ロバート・プラントをして「こんなにいい感じで演れたのは(同じサンフランシスコの会場だと)フィルモアの時以来」と言わしめた名演ケザー・スタジアム。むしろ大抵のマニアに「ケザー」と言えばZEP1973年ライブだと思い浮かばせてしまうほど有名な一日です。その素晴らしさはキモジャケ・デザインが懐かしい名盤LP「PERSISTENCE」を皮切りとして、多くのアイテムがリリースされ続けてきたことも名演たる証かと。そう言いつつケザーがCDアイテムになると意外なほど込み入った状況が続いていたように思えます。ケザーCDの先鞭をつけた「THE VIBES ARE REAL」はピッチやカットの問題ありまくりリリースでしたし、赤いジャケのアートワークが何とも冴えなかった。それからしばらくして当時のカセット・トレードのレベルではロージェネレーションな音源が爆発的に広まり始めたことを受け、今から二十年ほど前には次世代ケザーCDが溢れ返ったものです。それが「TAKKA TAKKA」、「WHO’S NEXT」そして「BEST VIBES IN FRISCO」といった、これまた懐かしいアイテム群。何しろ名演かつ名音源のケザーです、その後もアイテムは生み出され続けましたが、21世紀を迎えて衝撃のサウンドボード発掘が実現しています。ところがこちらのSBDは「Moby Dick」以降のショー終盤のみの収録という落ちが付きました。1973年アメリカ・ツアーから多く出土したPAアウトのSBDはどうにも不完全なものばかりですが、何せ元がリリースを前提とした録音ではないのだから、こればかりは仕方がない。それでもなおSBDならではのずば抜けたクリアネスは抗しがたい魅力がある。だがそれ以上に従来からケザーの素晴らしさを知らしめてくれたステレオ・オーディエンス録音の音質がまた魅力的。そこで現在はこれら二つの音源をいいとこどりしたパッケージのアイテムが主流となっています。要するに名演全体が味わえるという意味でオーディエンス録音の価値がまったく色褪せていない。1973年の野外スタジアムでの録音としては別格のオンな音像を誇り、中でもプラントの声が驚くほど大きなバランスで捉えられている。ただし、せっかくの音源がカセットのダビングを経由するにつれて刺々しくなってしまい、先に挙げた90年代ケザーCDはどれも高音キツめな印象を受けたものです。時代が時代ですので、イコライズではなくてジェネ落ちが生んだ劣化現象でしたが。この状況は長きに渡って続く結果となったのですが、それまでのケザー・オーディエンス特有の粗さを一掃してくれた衝撃のアップグレードが2010年代早々に実現。それがおなじみKrw_coによるマスターテープからトランスファーされたバージョン。それまでのジェネ落ちカセットとはまるで別次元な質感は世界中のZEPマニアを驚かせてくれたのです。まさに角が取れたという表現がピッタリと当てはまるアッパー感。そしてこのアップグレード音源とサウンドボードを組み合わせた「MARY KEZAR」が新時代のベストとなりました。そしてKrw_coによる初期のアッパー版音源公開がケザーだったのです。にもかかわらず昨年Krw_coバージョンに近年「Unaltered Sound」との触れ込みでネット上に現れたバージョンのサウンドボードを組み合わせた「KEZAR STADIUM 1973」をリリースしたところ、取り立てて目新しい部分がなかったにもかかわらず、ベストセラーとなってしまいました。それが今になってリリースされる理由?それはSBDパートのマスターを入手したことに他なりません。つまり21世紀初頭に初めてケザーSBDをリリースした「LED FIVE」やWATCHTOWER版「THE VIBES ARE REAL」の大本になったもの。もちろんネットを介したルートのコピーではない。とは言っても、それで以前のアイテムよりもアッパーな個所があるかと言えば、それもない(苦笑)。何故かと言えばケザーSBDはトレードのメディアがCD-Rへと移行した時代の恩恵を受け、それぞれが(イコライズを除けば)同等の音質でリリースされるという結果だったからです。よって今回のSBDパートも過去のアイテムとまったく同質、同内容ではあるのですが、それでもオリジナルのマスターからの収録であることは是非とも言っておきたいポイントでした。それ以上に特筆すべきはオーディエンス録音パート。今回のリリースに当たってはベスト・バージョンたるKrw_coで生じていたピッチの狂いと変動を完璧にアジャストしています。実を申しますと、ケザー・オーディエンス最大の欠点は基本的にピッチが高めな上、なおかつ変動してしまう不安定さでした。これはキモジャケLP「PERSISTENCE」はもとより、CDでリリースされたほとんどのケザー物でもおざなりにされていた最大の欠点だったのです。特に90年代のケザーCDに至ってはこの問題がことごとく放置プレイ状態でした。それどころか近年のベストである「MARY KEZAR」ですら、この問題を直しきれていない。つまり元のKrw_coバージョンからしてピッチの変動をおざなりにしていたことに他ならないのです。この大きな欠点と由々しき事態を前に、今回はギフト・リリース時にはない徹底したピッチのアジャストを敢行。遂に、ようやく全編を完全に安定した状態で聞けるケザー・オーディエンスのベスト・リリースが実現することになりました。 