1973年のアメリカ・ツアーはPAアウト経由で録音されたサウンドボードが非常に恵まれている印象を受けますが、その登場は大まかに分けて二期に分けられるでしょう。最初が1989年のコンドルCDから始まって、91年のゴースト・ミュージックやフライング・ディスクを名乗るレーベルによってリリースされた音源。90年代の後半はそれらの音源のアップグレードが実現しました。第二期は2002年になって一挙に登場したサウンドボード録音の数々。これら二期の音源発掘の背景には、同じツアーからの録音ながら明確な違いが見られます。第一期発掘の方は73年アメリカ・ツアーの多岐に渡った時期であり、しかもショーのオープニングから録音された収録時間の長めな音源が多い。それに対し2002年発掘の方はショー終盤に偏った録音が多く、何よりもアメリカ・ツアーのファースト・レグからに限られていた。そんな中から先週リリースされた「KEZAR STADIUM 1973」にもショー終盤のみのサウンドボード録音を、2002年当初にも使われていたマスターCDからの収録を実現させたところ。そして今回も2002年に登場したサウンドボード録音をリリースいたしますが、これらもまたオリジナルのマスターCDからの収録を実現させてました。二枚組ではありますが、それぞれのディスクに各ショーの終盤部分が収録という変則的な内容。どうしてこのような録音状態の音源が存在するのでしょうか。元々PAアウトからのサウンドボード録音というのは本来オフィシャルなリリース目的を持たない録音であり、音質バランス的にもライブ・アルバム用マルチトラック・レコーディングとは全く異質なモノ。この録音が存在する理由、それはスタッフやバンドメンバーがサウンドやプレイをチェックする為に録音を依頼したことで存在するのです。つまり、ショーを完全収録することも念頭にない場合が多い。第一期の73年サウンドボード録音はペイジ方面からの流出だということが当初から囁かれていました。それに対し2002年の場合はショー終盤でなおかつ「Moby Dick」が収録されている場合が多い。これで見当ついたかと思われますが、2002年に出回った音源はボンゾが録音を依頼した、つまり彼のルートからの流出だったということ。例えば先週のケザーにおいて「Moby Dick」は非常に長尺であり、ボンゾは当初から長いドラム・ソロを披露するつもりでPAアウトからカセットに録音を依頼したのでしょう。ちなみに「DESTROYER」でおなじみ77年クリーブランドはプラント方面のルートからの流出だと言われています。 今回リリースする二枚組でも最初のディスクに収録されたヒューストン公演は「Moby Dick」がしっかりと録音されていることからも、ボンゾの依頼によって録音されたことは明白。ただしケザーと違ってドラム・ソロが15分程度で済んだのはリスナーにとっては幸いというもの(笑)。この日の録音自体は「Stairway To Heaven」からスタートしていますが、ペイジのプレイがアメリカ・ツアー、ファースト・レグの中でも珍しいくらいに不調。そのせいでギター・ソロがまったく冴えず、さらには「Moby Dick」のテーマ・フレーズまで尾を引いてしまうのに苦笑させられます。このまま冴えない調子でショーが終わってしまうのかと思いきや、そこを救ってくれたのがプラント。「Whole Lotta Love」メドレーの最中で「Going Down」を歌い出すというレアな展開へと持ち込んで演奏を白熱させてくれたのです。73年アメリカでの「Going Down」と言えば「THREE DAYS AFTER」こと6月3日のLAフォーラムが有名ですが、それ以前にこのパターンをアメリカで披露していた事実をサウンドボード録音で明らかにしてくれた衝撃の音源でした。実を言うとSBD以前からオーディエンス録音が存在していたのですが、全編に渡って歪んだ音質がファンサイトをして「聞くのが苦痛」と言わしめる状態。それ以上に演奏のディティールが伝わらず、このSBDで初めて「Going Down」展開に驚かされたマニアがほとんどであったことでしょう。さらには「Moby Dick」終了後にプラントがボンゾのローディであるミック・ヒントンを紹介するレアな場面までも捉えられていたのです。二枚目のディスクに収録されたデンバー公演はさらに短いサウンドボード録音として2002年に登場しましたが、この日は未だにオーディエンス録音が発掘されておらず、その不完全な録音状態にもかかわらず価値が色褪せていない音源なのです。