“THE DARK SIDE OF THE MOON LIVE”の極上マルチカメラ・ショットがリリース決定です。本作に収められているのは「2008年4月30日デンバー公演」。そのショウから生まれた数々のオーディエンス記録を駆使し、海外マニアが精魂込めて創り上げた映像作品で「第1部」をディスク1、「第2部+アンコール」をディスク2に配した2枚組です。本作最大のポイントは、驚異的な作り込みクオリティ。まず映像ですが、3台のカメラによるオーディエンス・ショットを精緻に組み上げています。1つはステージ正面の遠景ショット、2つめはステージ左側のスタンド席から見下ろしたショット、3つめはスクリーン・ショットです。それぞれが極上のクオリティでして、現在基準でもそうそうない映像美。最大ズームになると、ロジャーの表情や口元もはっきりと見え、さながらプロショットの1カットかのようです。そんな極上素材を組み上げる編集がまた凄い。1曲どころか1小節、歌詞の一語レベルで曲の流れを把握し、3つの映像を自在に行き来。「ライヴを正確に伝える」という以上に、曲のドラマを演出するかのような精緻な編集ぶりなのです。しかも、そこにスクリーン・ショットが混じっていることが非常に効果的。当時最新の映像演出をクリアに目撃できるわけですが、演奏シーンでも効果絶大。当然のことながらスクリーンに映し出されるのはマルチカメラのプロ映像ですから、それ1つでもアングルが多彩ですし、ショウ進行を完全に熟知している。さらに延々とスクリーンを映していると人間味が希薄になってしまいますが、そこにオーディエンス・ショットの限りなく生々しい直写も混じる。そんな世界の異なる映像が混じり合うことで、とてもカメラ3台では済まない膨大な光景と現実感を描き出しているのです。そんな光景に負けない……と言いますか、勝ってさえいるのが超・極上の音声。現在でも人気の名機「Schoeps MK4」によるオーディエンス録音がシンクロさせているのです。これが絶品で、ディテールの細やかさ、芯の太さはいわゆる「まるでサウンドボード」と呼べるもので、距離感も感じない。昨今ではマルチカメラ編集が当たり前になってきました、いかに多彩な映像が駆使されていても遠いサウンドだと視角と聴覚の遠近感がチグハグになってしまい、奇妙な違和感が拭えないことも多々あります。しかし、距離感ゼロのダイレクト・サウンドであれば、どんな角度・距離の映像でもピタッと整合させられる(これは通常のプロショットを思い浮かべていただければご理解いただけると思います)。本作は、言わば“オーディエンス素材のプロショット”のような感覚の映像作品なのです。そして、そのクオリティで描かれる“THE DARK SIDE OF THE MOON LIVE”こそが素晴らしい。良い機会ですので、ここで丸2年に及んだワールドツアーの全容を俯瞰してみましょう。 【2006年】・6月2日-7月16日:欧州#1(21公演)・9月6日-10月12日:北米#1(21公演) 【2007年】・1月25日-2月21日:オセアニア/アジア(12公演)・3月2日-24日:中南米(10公演)・4月11日-5月14日:欧州#2(19公演)・5月18日-7月14日:北米#2(27公演) 【2008年】・4月27日-5月4日:北米#3(4公演)←★ココ★・5月9日-6月6日:欧州#3(7公演) これが“THE DARK SIDE OF THE MOON LIVE”の全体像。2006年から2008年まであったわけですが、本作のデンバー公演はその最終盤。「北米#3」の2公演目にあたるコンサートでした。まず、2008年というだけで嬉しい。これまでも2007年南米のプロショットや、序盤の2006年には定番映像もありましたが、最終盤でここまでの映像はありませんでした。世界を巡り、こなれにこなれた末にたどり着いた“THE DARK SIDE OF THE MOON LIVE”の最終形をリアル感覚もたっぷりに体験できるのです。まさにマニア渾身の映像作品。デンバー公演から幾つもの極上素材が生まれた幸運もありますが、それ以上に「素晴らしいショウを作品に仕上げる」という意志と執念が圧倒的な1本です。アンダーグラウンドだからこそ出逢える傑作。この年末年始、ぜひ極上の“ロジャーの『狂気』”でお過ごしください。 Live at Pepsi Center, Denver, CO. USA 30th April 2008 Disc 1(74:02) 1. Intro/In The Flesh 2. Mother 3. Set The Controls For The Heart Of The Sun 4. Shine On You Crazy Diamond 5. Have A Cigar 6. Wish You Were Here 7. Southampton Dock 8. The Fletcher Memorial Home 9. Perfect Sense 10. Leaving Beirut 11. Sheep Disc 2(67:53) 1. Speak To Me/Breathe 2. On The Run 3. Time/Breathe (Reprise) 4. The Great Gig In The Sky 5. Money 6. Us And Them/Any Colour You Like 7. Brain Damage 8. Eclipse 9. The Happiest Days Of Our Lives/Another Brick In The Wall Part 2 10. Vera/Bring The Boys Back Home 11. Comfortably Numb COLOUR NTSC Approx.142min.