音楽史に唯一無二の足跡を遺し、2006年7月7日に世を去ったシド・バレット。その彼に捧げられた極上サウンドボード・アルバムが・リリース決定です。そんな本作が録音されたのは、シドの死去から5日後「2006年7月12日ルッカ(イタリア)」でのこと。当時、ロジャー4年ぶりのワールドツアーとして世界を沸かせていた”THE DARK SIDE OF THE MOON LIVE”の一幕であり、ニック・メイスンが参加した3公演の1つでもあります。このツアーは2006年から2008年まで丸2年間に及ぶものでした。良い機会ですので、ワールドツアーの全体像を振り返り、ショウのポジションを確かめてみましょう。 ●2006年・6月2日-7月16日:欧州#1(21公演)←★ココ★・9月6日-10月12日:北米#1(21公演)●2007年・1月25日-2月21日:オセアニア/アジア(12公演)・3月2日-24日:中南米(10公演)・4月11日-5月14日:欧州#2(19公演)・5月18日-7月14日:北米#2(27公演) ●2008年・4月27日-5月4日:北米#3(4公演)・5月9日-6月6日:欧州#3(7公演) これが”THE DARK SIDE OF THE MOON LIVE”の全体像。ニックが参加したのは冒頭を飾る「北米#1」の6公演目・19公演目・20公演目の3回。本作のルッカ公演は、そのうち19公演目にあたるコンサートでした。本作は、そんなショウをラジオ放送のサウンドボードで収録した1枚なのです。そのクオリティは、オフィシャル級の見事なサウンドボード。世界を沸かせた『狂気』再現パートは放送されず、本作に収録されているのも第一部のグレイテストヒッツ・パートだけ。それでも約70分に渡って歴史的名曲をタップリ楽しめる公式級のライヴアルバムなのです。そのセットも実に素晴らしい。今となっては貴重な「Southampton Dock」や「Perfect Sense」、このツアーの象徴でもある「The Fletcher Memorial Home」「Leaving Beirut」も耳元ダイレクトな極上サウンドボードで流れ込むのです。それだけでも十分に素晴らしい1枚なのですが、本作を特別にしているのは「Wish You Were Here」。いつも通りにスタートするのですが、一分ほどアコースティックギターをつま弾いたところでロジャーがつぶやくのです。「今夜のショウを古い友人、シドに捧げたい。特にこの曲はね(We dedicate this whole evening to Syd, my old friend, but particularly this song)」正直なところ、この放送は枠に詰め込むためか曲間が大胆に短縮編集され、「Leaving Beirut」前のMCにはイタリア語の同時通訳が被せられている。そのため、ロジャーのメッセージが今イチ伝わりづらいのですが、この一言だけは曲中ということもあってか邪魔が入らない。そして、その言葉をイントロにして深い深い情感を噛みしめるような名曲が紡がれていくのです。この一言、そして、その想いを込めた「Wish You Were Here」。この1曲を素晴らしいステレオ・サウンドボードで聴けることこそ、本作の真の価値なのです。1975年、「Wish You Were Here」のミックスダウン中に突如シドがスタジオを訪れ、ロジャーと衝撃の再会を果たした……決して幸福とは言えなかった逸話はあまりにも有名です。その後PINK FLOYDの面々はシドと交流することはなく、最晩年には(鬱病が発症する恐れもあり)面会も許されなかった。そして届いた訃報……。本作から流れ出るのは、その知らせから1週間も経っていないショウ。そんな刹那にステージに立ったロジャーの歌声なのです。本作は歴史的な名曲を極上サウンドで味わえるライヴ盤に違いありませんが、込められた想いはそれ以上。その心の襞まで漏らさず伝えてくれる極上のサウンドボード・アルバムなのです。 Live at Piazza Napoleone, Lucca, Italy 12th July 2006 STEREO SBD(68:47) 1. In The Flesh 2. Mother 3. Set The Controls For the Heart Of The Sun 4. Shine On You Crazy Diamond 5. Have A Cigar 6. Wish You Were Here with introduction "We dedicate this whole evening to Syd, my old friend, but particularly this song" 7. Southampton Dock 8. The Fletcher Memorial Home 9. Perfect Sense 10. Leaving Beirut 11. Sheep Roger Waters - Vocal, Bass, Guitar Andy Fairweather - Guitar, Bass, Vocals Snowy White - Guitar Dave Kilminster- Guitar, Vocals Jon Carin - Keyboards, Guitar Harry Waters - Keyboards Graham Broad - Drums, percussion P.P. Arnold - Vocals, Percussion Carol Kenyon ? Vocals, Percussion Katie Kissoon - Vocals, Percussion Ian Ritchie - Saxophone STEREO SOUNDBOARD RECORDING