそんな時代の産物。ギタリスト個人に焦点を当てつつ、教則ではなくヒストリー/ドキュメンタリーとして特集していく一風変わったもの。アイオミだけではなく、当時はロバート・フリップ篇やスティーヴ・ハウ篇などもリリースされました、当店のお客様ならご存知とは思いますが、当時の映像作はリリース直後に廃盤になるのが宿命。買おう迷っているうちに、どんどん市場から消えて言ってしまった。特に本作のような実験的な映像作品はDVD化されることもなく、当時運良く買えた人だけがひっそりと楽しんできたのです。本作は、そんな当時の日本盤レーザーディスクからDVD化されたもの。クオリティ的に最高峰なのはもちろん、ドキュメンタリーに必須な日本語字幕も完備して内容も直感的に理解できる決定盤なのです。アイオミの意外な嗜好が明かされるインタビュー 前置きがすっかり長くなりましたが、本作は実験的でありつつ作り自体はドキュメンタリーの正道。アイオミ本人のインタビューを主軸として歴史を追っていき、その時々のライヴ映像や独自の生演奏などを交えていきます。面白いのはギタリストの個人ビデオにも関わらず、ギター奏法にはほとんど触れないこと。機材やギターについても語りますが、ギタリスト向けと言うよりは幅広く一般リスナー向けなのです。話は事故で指先を失ったくだりから始まり、どう克服していったか、愛用ギターを手に入れた話へと進んでいく。そしてバンドを組んで、「Black Sabbath」リフを思いついたというお約束の流れ……かと思いきや、ここから脱線。突如としてお気に入りのミュージシャンが誰かという話に突入します。親友ブライアン・メイはさておき、アイオミがジミー・ペイジやデイヴ・ギルモアについて寸評するのは非常に貴重。特にリッチー・ブラックモア(!)は人脈的に因縁が深いにも関わらず、ほとんど触れたことがなかっただけに何を言い出すのかヒヤヒヤしてしまいます(具体的にどう評するかはご覧になってのお楽しみ?です)。そんな中で意外なのはスティーヴ・ハウを手放しで大絶賛してること。リック・ウェイクマンの友達ではありますが、ハウをギタリストとして大リスペクトしているとは驚きです。その後は各アルバムについて語る……ものの、中途半端。恐らく同時期にヒストリー物『THE BLACK SABBATH STORY VOL.1/2』も製作していたので重複を避けたのでしょう。『血まみれの安息日』『テクニカル・エクスタシー(意外!)』を絶賛しつつ、他はサラッと流しています マニア心をくすぐる珍編集や激レア・コメント そんな流れの中でちょいちょい演奏シーンも挿入される。有名リフやライヴでお馴染みのソロ・フレーズを生演奏し、既存映像も差し込んでいく。ここでズッコケるのは「Smoke On The Water」。BLACK SABBATHではなく、GILLANのライヴが使われているのです。もちろん、SABBATH版のプロショットが残っていないので仕方がないのは分かりますが、だったらアイオミに生演奏してもらえば激レアだったのに……。しかも、長々とほとんど1曲フルでぶっ込んでくる。これも音楽映像のセオリーが固まっていなかった90年代の時代感なのかも知れません。さらに出入りしていった英雄達への寸評も面白いわけですが、ドキッとするのがラスト。撮影当時のBLACK SABBATHについて語るのですが、これがスゴすぎ。「俺たちは新しい顔ぶれでバンドを作り直してるんだ。ギーザーとロニーとコージーと俺とでリハーサルを重ね、ヤル気がみなぎってる。きっといい結果が出ると思うよ」ロニーとコージーが一緒……そう、本作はデモ・アルバム『DEHUMANIZER REHEARSALS』『BATTLE OF GODS』と同時期に撮影されていたのです。現在では、この頃のロニーとコージーの仲が最悪でアイオミもうんざりしていた事が知られていますが、本作では「ヤル気みなぎる」「きっといい結果」とサラッと大ウソ付いているのも趣深いのです。『TYR』から『DEHUMANIZER』へ向かっていた1991年のトニー・アイオミ。そんな彼が自身のの半生を振り返る公式ドキュメンタリーの秘宝です。スティーヴ・ハウを尊敬していたり、『テクニカル・エクスタシー』に拘っていたり、他では観られない意外 本音も面白い1枚。トニー・アイオミの廃盤公式ドキュメンタリー作品がリリース。コージー&ロニー在籍時代の貴重なインタビューで構成され、日本語字幕も完備。スティーヴ・ハウを絶賛するなど意外なコメント満載です。TONY IOMMI– CAREFUL WITH THAT AXE: JAPANESE EDITION 1. Accident 2. Favourite Guitar 3. Black Sabbath 4. Favourite Musicians 5. Paranoid 6. Albums Of The 1970s 7. Ronnie James Dio/Ian Gillan 8. Headless Cross 9. Iron Man 10. Ending PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.51min.