1曲にこだわり抜いた構成とコアな独自インタビューで大好評を呼んでいる傑作ドキュメンタリー・シリーズ“SONG TO SOUL”。その「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」篇がリリース決定です。本稿に目を留められた方ならご存知と思いますが、このシリーズは日本で独自制作された音楽ドキュメンタリー番組で、他では観られない新規インタビューで1曲を深く深く掘り下げていくものです。このインタビューが非常に面白く、ドキュメンタリーの正道である作曲者やバンド・メンバーが登場することもありますが、逆にまったく出てこない回もある。本作は「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」ですから、あの伝説リフを書いたのが誰なのか、キース・リチャーズとビル・ワイマンが大激論……ではなく、メンバーよりもその周辺の人物によって固めていくタイプなのです。ここで「なんだ、メンバーじゃないのか」と侮るなかれ。有名なメンバー自身の出演は確かに派手ではありますが、そんなインタビュー/ドキュメンタリーは他にいくらでもある。この番組の傑作たる由縁は「誰に訊くか」よりも「何を訊くか」を重視している点。これまで掘り下げられてこなかった曲の真相に狙いを定め、「何を訊くか」から「適任者は誰か」に逆算しているのです。ファン視点から名曲に切り込む導入編 分かったような分からないような能書きはさておき、番組内容をご紹介していきましょう。本作はざっくり4つのセクション「ファンの視点」「ストーンズ史」「名曲の制作現場」「数々の逸話」になっています。まず導入となっているのが「ファンの視点」。お馴染みシー○&ザ・ロケッツのお二人が曲への想いや本質に迫る一方、海外のコピバンTHE ROLLING CLONESのギタリストも登場。演奏を解説する二段構えになっています。故鮎○氏一流の感覚的な語り口も胸にすとんと落ちますが、コピーバンドらくオープンコードの響きにまでこだわった演奏研究も面白いところです。名曲誕生に至るまでのストーンズ史 続いてのパートは、ドキュメンタリーの正道であるヒストリー。その起点はキース/ミックの生家で、いかにご近所さんだったかを現場から伝える。その後はダートフォード駅での再会、ブライアンとの出会い、ストーンズ結成、「サティスファクション」でのブレイク、『サタニック・マジェスティーズ』での混乱……と歴史を追っていく。あくまで表層的な駆け足ですし、ここではインタンビューなしのナレーション構成。しかし、手抜きはなくイーリング・ジャズ・クラブやマーキー1号店など、伝説の舞台となった聖地の数々をしっかり見せてくれます。ジャンピン・ジャック・フラッシュ誕生の現場 次のセクションは、いよいよ「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」誕生の瞬間へ。ここでは聖地巡礼の流れから作曲リハーサルが行われた「R.G.スタジオ」を訪れ、関係者ロビン・ジョーンズが当時を語る。この人物はスタジオ経営者R.G.ジョーンズの息子で、40回ほど行われたストーンズのセッションにも立ち会ったスタッフでもありました。スタジオはすでになくなっているものの、ロビンの証言や当時の写真やゴダール監督の映画『ワン・プラス・ワン』のシーンも活用して作曲現場を再現。当時の予約ノートから「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」誕生の瞬間が「1968年2月21日の12時ー夜19時半」と割り出すくだりは、まるで考古学。オーディエンス音源から史実を探っていく醍醐味と同じカタルシスが味わえます。名曲にまつわる数々の逸話 最後のセクションは、実際に録音された聖地「オリンピック・スタジオ」。ここでは60年代研究の専門家としてイギリスの音楽誌『MOJO』のダニー・エクルストンが登場。キースの家の庭師ジャックが曲の由来であること、リフの作者にまつわる論争、ブライアンが「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」をどう思っていたかなど、数々のエピソードを明かしてくれます。そして、話はブライアンの離脱と悲劇へ……。ある意味、本作で最も面白いセクションかも知れません。ブライアン追悼のハイド・パークで演奏された「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」で幕を閉じる本作。この回は代表曲「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」に材を取りつつ、ブライアン死去までのストーンズ史と聖地の現場巡りが楽しめる1枚でもあります。インタビューはとかく「誰が話しているか」に注目されがちですが、実は「何を聞き出すか」こそが最も大切。重要人物が出てきたところで、底の浅い社交辞令や何度も繰り返されてきた話のリピートでは意味がありません。本作は、そんなドキュメンタリーの真髄を思い出させてくれるのです。メンバーが出てこなくても、それを感じさせない『SONG TO SOUL』スタッフの造詣の深さとセンスに唸る1枚。大人気の傑作ドキュメンタリー・シリーズの「Jumpin' Jack Flash」回がリリース。ミック/キースの生家からブライアン追悼のハイドパークまで、聖地を巡りながら名曲の秘話を説き明かしていきます。Broadcast Date: 17th February 2012 1. Programme Intro 2. Segment 1 3. Segment 2 4. Segment 3 5. Segment 4 PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.46min.