ボンゾ所有のPAアウト録音カセットながら「Moby Dick」すら録音されていないのが驚きですが、もしかしたらこの日は「Heartbreaker」から「Whole Lotta Love」にかけての自身のプレイをチェックしたくて録音を依頼したのかもしれません。しかし音源を通して際立っているのはボンゾよりもジョンジーのハイパーなベース・プレイ。PAアウトの録音ですが、ショー終盤ですので彼のベースがしっかりと聞き取れる状態だからこそ伝わってくる凄まじさ。それでいて「Whole Lotta Love」の展開自体は73年アメリカのスタンダードなパターンですので、いかにヒューストンが特別であったのかを思い知らされます。最後の「Communication Breakdown」はどちらのショーでも歌い方を変えたプラントの堂々たるシャウトが冴えわたっていますが、中でもデンバーでは途中で「The Crunge」を歌い出しているのがスリリング。 これら二つの不完全なSBDはどちらも2002年当時に「GOING DOWN」としてリリースされたもの。しかし今回は当時のマスターから改めて収録しているので、どちらの音源も若干ながらWATCHTOWER盤(以下既発盤と称します)よりも長く収録されています。特にヒューストンでは録音開始直後にペイジが発したギターの一音が捉えられているので、一瞬でありながらも違いは歴然。それに既発盤はイコライズ全盛の時代にリリースされていましたので、案の定音質が変えられてしまっている。その点、今回はマスターCD-Rからそのままのナチュラルな音質で収録しましたので、質感の違いもはっきりと実感してもらえることでしょう。ただし21世紀初頭のメディアの悲しさとでも言いましょうか、今回入手したマスターはデンバーの「Heartbreaker」において経年によるデジノイズが生じる劣化が起きてしまっていたのです。微弱なノイズではありますが、それらの箇所に関しては既発盤をピンポイントで補填することによって完璧にアジャストしています。そしてどちらの音源もショー終盤のみという不完全な状態ではありますが、それぞれでテンションの高い演奏が聞かれ、しかも既発盤と違いナチュラルなサウンドも楽しめる。今となっては2002年の既発盤を持っていない、あるいは聞いたことがないマニアも多いはずであり、むしろ新たな時代に相応しいリリースとなることでしょう。
Sam Houston Coliseum, Houston, Texas, USA 16th May 1973 STEREO SBD Denver Coliseum, Denver, Colorado, USA 25th May 1973 STEREO SBDDisc 1(60:21)
Live at Sam Houston Coliseum, Houston, Texas, USA 16th May 1973
1. Stairway To Heaven 2. Moby Dick 3. Heartbreaker 4. Whole Lotta Love 5. Communication Breakdown
●WT盤より長い個所は下記のとおりです。 1trk 0:00 - 0:028 (2.8秒) 1trk 0:028 - 0:05はWT盤はフェードインしてある。5trk 3:55 - 3:57の無音(テープは走ってる)部分。5trk 4:20~WT盤はフェードが始まり、今回盤の最後の0.6秒はWT盤には入っていない。
Disc 2(26:29)
Live at Denver Coliseum, Denver, Colorado, USA 25th May 1973
1. Heartbreaker 2. Whole Lotta Love 3. Communication Breakdown
●WT盤より長い個所は下記のとおりです。 1trk 0:00 - 0:005 (0.5秒) ★実際はフェードインがキツイのでチューニングの音が1.5秒多く入っていない感じです。 1trk 0:005 - 0:035 はWT盤はフェードインしてある。3trk 4:16~ WT盤はフェードアウトが始まり、今回盤の最後の1.3秒はWT盤には入っていない。
STEREO SOUNDBOARD RECORDING





























