90年代初頭ロック・ギタリストを特集したドキュメンタリー・シリーズ「CAREFUL WITH THAT AXE」。ロバート・フリップやトニー・アイオミなど、さまざまギタリストが特集されましたが、その映えある第1弾としてリリースされたのが本作です。廃盤の日本盤レーザー・ディスクからダイレクト収録したため画質・音質とも完璧です。スタジオでの生演奏、更にはイエス時代の演奏映像を盛り込みつつ、ハウが饒舌にインタビューに答えるそんな内容です。インタビューは(ここがポイントなのですが)すべて日本語字幕付きです。インタビューを軸に自身のイエスの歴史について語るので、対訳字幕は本当にありがたく、今後、この番組が日本で公式リリースされることはまずないと思いますので非常に貴重です。 それでは順を追って観てみましょう。冒頭、ムーディに階段に座りながらAll's A Chordをプレイするシーンに感動させられます。その後には自身のギターとの出会いに関してハウ自身が語ります。更に少年時代に出会ったレスポールの音楽の影響に関して語った後、Cactus Boogieを演奏します。 「最初のステージは14歳。その頃に買ったギブソンのギターはまだ使っている。親に手付金を払ってもらって感謝しているよ。デュエイン・エディやシャドウズにも影響を受けたけど、バンドのギタリストとしてはジョージ・ハリスン、チェット・アトキンンスのジャズにも多大な影響を受けた。音色にはケニー・バレルの影響を受けた。ロック・ギタリストを目指した割にはロック・ギタリストからの影響がそんなにないんだ。自分がロックギタリストになったのは不思議だよ」「音楽家としての本格的な活動はイン・クラウドからで、キース・ウェストのアドバイスでオリジナル曲にチャレンジした。そしてバンドはトゥモロウに名前を変えた」「バーズの録音技術には凄い影響を受けた」「ジミ・ヘンドリックスはアンプにギターをぶつけていて、ピート・タウンゼントは破壊していたりしていた。とにかく他の連中のギターは汚れ放題でステッカーまで貼ってある中で、僕のだけピカピカ。毎日欠かさず、ギターを磨いているからね」「その後はボダストと言うバンドに参加し、他からの誘いは断っていた。その頃に自身のスタイルを確立した、ナイスのキース・エマーソンやジェスロ・タルからの誘いも断った。カール・パーマーのいたアトミック・ルースターのオーディションの後、1970年にイエスに加入した。曲作りを重視するバンドはえてして腕が悪いんだけど、曲作りと演奏の両面で秀でたイエスは理想的だったんだ」 イエスのパートではYours Is No Disgraceの楽曲をパートごとに実演し、どんなふうにメンバーで創り上げていくかを語るシーンは必見で見応え満点。Roundaboutの実演シーンは感動的です。「僕たちは「危機」を発表した後、マスコミに攻撃されたんだ。一曲が20分というイエス独自の作品を始めた頃だった。彼等は僕たちを罵り、高慢すぎると非難した。たが、そんな的外れな中傷で傷付いたりせず、話し合って無視することに決めたんだ」 バンドはソロアルバムのリリースを経て「究極」「トーマト」を発表。その後、ジョンとリックが脱退し、トレヴァー・ホーンとジェフ・ダウンズが加入し「ドラマ」を発表するのですが、「アメリカのツアーは大成功で、MSG公演は完売したからね。だがイギリスでの興業は散々だった。トレヴァーはイギリスではライヴをしたくないと言っていた。イギリスではジョンの熱烈なファンが多いからね。実際イギリスでは「ジョンを出せ!」と観客から言われる。トレヴァーはそれに耐えたのさ」との貴重な言葉が聴けます。 その後1982年にエイジアが「思いもよらなかった」大成功を収めますが、「2枚目のアルバムは1枚目程良くならなかったんだ。正直、録音している時も辛かったよ。一生懸命頑張ったけどね。」と気真面目なハウらしい正直なコメントが聴けます。次はスティーヴ・ハケットとのGTR。このエピソードを語っている時に2回登場する12弦スタインバーガー・ギターでのWhen The Heart Rules The Mindのスタジオ演奏シーンは、まさの時の時期ならではのものであり、大変貴重なものと言えるでしょう。最後に、このインタビュー以降、本格的にスタートするユニオン・プロジェクトに関して。「ステージではレトロなプレイは沢山披露するけど、それは前向きな僕にとっては人生の一大事ではない。まだまだ、この先、やりたいことは山とあるからね。今後は自分のバンドを組みたいな。」と語るシーンは印象的です。 まさに1991年当時のスティーヴを取り巻く状況やそれに対する気持ちが伝わってくる非常に貴重な記録映像。ハウ&イエス・ファンは絶対に必見・必携です。 1. Intro 2. All's A Chord - Beginnings 3. Cactus Boogie - Les Paul/Influences/ Psychedelic Guitar Hero 4. Milk Cow Blues - Writing With Yes/ Yours Is No Disgrace / I've Seen All Good People/ Roundabout 5. The Clap (Montreux Jazz Festival 19th July 1979) 6. Wonderous Stories (video clip)7. Tempus Fugit (video clip) / After Yes(Asia) 8. When The Heart Rules The Mind /After Yes(GTR, ABWH, Union) Guitar Sound 9. The Glory Of Love/St Louis Blues COLOUR NTSC Approx.52min.