こう言っては何ですが、ケザーに関しては基本オーディエンス録音の方が圧倒的に楽しめる。不摂生ロックンロール・ライフの極みにいた73年のZEPゆえ、いつもの夜からではなく、まだ明るい内に始まるアフタヌーンショーに二時間も遅れるという失態を犯しています。おまけにショーの仕切りはビル・グレアム。彼や詰めかけたオーディエンスをやきもきさせたZEPではありましたが、いざステージに上がって演奏を始めてしまえばあっという間にエンジンが全開となったのだから驚き。この日のステージで一番の輝きを放っていたのはボンゾ。それはオープニング「Rock And Roll」がエンディングに向かうところでバスドラを連打する場面だけでも一目瞭然。これだけでシビれてしまうこと間違いなし。しかし、この曲の段階では会場に鳴り響くジョンジーのベース音が弱く、これは73年特有の現象だと言えるでしょう。幸いにも2曲めの「Celebration Day」から彼のベースもグッとオンになるのですが、そのせいで同曲の構成を間違えるというジョンジーにしては珍しいミスも明瞭に聞き取れてしまいます。ボンゾ以上にこの日のライブを素晴らしいものとしているのが全編を通して絶好調なプラント。前年までのようにスクリームできなくなった自分の調子に折り合いをつけ、声が変わったなりに力強く歌えるようになった様がすっかり板についている。一方でケザー・オーディエンスは「Moby Dick」がほとんど収録されていないという問題がありましたが、実は30分にも及ぶ恐怖の長さ(苦笑)でしたので、むしろ聞きやすいと感じる人も少なくないはず。逆に絶好調のボンゾに煽られる形で(当日の写真を見れば解るように)白ずくめなコスのペイジが素晴らしいプレイを聞かせた「Dazed And Confused」の駆け引きがSBDで味わえないのが何とも惜しいところではあります。そのSBDパートですが、私自身はケザーのオーディエンスほど楽しめないのが正直なところ。やはりPAアウトからの録音特有のバランスがこの日の躍動や会場の興奮を伝えきれていない感が否めないからです。しかし、この日のSBDの録音が「Moby Dick」から始まっているという事実はとても興味深い。元々リリースとは無縁の、メンバーやスタッフがあくまで記録としてPAからカセットに録音される音源です。それが「Moby Dick」から録音されたということ、それはボンゾの要請によってカセットに録音されたのではないかということ。彼としても、この日はいつもより長いドラム・ソロを披露するつもりがあったことから音を頼んだであろうことが推測されるのです。残されている当日の写真の中には、プラントとジョンジー、さらにはビル・グレアムまで加わってステージを見つめる三人の姿が捉えられたり、極めつけは正座(笑)して出番を待つプラントの姿まで残されていますが、これらは「Moby Dick」の最中に撮られた可能性が高いと思われます。それほど長いプレイを捉えてみせたという点において、やはりSBDの資料的な価値が高いのは確か。またグレアムによる終演後のアナウンスをオーディエンス録音よりも長く収録しているという、同様なメリットまである。そしてこのパートを改めてマスターから収録し、なおかつオーディエンス録音の方もあらゆる意味で完全な状態で収録を実現。これこそ73年アメリカ・ツアーにおける名演ベスト3に入る一日の新たなベスト・バージョン!
完璧なピッチで収録されたヴァージョンは史上初。オーディエンスはKrw_co。サウンドボードは独自入手。Disc1/2のオーディエンスは、Krw_coヴァージョンの半音の40~60%高いピッチを修正。Disc3のサウンドボードは後半が半音の20%程度低いピッチを修正。Disc1/2は中高域を調整して、演奏を鮮明にし、分離を良くするイコライズを掛けました。
Live at Kezar Stadium, San Francisco, CA. USA 2nd June 1973
Audience Recording (Reel Master)
Disc 1 (62:33)
1. MC Intro #1 2. MC Intro #2 3. Rock And Roll 4. Celebration Day 5. Black Dog 6. Over The Hill And Far Away 7. Misty Mountain Hop 8. Since I've Been Loving You 9. No Quarter 10. The Song Remains The Same 11. The Rain Song
Disc 2(78:31)
1. Dazed And Confused 2. Stairway To Heaven 3. Moby Dick 4. Heartbreaker 5. Whole Lotta Love 6. Communication Breakdown 7. The Ocean 8. Announcement
Soundboard Recording
Disc 3(62:08)
1. Moby Dick 2. Heartbreaker 3. Whole Lotta Love 4. Communication Breakdown 5. The Ocean 6. Announcement 7. Final Announcement





























